年末130円まだ描ける、「確信なきリスクオフ」の円高続かず-野村

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  • 投機的な円ロングの解消だけで、117円50銭程度まで戻る-池田氏
  • 米利上げ3回で130円、マイナス金利が新年度のリスク投資後押し

世界的な金融市場の混乱を受け、ドル・円相場の予想を円高方向へ修正する金融機関が相次ぐ中、野村証券は年末1ドル=130円の円安シナリオがまだ維持可能とみている。まずは3月前半に発表される米経済指標が最重要のチェックポイントになるとしている。

  日本銀行による1月29日のマイナス金利政策発表を受けて円安が進んだのは当日だけで、世界的な株価急落などを背景に2月に入り円は急騰。月初に121円台だったドル・円相場は、11日には一瞬ながら2014年10月末以来の110円台に突入した。その後円の上昇は一服したが、米国の利上げ後ずれ観測も強まる中、市場では12年末から続いてきたドル高・円安トレンドの転換を指摘する声が増えている。

  こうした中、野村証の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは16日のインタビューで、ドル・円は下値を見た可能性が高く、14年末から掲げている「16年末130円」との予想を変える確定的な材料は「まだない」と語った。18日午後3時55分現在は113円85銭前後で推移している。

  池田氏は、英国での複数のヘッジファンドとの面会を踏まえ、今回のリスクオフは米中景気や中国人民元、米利上げの動向をめぐる不透明感に根差した「確信のない」もので、「何が起きているのか分からないが、強気のポジションは取れないので、みんな市場のリスクオフに付き合わされて、仕方なく弱気のポジションを作っている感じだ」と説明。「そうすると自己実現的にどんどん相場は悪くなってしまうが、もともと確信がないため、ちょっとしたきっかけで戻してしまう」と指摘した。

  池田氏の推計によると、もともと円ロング(買い持ち)だった投機勢のポジションは先週後半に「史上最大に匹敵」する水準まで拡大しており、こうした投機的な円ロングが解消されるだけで、ドル・円は117円50銭程度まで戻るという。118円から上に行くには米利上げの織り込みの復活が必要で、「1回分だけでも118円から119円ぐらいまで。2回利上げできるというところまで米指標が強気になれると122円ぐらいまで」戻せる計算だとしている。

  バークレイズは先週、ドル・円相場見通しを第4四半期で95円と、従来の120円から大幅に引き下げた。リスクセンチメントの悪化や日銀の金融緩和余地をめぐる疑念、米利上げ観測の後退などが理由だ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券も年末の想定レンジを従来の121-134円から104-117円に変更。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは今週、米金融政策の予想変更に伴い、ドル・円の年末予想を120円から110円に下方修正した。

  池田氏は、ドル・円が昨年6月に13年ぶり円安値の125円86銭を付けた当時と違い、今はアベノミクスに対する期待感がほとんどないため、「当面は米国の利上げ期待に引っ張ってもらうしかない」と指摘。ワーストシナリオは米景気が決定的に悪くなり、「ローコンビクション(低い確信)リスクオフがハイコンビクション(高い確信)リスクオフになってしまうこと」とした上で、米供給管理協会(ISM)指数や雇用統計など3月前半に集中する米重要指標でリセッションリスクが低いことが確認できれば、130円予想は維持できると語った。

  ブルームバーグが先物データを基に算出した米利上げ予想確率によると、米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年12月の利上げに続き、年内に追加利上げに動く確率は4割程度となっている。昨年末時点の同確率は9割超だった。

マイナス金利政策の効果 

  池田氏は1月の日銀会合前のインタビューで、日銀が何もせずに円高進行を放置し、115円以上の円高が定着すれば、 投資フローや企業活動に「不可逆的なダメージ」を与えるとし、追加緩和の打ち止め感を防ぐにはマイナス金利政策への移行を示唆することが必要と話していた。

  池田氏は、マイナス金利政策で市場が見逃している重要ポイントは、国債市場の7割方がマイナス金利の状況で、中長期で資金を運用する年金や地域金融機関が新年度の運用方針を策定する際に「必然的に相対的高金利の外国債券や国内外の株式などに分散を広げることにつながってくる」ことだと指摘。「3月の段階である程度リスクオフが静まっていれば、新年度の運用方針がそれなりにリスクを取りに行くという循環になっていくので、最終的に130円まで行けるようなシナリオもまだ描ける。ただし、130円まで行こうと思ったら、米利上げは3回は必要」と語る。
  
  市場では円売り介入への警戒感もある。池田氏は介入は世界的な危機対応の機運に水を差し、G7における日本の立場を極端に悪化させるとし、「基本的にはあり得ない」とみる。G7の取り決めで介入を行う際には相手側の承認が必要で、承認を得るには誰の目で見ても高過ぎるというところまで円が強くならなければならないと説明。ドル・円が「少なくとも1ドル=105円というOECD(経済協力開発機構)計算の購買力平価を下回らないと話にならない」とし、105円を下回らない間は「日銀によるマイナス金利政策の強化が、事実上の円高抑止政策になる」と語った。

(第8段落を追加して更新します.)
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