マイナス金利もかなわぬ経常黒字国通貨、1ドル=130円は天空との声

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  • マイナス金利導入でも黒字国・地域の通貨高には歯止めかからず
  • キャリートレードのリターン、今世紀最悪のスタート

市場が急落に見舞われた際、外国為替の投資家が他の何よりも手掛かりにしようとする数字がある。

  それは、金利や経済成長、またはインフレ格差に基づくバリュエーション(評価)といった通常の為替変動要因ではなく、各国・地域の経常収支だ。2016年に入り対米ドルで上昇している円やユーロ、スイス・フラン、スウェーデン・クローナなど主要7通貨はいずれも経常黒字の国・地域の通貨だ。

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、「単純に経常黒字とは円を買いたい人の方が円を売りたい人より多い状態で、本当はそれが尊重されるべきだ。リスクが取れない世の中になってくると本当の地力の部分しか残らなくなる」と指摘。投機で「ギャンブルする人がいなくなるとこれくらいの水準になるということだ」と語る。

  市場関係者からは、現在のような状況では、これらの国・地域の一部が導入したようなマイナス金利が通貨上昇に歯止めをかけることはできず、通貨高は輸出企業の収益を目減りするなど経済成長を損ないかねないため問題になると指摘が出ている。

  ナショナルオーストラリア銀行(NAB)の通貨戦略グローバル共同責任者、レイ・アトリル氏(シドニー在勤)は、「リスク市場の地合いが好転するまで、経常黒字国の通貨は上昇圧力にさらされるだろう」と言う。 

  円は日本銀行がマイナス金利政策の導入を発表した1月29日末以来、対ドルでは6%近い上昇。先週は一時、2014年10月末以来の高値となる1ドル=110円99銭を付けた。ユーロも欧州中央銀行(ECB)が下限政策金利の中銀預金金利のマイナス幅を拡大し、債券購入プログラムの期間延長を決めた昨年12月3日以来、6%近く上昇している。スイスは昨年1月にマイナス金利を導入、スウェーデンはレポ金利を従来のマイナス0.35%から同0.5%に引き下げている。

大規模な円ショートポジション

  財務省の国際収支統計によれば、15年の日本の経常収支は16兆6413億円の黒字と、原油安などを背景に前年から6.3倍に拡大した。

  JPモルガン・チェース銀行為替資金本部の佐々木融チーフFXストラテジストによると、日米の長期金利差を200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度とした場合、経常収支と金利差を用いたモデルではドル・円の適正レートは1ドル=100円程度という計算になる。足元のドル・円は113円台で推移している。

  佐々木氏は、それほどのインパクトがある円買いフローを日本の証券投資で吸収していると指摘した上で、同規模の「円ショートポジションを日本人が持っていると考えればいい」と説明する。日本の投資家は15年中に約17兆円の対外証券投資絡みの円売りを行っており、注目は「それをどう戻すかということになる」と言う。

130円は天空の世界

  JPモルガンのグローバルFXボラティリティインデックスは先週、約4年ぶりの水準まで上昇。一方、ドイツ銀行のG10キャリーバスケットインデックスは今年に入り5%近く下落し、同期間としては2000年以降の最悪のリターンとなっている。

  市場のボラティリティの高まりに伴い、低金利通貨を借りて高金利通貨に投資するキャリートレードのリターンが悪化すると、資金の流れが逆流する可能性が出てくる。こうした取引の巻き戻しは調達通貨である円やユーロの上昇につながる。

  みずほ銀の唐鎌氏は、為替の動きは短期では金利差、中期では需給、長期では物価で測ることが多いが、物価に関しては円安は購買力平価で行くと行き過ぎで、「そこに今実需のファクターも意識されており、もう円安に行く理由がない」と指摘。ドル・円の「120円は遠い。130円などはもう天空の世界で、成層圏くらいまで行っている感じ」だと言う。  

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