ハゲタカの恐怖薄れ投資ファンドに追い風、日本の事業継承で機会

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  • レコフ調べでは15年の事業承継関連のM&A件数は調査以来過去最高
  • 「日本の企業オーナーの考えは変わりPEを信頼」とベインの杉本氏

かつて「ハゲタカ」と恐れられていた投資ファンドが日本での投資機会を増している。後継者が見つからなかったり、将来展望に自信を持てなくなったオーナー経営者が、ファンドの出資を受け入れ、企業の存続や発展を託しているからだ。

  米大手投資ファンドのべインキャピタルが2015年に投資した3件はすべて事業承継関連だった。この3件は、訪日客の獲得や海外展開を見据える大江戸温泉ホールディングス、不適切な会計処理の責任を取って創業社長が辞任した雪国まいたけ、創業社長の保有株が担保割れで売却され筆頭株主が不在となった日本風力開発。企業価値は計10億ドル以上で、16年も同程度を見込む。

  合併買収(M&A)助言のレコフによると、15年の事業承継に関連したM&A件数は5年前の1.9倍に増えており、調査を開始した08年以降で最高。東京海上キャピタル(TMCAP)が現在投資している5件のうち4件も同様の案件で、ユニゾン・キャピタルでは関係した案件の半分以上が経営者交代に関するものだった。

  ベインキャピタルの杉本勇次日本代表は、「日本のカルチャーやトレンドは変化し続けており、日本の企業オーナーの考えも変わってきた。プライベートエクイティ(PE)が事業を一緒に大きくする信頼できるパートナーだと多くの経営者に認識され始めている」と話す。TMCAPやユニゾンも、後継者難の企業が事業効率の改善や営業基盤の拡大などでPEファンドの支援を受けるケースは増えるとみている。

ハゲタカ

  日本で投資機会が増しているPEファンドは、企業経営者や従業員と関係を築きながら中長期投資し、経営再建を図る。企業価値が向上すると上場や他社への売却を目指す。

  しかし、外資系ファンドが日本で投資を活発化させた2000年前後は、一様に「ハゲタカ」と恐れられた。米リップルウッドによる旧日本長期信用銀行の買収など、バブル経済崩壊後、経営難に陥っている企業を安値で買い、売却し利ざやを稼ぐ姿を表現した言葉だ。TMCAPの佐々木康二社長は、「ファンドという言葉はとても良くない印象で日本に入ってきた」と話す。

  欧州系PEファンド、ペルミラの藤井良太郎日本代表も、投資ファンドは「特殊な人達」と思われており、「ほとんどの人がPE、ヘッジファンド、アクティビスト、ディストレストファンドの差が分からなかった」と指摘。メディアの取り上げ方も「米国のファンドがかわいそうな日本企業をいじめている、という構図だった」と当時を振り返る。

  ベインキャピタルの杉本代表は、「バブル崩壊後の不良債権処理問題が発生した当時はディストレスト案件が多かった。日本経済が復活した現在、われわれは種類の違うファンドと認識されている」とし、「PEはハゲタカではなく、事業を育てるビジネスパートナーと見られている」と言う。

事業承継ニーズ

  90年代のバブル経済期には商社や金融機関が後継者難の企業に対して資本や人材を提供、支援してきた。ところが、バブル崩壊後は「資本提供側の環境は変わった」と、ユニゾン・キャピタルの川﨑達夫パートナーは話す。時価会計が進むとともに、金融の世界では自己資本規制など健全性が厳しく求められるようになり、以前のように簡単にはリスク投融資ができなくなったからだ。

  一方、少子高齢化が進む中、事業承継のニーズは高まるばかり。ユニゾンの川崎氏は「事業環境が簡単ではないので、子どもに継がせたくないという理由もある」と述べ、事業存続に向けファンドに救いを求めてくるケースがあるという。親族が事業を承継したとしても、「数年で壁にぶつかり、再成長に向けファンドに打診してくるケースもある」と、TMCAPの佐々木社長は話す。

地銀とファンドのコラボ

  地域に根ざした伝統産業などでオーナー系企業を取引先として多数抱える地方銀行。少子高齢化に伴う貸し出し難の中で、融資先の存亡に関わる事業承継は重要な課題だ。専門知識を求めてPEファンドに助言を求めるケースもある。

  米系ファンドTPG出身で、日本産業推進機構 (NSSK)の津坂純氏によると、案件の3分の1は地銀からの紹介。同氏は、地銀からみれば「自分の大事な取引先が悩んでいる時に、事業プロセスと人材ネットワークの紹介できる先を連れてくれば、良いサービスをしたことになる」と説明。ファンドが投資した場合は、地銀も買収資金やビジネス拡大のためのローンを付けるなど融資機会を得られると言う。

  三重銀行は、NSSKが水族館やドライブインを運営する夫婦岩パラダイスの事業承継支援のため、株式や資産を取得する際にLBOファイナンスによる融資をしている。

  ユニゾンの場合、ファンド出資者に地銀はこれまでほとんど名を連ねていなかったが、直近の4号ファンドでは10社弱に増えた。川崎氏は、「PEファンドと仕事をすると違うアプローチがあるかもしれないという考えの地銀が出てきた」と話す。

(第8段落のコメントを加筆して、更新しました.)
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