中国経済の減速や商品市況下落の影響などから、日本の企業業績の落ち込みが急だ。四半期ベースでみると、およそ3年前に安倍政権が再始動して以来、初めて事前予想を下振れる企業の割合が上振れる企業に勝る見通し。グローバル投資家から得ていたファンダメンタルズに対する信頼感が揺らげば、日本株の先高観に黄信号がともる。

  ブルームバーグ・データによれば、1月1日から2月5日までに四半期決算を発表した東証1部企業のうち、純利益がアナリスト予想に比べ下振れた企業の割合は52%、上振れた割合は48%となった。下振れ企業が多くなるのは、アベノミクス相場が本格始動する直前の12年10-12月発表時(下振れ57%、上振れ43%)以来だ。下振れ企業数のウエートが高い業種は石油・ガス、公益、素材、消費財。金額ベースで下振れ率が高かったのは資本財、素材、公益だった。

  みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資分析部の米澤忍シニアクオンツアナリストは、「企業業績は増益のモメンタムが低下し、踊り場に入っている」とみる。経常利益ベースで上方修正と下方修正のすう勢を示すリビジョン・インデックスは、1月末時点でマイナス8.2%と13年1月のマイナス9.9%以来の悪さになっている、と同氏は指摘。「資源安の影響を受けている鉄鋼や石油・石炭製品、卸売などが厳しい。小売は業績が良い企業で、そこまで良くないという点がマイナスになっている」と分析した。

  会社発表をみずほリサーチがまとめた(金融除く東証1部3月本決算企業、発表率56%)ところ、15年10-12月期純利益は4日時点で前年同期比10%減と12年7-9月期(30%減)以来の減益率になる。16年3月期通期計画から第3四半期までを差し引くと、1-3月期は21%減とさらに落ち込む見通しだ。

  12年7-9月期は欧州債務問題の再燃や中国景気への懸念が高まり、世界経済の減速から輸出が弱含んだ時期に当たる。為替市場ではドル・円相場が1ドル=70円台の超円高水準にあり、輸出企業の採算は厳しく、TOPIXは同年6月にバブル経済崩壊後の最安値を付けた。

日経平均EPSが低下中、妥当感も

  企業収益の下降トレンドは日経平均株価の予想1株利益(EPS)の動きでも確認でき、5日時点で1144円と昨年11月30日時点の直近ピーク1275円から1割減った。これに基づく予想株価収益率(PER)は14.7倍と、過去3年のレンジ13-16倍の中央に位置する。年始来の株価急落後も業績の悪化でPERは下がり切れず、フェアバリュー感が漂う。

  楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは、「中国不安や原油安が世界景気に波及し、今の収益環境が続くと企業は利益を稼げない」と言う。日本株のPERは過去の推移から15倍が妥当水準で、企業業績への悲観が強まれば14倍、楽観になれば16倍に近づく傾向があるとも話した。4日時点で日経平均のPER15倍は1万7385円、14倍は1万6226円、16倍は1万8544円。

  土信田氏は、「金融政策が次第に効果を発揮しなくなっている。業績に今後暗雲が立ち込めると、賃上げに影響する」と警戒感を示す。この数年間、世界的に金融緩和策を積極採用してきたが、世界経済は期待されたほど伸び切れず、「株価だけ先行して上がっていった部分を修正し始めている可能性がある」ともみている。

  日本銀行は1月29日、金融機関が保有する日銀当座預金に0.1%のマイナス金利を適用することを決めた。直後にドル・円は1ドル=118円台から121円台へ円安の動きが鮮明化したが、供給管理協会(ISM)の製造業景況指数の下振れなど米国景気に対する不透明感が強まり、日銀決定前の水準に逆戻りした。東京証券取引所によると、海外投資家は1月4週まで4週連続で日本株を売り越している。

  三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、「日銀がいくら頑張って緩和しても、国際協調がないと円安には効かない」と指摘。企業業績については、「外需でもうけていく部分は剥落してきた。内需がなかなか盛り上がらないのが問題だ」と話す。ただし、減益傾向に歯止めがかかる方向性が見えれば、「資金がまた日本株に入ってくるだろう」と予想した。

  8日の日本株市場では、米国の雇用が伸び悩む中で利上げが継続するとの懸念や国内企業業績への不透明感が強まり、TOPIXは一時前週末比1.7%安の1345.91と1月22日以来、約2週間ぶりの日中安値を付けた。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE