木内日銀委員:マイナス金利は「逆に金融引き締め効果の恐れも」

  • 金融システムの安定を潜在的に低下させる可能性があると木内氏
  • 国債買い入れの持続性・安定性を損なう可能性にも懸念示す

日本銀行の木内登英審議委員は25日午前、鹿児島市内で講演し、マイナス金利について、金融機関が収益の悪化を補うため貸出金利引き上げや手数料引き上げなどを通じて預金者や与信先にコストを転嫁する可能性があり、「逆に金融引き締め効果につながる恐れもある」との見方を示した。

  木内委員はマイナス金利は「貸し出し利ざやの縮小や金融資産の運用利回り低下などを通じて、金融機関の収益に追加的な悪影響を及ぼすことで、金融システムの安定を潜在的に低下させる可能性がある」と指摘。 量的・質的金融緩和の中核である「国債買い入れの持続性・安定性を損なう可能性を懸念している」と語った。

  日銀は1月29日、日本初のマイナス金利導入を5対4で決定した。木内委員は石田浩二、佐藤健裕、白井さゆりの3審議委員とともに反対に回った。マイナス金利を受けて、住宅ローン金利や預金金利の引き下げに加えて、みずほフィナンシャルグループの労働組合がベースアップを見送ると報道されるなど、その影響は幅広い分野に及び始めている。

  木内委員は国債買い入れの持続性に関連し、地銀をはじめ金融機関の多くは一時的な売却益より安定した利払い収入を得ることを目的として国債を保有する傾向が強いと言われており、「現在保有する国債の利回りに対して付利金利の水準が低下すれば、あるいは再投資する場合の国債利回りが低下すれば、日銀に国債を売却するインセンティブは低下すると考えられる」と指摘。

  さらに、株主への説明の難しさや風評リスクなどから、マイナス金利が適用される日銀当座預金を積み増す動機は低下することも考えられるとした上で、このような影響も見越して、マイナス金利の導入に伴い、国債買い入れが限界に達する時期が早まるリスクが市場で意識されれば、「金融市場は不安定化し、実体経済に悪影響を及ぼす可能性もある」と述べた。

欧州の例は必ずしも参考にならず

  ユーロ圏ではマイナス金利と資産買い入れ策が現時点で両立しているため、日本でも両立可能との見方があることについては、ユー ロ圏での資産買い入れ規模や実施期間は日本を大きく下回っているなど、「日本とは環境が随分異なることから、欧州の事例は必ずしも参考にならない面がある」と語った。

  マイナス金利導入の際には、国債買い入れを減額し買い入れの持続性・安定性をあらかじめ高めておくことが必要であり、金融経済情勢が著しく悪化する危機的状況においてのみ妥当な政策手段と考えていたと述べた。その上で、「国内の経済・物価情勢は安定しており、金融市場の不安定な動きも危機的な状況ではない」との認識を示し、マイナス金利の導入に限らず追加緩和は必要なかったと述べた。

  ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは同日のリポートで、「『マイナス金利』と異常ともいえる『量』を両方達成しようとする点で、日銀は他のマイナス金利導入国とは異なる。よって、マイナス金利の下限は、他の国の例が参考になるとも思えない」と指摘。現在マイナス0.1%の金利をさらに引き下げるのは「マイナス0.5%程度が限界ではなかろうか」としている。

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