16年春闘は失速か、労組も慎重-消費低調ならアベノミクスに試練

  • 安倍首相が経済界に旗振り、黒田日銀総裁も賃上げ加速を期待
  • 世界経済変調や不安定な金融市場も逆風-3月16日が集中回答日

2016年の春闘が3月本番を迎えるが、賃上げは期待外れに終わるとの見方が強まっている。中国経済の変調や金融市場の混乱などによる景気の先行き不透明感などが背景だ。賃金底上げで個人消費に火がつかなければ、アベノミクスが目指す「経済の好循環」実現が遠のく。

  足元の円高や景気回復の遅れ、原油安に伴う物価上昇率の鈍化などもあり、労働組合の賃上げ要求は昨年よりトーンダウンしている。連合は「2%程度を基準」としたベースアップ(ベア)を要求しているが、15年春闘は「2%以上」だった。自動車メーカー労組は要求を昨年の半額の月額3000円とすることで足並みをそろえた。自動車総連は生活改善の取り組み方針で、企業収益がばらつく中で全体の底上げにつながるような格差是正を念頭に置く。

  安倍晋三首相は、企業収益の果実を設備投資や賃上げに振り向けて、経済の好循環を実現するよう繰り返し経団連などに要請。黒田東彦日銀総裁は1月15日の衆院予算委員会で、企業収益や労働需給からすると賃金上昇はやや鈍いとの認識を表明。2月26日の衆院財務金融委員会では、労働需給の引き締まりが続いていることに触れ、「賃金が今後も上昇していく環境は十分整っている」と期待を示した。

  しかし昨年10-12月期の実質国内総生産(GDP)はマイナス成長となり、個人消費など主要な需要項目が低調に推移、景気のけん引役不在があらわとなった。年明けからは国際金融市場が混乱する中、日銀は1月にマイナス金利導入を決めたが、その後も円高が進み株価下落を招いている。

下振れ含み

  第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは今春闘について、少なくとも1年前よりは環境は厳しく、今年の春闘賃上げ率は「どちらかというと下振れ含み」とみる。「円高株安で景気の先行き不透明感が強まれば、慎重姿勢を強めるかもしれないし、こんなに固定費を増やすわけにはいかないと思う経営者が増えてもおかしくない」と述べた。

  連合の15年春闘最終集計結果によると、ベアと定期昇給を合わせた平均賃上げ率は2.2%だった。ベアが確認できた組合の平均ベアは0.69%。野村証券の須田吉貴エコノミストは今年は賃上げ率を2.15%程度、定期昇給部分を除いたベア分は約0.6%、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は賃上げ率を2.1%程度、ベア分が0.6%程度とそれぞれ予想。新家氏は賃上げ率2.1%程度と予想している。

  斎藤氏は、日銀が2%の物価目標を掲げる中で目指すべき賃上げ率はベアで最低2%と考えられるが、15年のベアも1%に届いていないと指摘。「国内最大のリスクは14年に始まった賃上げが停滞することで個人消費の回復がさらに遅れること」と述べた。須田氏は、日銀は春闘の動向について昨年よりも関心を強めており、春闘で賃上げ率が下振れ、そこからインフレ期待が低下につながっていくと、「追加緩和への思惑が高まりやすい。少なくとも、市場はそう見るだろう」と述べた。

  UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは、自動車や電機などの製造業の春闘賃上げ率は昨年並みとみているが、非製造業については昨年「インバウンドでとにかく収益を上げている」と指摘。非製造業の賃金は「昨年以上に上げられるのではないか」とみている。連合によると、集中回答日は3月16日の予定。

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