トヨタを軸に始まる再編、自動車業界は20年までに2グループへも

  • 経営資源の分散を避けて統合していくのは自然な流れ
  • トヨタ1社に偏った構造は競争環境の観点で懸念

乗用車・商用車メーカー上場10社がひしめく日本の自動車産業に再編の動きが出ている。自動運転や環境対応など新技術の開発負担の増加や競争の激化で、日本の自動車メーカーは2020年までに2グループ程度に集約されるという見方もある。

  トヨタ自動車は1月29日、軽自動車や小型車を得意とするダイハツ工業を完全子会社化すると発表した。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表兼アナリストは、「日本は自動車メーカーの数が多過ぎてリソーセス(経営資源)が分散している。一定の無駄を排除して統合するのは自然の流れ」と指摘。技術提携なども含めると20年までには2グループ程度へ集約が進むとみており、残ったとしも3グループになるという見方を示した。中西氏はインスティテューショナル・インベスター誌で6年連続トップアナリストに選ばれている。

  経営資源を有効利用する動きはここ数年、特にトヨタで目立っていた。14年11月にはデンソーとアイシン精機、住友電気工業などに分散していた制御ブレーキ事業を集約すると発表。ダイハツ子会社化に際した会見で、豊田章男社長は「自前主義にこだわっていると競争に勝てないため、小型車をダイハツに任せることにした」と述べていた。

  経営資源の不足は、小規模の会社にとってより深刻だ。創業109年となるダイハツの三井正則社長も会見で「自動運転など次世代技術が待ったなしの状態。自らの事業規模を超えるリソーセスが必要となるのは明らかだった」と決断の背景を語っている。

  海外の自動車産業では1980年代から独フォルクス・ワーゲン(VW)を中心に合従連衡が進んだのに対し、国内ではグローバル化の生き残りをかけマツダが米フォード・モーターと、三菱自動車が独ダイムラー、またスズキが米ゼネラルモーターズ(GM)と資本提携したが、いずれもその後解消されている。商用を含め500万台規模の国内市場には現在、上場メーカーだけで10社がそれぞれ日本を拠点に研究開発し、競合している。日産自動車は仏ルノーとの提携を99年以来維持している。

  新技術対応への開発負担が増す中、トヨタと他のメーカーには経営資源の面で大きな開きがある。ブルームバーグのデータによると、トヨタの現預金・同等物や短期保有の有価証券の総額約5兆2000億円は、他の主要6社の合計額を超える。15年度の研究開発費については、トヨタが1兆600億円を見込んでいるのに対し、ホンダは7350億円の計画。トヨタの額は日産やマツダ、スズキ、三菱自動車、富士重工業の5社計画の合計を上回る。

提携を模索

  提携模索の動きは既に始まっている。トヨタとマツダは昨年5月、経営資源の活用や商品・技術の補完などを目指した業務提携に向けて基本合意した。マツダの藤本哲也執行役員は今月4日、具体的な提携内容については委員会で検討していると述べている。

  トヨタについては、インド市場でシェア約4割のスズキと株式持ち合いも視野に提携交渉をしていると1月27日付の日本経済新聞が報じた。スズキは独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携解消で約20%の自社株を約4600億円で買い戻したこともあり、連結の現預金残高は昨年3月末の約4600億円から昨年末にほぼ半減の約2300億円となっていた。

  スズキの豊田泰輔常務は今月8日の決算会見で、手元資金が「足りないというわけではない」としながらも、中期計画の戦略見直しを含めて対応を検討していると述べた。買い戻し株の処理については年度内に何らかの方針を出すとしている。トヨタ、スズキともに報道を受けて「提携交渉の事実はない」と否定している。

  これまで独立路線を歩んできたホンダも例外ではない。GMと次世代燃料電池や水素貯蔵システムの共同開発で13年7月に合意した後、提携分野の拡大を検討している。八郷隆弘社長は1月の米デトロイト・モーターショーで、電子技術であれ、人工知能であれ、両社にとって「ウィンウィン」となる分野はないか話をしていると述べた。

トヨタに偏った構造でいいのか

  アナリストの中西氏は一方で、トヨタ1社に偏った構造に懸念を示す。欧州メーカーが電子技術の取り込みで、また米国メーカーがIT技術との融合で存在感を高める中、中西氏は、新しい技術を柔軟に取り入れて開発する「力のある部品メーカー」が存在することは競争力維持の上で重要であると指摘。デンソーやアイシン精機のようなサプライヤーがトヨタの垂直統合下にあることは「自由度が限られる」可能性もあるという。

  トヨタの豊田社長はダイハツ完全子会社化の会見で「トヨタがアライアンスをすると、上から目線というのが問題となる」と述べ、「トヨタはアライアンスは得意ではない」と認めている。中西氏は「自動車メーカーが1社しかない韓国をみても、1社だけで健全な発展をするのか」は疑問で、「トヨタに対抗する軸を育成させて競争環境をつくる必要がある」と述べた。

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