お父さん犬や鬼、独自キャラで顧客争奪戦-電力自由化で家族層狙う

  • 4月からの電力小売り全面自由化では大家族が主戦場に
  • 激化する価格競争、一方で自由化の恩恵受けにくい世帯も

4月から全面自由化される電力の小売事業。自由化と料金プランに対する消費者の理解を深めるため、既存の電力会社や新規参入組が活躍に期待を寄せるのが各社独自のマスコットキャラクターだ。日本独自のゆるキャラ文化にも通ずるマスコットの投入が、新たな市場の誕生に彩りを添えている。

SoftBank’s Oto-san.

Source: SoftBank Group Co.

  これまで東京電力など地域ごとの大手電力会社に独占されてきた商店や事業所、一般家庭向けの8兆円を超える電力の小売り市場が開放され、市場の縮小や飽和状態にある都市ガスや石油、通信市場から収益機会を求めて異業種が新電力として参入する。料金以外に差別化が難しい電力小売事業。新規参入組は犬や猫から鬼までをキャラクターに起用し、付加価値の向上にも知恵を絞っている。

  主戦場となる首都圏の顧客網を一手に握ってきた東京電力。自由化ではこれまで独占していた市場を奪われる立場となるが、防戦一方ではなく、お父さん犬のキャラクターを展開するソフトバンクなど20を超える企業との提携プランで対抗する。知名度はトップクラスの東電でも、一般家庭向けの積極的な営業活動は初めて。同社の佐藤梨江子執行役員は「象徴となるものが欲しい」とし、東電で長年省エネPRキャラクターとして親しまれてきたでんこちゃんの起用も含め、小売事業でもマスコットの起用を検討していることを明らかにした。

  大和証券の西川周作アナリストは、顧客獲得にキャラクターを用いることは、「子供に訴求するとともに、家庭の決定権を握る女性、主婦に対するイメージ戦略の部分もある」と分析する。電力小売市場について「主戦場は相対的に使用量の多い顧客」とし、営業戦略上も「子供の多い大家族は重要」と話した。

主戦場は大家族

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Source: JX Holdings Inc.

 各社がそろって電気使用量の多い大家族の契約獲得を狙うのは、電力会社にとって利幅が大きく値下げ余地がある顧客層のためだ。これまで各地域の大手電力会社が提供してきた従来の料金体系では、月120キロワット時以下の使用量が少ない契約では、ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)の考えに基づいて1キロワット時当たりの単価が低い水準に抑制されている。

  各社がモデルケースとして取り上げている首都圏で一戸建てに住む3人家族の電気料金(40アンペア契約で毎月の使用量は400キロワット時)は、従来の東電の料金と比較すると1-8%安い。さらに電気使用量が多い世帯(50アンペア契約・月700キロワット時)は同3-12%安に拡大する。カテエネコのキャラクターで首都圏に進出する中部電力の林欣吾執行役員は会見で「ターゲットはどの会社も同じ。電気使用量の多いところ」と話した。

首都圏需要の1割狙う

  電気事業への参入にあわせ、企業キャラクターの火ぐまのパッチョの友達として電パッチョというキャラクターを新たに誕生させた東京ガスは、20年に首都圏の電力需要の1割(300億キロワット時)獲得という目標を掲げている。同社は昨年12月、電気料金のほか、都市ガスの契約と組み合わせることで追加で月250円を割り引く方針などを他社に先駆けて発表。その後、通信事業者など他の新規参入企業も自社サービスとの組み合わせによるセット割引を相次いで発表。これを受けて東ガスは2月、昨年末に発表した料金を値下げした。

恩恵を受けない層

  一方、自由化の恩恵にあずかりにくいのが電気使用量の少ない世帯だ。テレビのコマーシャルでも親しまれているエネゴリくん参加のイベントを展開しているJXエネルギーは、首都圏の3分の2にあたる月180キロワット時以上を使用する顧客層にメリットが出る料金体系を提示。いち早く顧客獲得競争に参入して囲い込むため、他社に比べて大きな割引特典を付けた。JXエネルギーの大村博之電気事業部長によると「さらに使用量の少ないお客様にもトライしたかったが、そこで下げると事業の持続性は成り立たない」という判断があったという。

  CM総合研究所の調査で15年度のテレビコマーシャル好感度1位を獲得した三太郎シリーズを展開しているKDDIは、雷神のイメージから鬼ちゃんを電力小売事業のメインキャラクターに据えて新規参入をアピール。半数を占める月300キロワット時以下のあまり電気を使わない世帯にも魅力を知ってもらうため、携帯電話とのセット割引として、全ての契約者に毎月の電気料金の1-5%相当を電子マネーで還元するプランを考案。石川雄三専務は「どんな世帯もどんな季節も必ずお得にする」と話した。

  博報堂調査では、自由化後に電気の契約先を変えてみたいという回答が7割を超えた。同社の報告書によると、電力会社を選択する上で最も重視するポイントは「料金の安さ」。次いで「料金メニューや手続きのわかりやすさ」と「安心安全なイメージの企業」という声が挙がった。価格が安く企業イメージが良ければ、異業種からの参入であっても選ばれる可能性があるという消費者の心理が明らかになった。

巨大な経済効果

  日本銀行の試算によると、11年にゆるキャラグランプリで優勝したくまモンが、その後の2年間で熊本県にもたらした経済効果は1244億円。くまモンを利用した商品の売り上げや関連イベント、スマートフォン用アプリなどが観光客の増加に寄与した。またRJCリサーチがまとめた直近(13年)のキャラクター総合力ランキングでは、1位のくまモンに次いで、ソフトバンクのお父さん犬が2位となっている。

  企業や官公庁などにキャラクター利用に関するコンサルティング事業を担当している電通の山本達也クリエーティブ・ディレクターは、電気だけでなく保険や金融など、消費者が理解を後回しにしがちな商品やサービスでは、その魅力をキャラクターに語らせることで消費者の関心を促す効果が大きいと話す。こうした日本企業の取り組みは、子供っぽいものを避ける傾向がある欧米とは異なり、大人でもキャラクターを受け入れる土壌がある「日本独自の文化的背景が大きい」という。

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