中国ショックの鉄鋼業界に円高の追い打ちも、大手3社信用力が急悪化

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  • 新日鉄住金のCDS12年以来の高さ、神戸鋼は年初来100bp超上昇
  • 海外鋼材市況の低迷など背景に大手は2~3回の下方修正迫られる

中国の過剰な鉄鋼生産で海外鋼材市況が低迷する中、鉄鋼業界は足元の急速な円高がさらに続けば一段と収益が悪化すると、市場関係者の間で懸念されている。大手3社は業績の下方修正を繰り返し、信用力の悪化が目立つ。

  CMAによると新日鉄住金の信用力を示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は19日時点で127ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と今年に入り42bp上昇。15日には2012年11月以来の高水準の137.5bpを付けた。JFEホールディングスは年初来37bp上昇し160bp、神戸製鋼所は同101bp上昇し275bp。3社のCDS年初来上昇幅はいずれもマークイットiTraxx日本指数の30bpを上回る。

  今期(2016年3月期)の連結業績予想について新日鉄住金が2回、JFEと神戸鋼は3回下方修正し、神戸鋼は純損失予想となった。鉄鋼業界の業績悪化の背景には、原油安に伴う油田で利用される鋼管販売の減少や、鉄鉱石・石炭など原料価格の下落に伴う在庫評価損に加えて、景気後退を背景に中国から鋼材輸出が急増したことがある。さらに年初来、リスク回避姿勢が強まり、11日の外国為替市場では一時14年10月以来となる1ドル=110円台まで円高が進行した。

  鉄鋼メーカーの信用力悪化の要因について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の土田文彦シニアクレジットアナリストは、マークイット指数のワイド化に影響されたことに加え「円高リスクの高まりや中国経済への懸念、業績下方修正」を挙げた。特に為替動向については、鉄鋼業界は自動車など輸出型企業のユーザーが多いことから、「仮に1ドル=100円など急激な円高に突っ込むようであれば、一過性ではなく、ベースの収益力として落ちてくる可能性がある」と述べた。

「かつてないスピードで悪化」

  下方修正の主因ともなった海外の鋼材市況については、JFEの岡田伸一副社長が1月末の決算会見で「かつてないスピードで大幅に悪化している」と述べたほか、新日鉄住金の太田克彦副社長も2月の決算会見で「下期にかけて一段と下落し、大変大きなインパクトだった」と振り返った。

  代表的な薄板である熱延鋼板の中国国内のスポット価格は昨年12月に1トン当たり280ドルまで下落。ブルームバーグのデータでさかのぼれる03年以降で最低の水準で、1年前と比べると半値の水準だった。

  今年に入り熱延鋼板価格は改善傾向にあるものの、足元の円高でメリットが相殺される恐れがある。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の吉村真木子主席アナリストは、19日の記者説明会で日本の鉄鋼業界は「円安に守られている部分が多かった。円高になってしまうと輸入材が増えてくる可能性も考えないといけない」と指摘している。

  またアビームコンサルティングの産業金融セクターシニアエキスパート、松本康宏氏は「鉄鋼3社のCDSのワイド化は足元ではオーバーシュート気味」と指摘。その上で「短期的には調整されても世界的な景気減速の影響は避けられず、中長期的に高止まりが続く」との見方を示した。

(第8段落を追加して、更新しました.)
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