【インサイト】HSBCが報酬凍結を断念-業界全体にとって悪い兆候

株価急落、欧州銀行株と社債への売り浴びせ、予想される新たな人員削減の波―。これらを考えればバンカーは職があるだけで十分に満足すると思うだろう。ところが全く違う。

  英銀HSBCは全世界での報酬凍結を、わずか2週間足らずで撤回した。行内で配布された文書によれば、行員からの怒りのフィードバックが理由だった。凍結は2015年のレビューで既に提示されていた報酬増も取り消す内容だったとブルームバーグ・ニュースが報じた。使い道をあれこれ考えていた行員たちにとって、ありがたくない話なのはもちろんのことで、結局この労使交渉で行員側が勝ったらしい。

  しかしこれは懸念を呼ぶ展開だ。HSBCにとってだけではない。経費の抑制は今、欧州の銀行にとって最優先課題だ。なのに、最新の四半期決算を見ると、収入に対する費用の割合はむしろ上昇している。費用の多くが規制に絡む負担やテクノロジーのための間接費であることは事実だが、報酬専門家によれば行員の平均報酬は十分には減っていない。

  HSBCが報酬を凍結すると言いながら実行できないのでは、業界全体のコスト管理への取り組みについて投資家が疑念を抱くことになりかねない。報酬凍結という最初のハードルでつまずいていては、信頼回復にはつながらない。

  また、HSBCでの攻防は、金融業界の従業員たちがまだ、報酬に関する期待をリセットできていないことを示唆する。今年のボーナス支払いシーズンの初めごろに報酬比較サイト、エモルメントがまとめた金融業界の調査によれば、フロントオフィス業務に携わるバンカーの総報酬は全体的に2桁台の伸びだった。一方で、ボーナスの額に満足しているバンカーは少ないようだった。

  報酬に関するこのような行員と経営陣の認識のずれを正さなければならない。金融は他の業界に比べて異常なほど報酬が高い。危機以降の市場で金融セクターのパフォーマンスが全市場を下回っている状況と正反対だ。金融機関の経営陣が投資家からのメッセージを受け取ったと納得されるためには、行員も妥協しなければならない。それも早急に。

原題:HSBC’s Pay Freeze Climbdown Could Infect Other Banks: Gadfly(抜粋)

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