【インサイト】原油安の痛み、米銀13.8兆円-欧州銀開示せず市場が罰

エネルギー業界の苦境は周知の事実だが、その痛みを信頼できる形で数値化するのは難しい。1230億ドル(約13兆8000億円)という数字をまず手掛かりとして考えてみたい。

  これは大手米銀のバランスシートに存在するエネルギー業界向けの貸付残高と融資コミットメントの推計総額であり、RBCキャピタル・マーケッツとジャニー・モントゴメリー・スコット、サスケハナ・インターナショナル・グループが今月公表したアナリストリポートの情報から導き出したものだ。

チェコのエネルギー会社モラフスケ・ナフトベ・ドーリが操業する施設の「うなずきロバ」(原油くみ上げ装置)

Photographer: Martin Divisek/Bloomberg

  これまで入手が困難だった数字の持つ意味は大きい。原油価格が2年前の3分の1を下回る水準に下げる状況で、エネルギー業界が債務を返済できなくなった場合に広がる打撃の大きさを投資家も監督当局も把握しておきたいと考えるのではないか。エネルギー業界関係の債務に絡む深刻な損失を銀行が被れば、広く実体経済にダメージが拡散することになりかねない。

  エクアドルの1年間の国内総生産(GDP)を上回る1230億ドルは驚くべき数字だ。しかし、JPモルガン・チェースやシティグループ、ウェルズ・ファーゴといった大手米銀が、つなぎ合わせれば全容を推計できる断片的情報をアナリストに十分開示した驚きの方が大きい。情報開示を行わない欧州の大手銀行は、不透明であるという理由で株式トレーダーから痛めつけられている。

  ウェルズ・ファーゴのジョン・シュルーズベリー最高財務責任者(CFO)は、石油・天然ガス関連の貸付残高の大部分が、投資適格ではない企業向けだと今月公表。ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン、モルガン・スタンレーなど他の銀行もジャンク級(投機的格付け)エネルギー企業へのかなり大きなエクスポージャー(リスク債権)を抱える。JPモルガンは、1バレル=25ドル前後の原油価格が1年半続けば、エネルギー業界に関係する不良債権引当金を15億ドル程度積み増す必要が出てくるとの見通しを23日に明らかにした。

  ただこうした事実を全て考慮しても、この種の貸し付けはこれら米銀の融資ポートフォリオのごく一部にすぎない。RBCの金融株アナリストは今月のリポートで、上位20行のエクスポージャーについて、「最も想像し難いシナリオの下でも対処は可能」と分析した。

  1230億ドルという数字は、ことによるとリスクを十分反映していなかったり、かなり誇張されていたりするケースもあろう。それでも、少なくとも最初の重要な手掛かりであることに間違いない。石油関連の潜在的損失をありのままに開示する銀行が増えれば増えるほど、米国の金融システムで2008年のような危機は再び起きないと投資家を安心させることにつながるだろう。
  (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Big U.S. Banks Exposed to $123 Billion in Energy Debt: Gadfly(抜粋)

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