日本株はアベノミクス下で最も割安、国債対比で-年末2万円超と野村

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  • 株式と国債の利回り格差、2012年7月以来の水準に拡大
  • いつかは修正され、水準が近づく可能性-三菱UFJ国際投信

日本銀行のマイナス金利政策で国債利回りのゼロ%割れが広がる中、日本株の相対的な魅力がアベノミクス下で最も高まっている。

  TOPIX構成銘柄の1株予想利益を株価で割った予想株式益利回りは12日に8.21%と、第2次安倍晋三内閣の発足前の2012年9月以来の高水準を付けた。年初からの株価急落が背景だ。10年物国債利回りを差し引いた利回り格差(イールドスプレッド)は8.12ポイントと、12年7月以来の水準まで拡大した。米国のイールドスプレッドは先週4.91ポイントと日本の半分強だった。

  日銀は先月末にマイナス金利政策による追加緩和を決めたが、世界的な景気減速と資源安を背景とした株安・円高基調がなお続いている。10年物国債利回りは初めてマイナス圏に低下し、新たな投資には厳しい環境だ。日本株は代表的な指標で測った適正水準を大幅に下回っているとの見方も出ている。野村証券は日経平均株価が今年末に2万2000円と、20年ぶりの高値を付ける可能性があると読む。

  三菱UFJ国際投信戦略運用部の石金淳チーフストラテジストは、国債利回りの低下で「株式の配当利回りの方がよほど高い。明らかに割安だ」と指摘。「昨今出ているさまざまな良いサインが足元では無視されている」と言う。日経平均で「1万5000-7000円程度でボラティリティの高い状況が1、2カ月は続く」としながらも、両者の利回り格差は「いつかは修正され、水準が近づく」可能性があるとみる。

  長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは先週、初めてゼロ%を割り込み、マイナス0.035%まで低下。ブルームバーグの試算によると、国債発行残高の約3分の2で利回りがマイナス圏にある。日経平均株価は約1年4カ月ぶりに1万5000円を下回り、世界の株式時価総額は約8.6兆ドル消失。円相場は1ドル=110円99銭と日銀が追加緩和した14年10月末以来の高値を付けた。

  マイナス金利の国債を購入すると、償還時に損失が確定するため、より深いマイナス金利で転売できる見通しがないと大規模な新規買い入れや償還分の再投資は難しい。一方、TOPIXは12日に付けた14年10月以来の安値1193.85から18日には1322.28まで約11%反発した。

足元から十分にアップサイド

  東証一部に上場している企業の予想株価収益率(PER)は12日に12倍と、12年9月以来の水準に低下。TOPIXの株価純資産倍率(PBR)は1倍と13年1月以来の低水準を付けた。理論上は時価総額と企業の純資産が等しくなる水準だ。S&P500種株価指数の予想PERは世界的な株安下でも16倍程度で、PBRは2.6倍前後だ。

  野村証の松浦寿雄チーフストラテジストは16日付リポートで、米国の堅調な景気回復と緩やかな利上げという「日本株にとってのベストミックス」が崩れたと指摘。今年末の予想値を日経平均株価で従来の2万2500円-3500円から1万9000円-2万2000円に引き下げた。ただ、業績と需給、政策の見方が根本的に変わったわけではなく、足元の水準からは「十分にアップサイドがあろう」との見方を示した。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の渡辺篤クオンツアナリストらは15日付リポートで、東証一部の金融を除く3月期決算企業は今年度の売上高が前年比1.5%、経常利益は5.6%増えると予想。増益率は昨年末時点の会社予想を3ポイント下回ると言う。それでも、東証一部の全上場企業の予想配当総額は今年度、9.9兆円と過去最高を更新すると見込んでいる。

金融不安の波

  日銀の企業短期経済観測調査(短観、12月調査)によると、大企業・製造業の今年度下期の想定為替レートは対ドルで118円ちょうどで、足元の113円前後とは隔たりがある。もっとも、市場関係者の予想中央値は今年末で123円となっている。

  日銀は先月末、金融機関の当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用する追加緩和を決定。イールドカーブの起点を押し下げ、巨額の国債購入とともに、金利全般により強い下押し圧力を加えると説明。必要に応じて追加利下げもあり得るとした。16日からの準備預金積み期間から実施している。

  黒田総裁は18日の参院財政金融委員会で、「世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まっている」と指摘。世界経済の実態はそれほど悪くないとも述べ、上海での20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では国際金融市場の不安定な動きについて議論するとの見方を示した。

  岩田一政元日銀副総裁は読売新聞のインタビューで、日銀のマイナス金利政策が失敗だとの見方は妥当ではなく、世界的な金融不安の波に飲み込まれているだけだと指摘。自民党の山本幸三衆院議員はインタビューで、世界的な市場の混乱の収拾には日銀が単独で追加緩和しても効果は期待できないと指摘。日米中が財政拡大と金融緩和で政策協調しないとうまくいかないとの見解を示した。

  アムンディ・ジャパンの浜崎優市場経済調査部長は「まずは市場心理の落ち着きが重要だ」と指摘。円相場の着地点は「110円程度ではないか。落ち着けば、株式市場も先行きに目が向く」とみる。110円程度なら「日本企業の採算に厳しい水準ではない。世界景気の緩やかな回復が続くなら、株価もそれなりに戻りを試す。PERが従来の14-15倍になれば、日経平均で1万8000円台までは戻ってもおかしくない」としている。

来期は1桁増益か

  安倍首相の政策ブレーンである本田悦朗内閣官房参与はインタビューで、年初来の円高は「激し過ぎる。日本のファンダメンタルズに合っていないと思う」と指摘。実体経済や物価次第で来月の追加緩和もあり得ると述べ、17年4月の消費増税も2年程度延期すべきだとの見解も示した。野村証の松浦氏は、日本株にとっての「カタリスト」は年前半の衆参ダブル選挙や消費増税延期、年後半の円安や米株高だとみる。

  三菱UFJ国際投信の石金氏は、対ドルで「110円を超える円高になると、日本企業は減益になる可能性がある。市場はその辺を心配している」と言う。ただ、利上げ局面に入った米国と日銀は「金融政策の方向性が逆だ。110-116円程度で動くなら、来期は1桁の増益。減益にはならない」と分析。「かろうじて増益が保てると分かれば、株価は今よりは少し上がっても良いのではないか」とみる。

  運用資産4.65兆ドルを抱えるブラックロックの調査によると、日本の個人投資家は金融資産の69%が現預金で、世界全体の平均値より10ポイント高い。一方、今後12カ月に購入を考える投資先は株式が46%で最も多く、預貯金は27%、債券は13%にとどまった。

  アムンディ・ジャパンの浜崎氏は、国債利回りが非常に低いのは金融緩和の効果だけでなく「先行きデフレから脱却できるとの期待が低いからだ」と指摘。デフレ心理が変わらないと、超低金利が長期化すると読む。株式の益回りは「企業が配当を増やす中で株価が下がった」からだと説明。「金利商品ではリターンがもうほとんど取れないので、一定の配当を出せる銘柄は割安感が意識されやすい」と語った。

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