台湾の鴻海精密工業による買収の正式契約延期が明らかになったシャープの株価は26日、一時前日比16%安の125円まで下落した。前日に続く急落で、午前10時21分現在は同15%安の126円で取引されている。

  鴻海は25日夜、シャープが24日朝に送付した「新たな重大情報」について精査する必要があるため、状況が十分に把握できるまで買収の正式契約を延期すると発表した。シャープは25日、臨時取締役会を開き、郭台銘(テリー・ゴウ)会長が経営する鴻海の買収を受け入れることを決定したと明らかにしていた。

  鴻海の声明によれば、正式契約の延期については臨時取締役会前の24日夜にシャープに通知していた。いつまで延期するかなどの詳細には言及していない。シャープの広報担当、植村豊土氏はコメントしなかった。

  事情に詳しい関係者によれば、新たな重大情報には構造改革や人員整理など一定の状況でシャープが支払わなくてはならない偶発債務が含まれる。全ての偶発債務が発生した場合、3000億円を超える可能性もあるが、逆にもっと低い水準となることもあるという。鴻海と対抗して買収を目指していた政府系ファンドの産業革新機構は偶発債務の額を計算していたが、鴻海は今週になって全容を知ったという。米紙ウォールストリート・ジャーナルは25日夜、鴻海は約3500億円相当の偶発債務の一覧を24日にシャープから受け取ったと、事情に詳しい関係者を引用して報じた。

  SMBC日興証券の桂竜輔シニアアナリストは25日付リポートで、契約延期の報道が正しいとすれば「リスクであり、再建は振出しに戻りネガティブ」だとした。

66%保有

  液晶事業の不調から経営不振に陥ったシャープは、外国資本を導入して抜本的な事業再建に乗り出す狙いだった。シャープは鴻海を引受先とする第三者割当増資を発表したが、直後に鴻海とのすれ違いが表面化した。

  シャープの発表によると、鴻海はシャープが第三者割当で発行する新株を総額4890億円で取得し、議決権ベースで66%の株式を保有する筆頭株主となる。調達した資金は携帯電話の画面に使う有機EL量産に向けた設備投資のほか、人工知能やインターネットにつないだ製品の開発に投入する。

  鴻海からの提案は、懸案の液晶事業の競争力を強化し、各事業が一体で成長するための十分な資金を手当てできると判断した。また経営の独立性や従業員の雇用の維持に理解が得られたことを評価している。上場廃止につながるシャープ株の追加取得は行わないとしている。

  シャープの経営危機は液晶事業の不振などで2012年3月期に巨額赤字を計上したことで表面化し、前期(15年3月期)も2223億円の純損失を計上した。シャープは資産売却や人員削減によって立て直しを図ってきたが、液晶事業の悪化により外部支援が不可避の状況となっていた。

希薄化

  ジェフリーズ・グループのシニアアナリスト、アツール・ゴーヤル氏は「シャープ株主は大規模な希薄化に直面することになる」としたが、株価がゼロになることはないと指摘。その上で、資金注入は効果的だが、数年後にシャープを再建させるために鴻海が何ができるかは不透明だと話した。

  鴻海は主要取引銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が保有する優先株のそれぞれ半数を総額1000億円で買い取る。またジャパン・インダストリアル・ソリューションズが250億円で取得した優先株も両者が合意した価格で買い取るとしている。

  このほか契約を守らなかった場合に備え、鴻海が1000億円の預託金を提供することでも合意するとしている。鴻海は12年にシャープと合意した約670億円の第三者割当増資を引き受けなかった経緯があり、契約が確実に履行されるか懸念が出ていた。

  機構は文書で声明を発表、「取締役各位が真剣に議論され、最終的な判断を下された結果であると理解している」とし、鴻海の下でシャープが「さらに成長されることを心より願っている」と記した。

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