黒田マイナス金利、国債90兆円保有のゆうちょ銀直撃、運用改革急務に

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  • 経常利益へのマイナス影響20%との試算も-メガ銀5%、地銀10%
  • 収益拡大に向けリスク資産への投資を強化、新体制で運用開始

日本銀行のマイナス金利政策がゆうちょ銀行の収益を直撃しそうだ。運用資産の半分近くを占める日本国債の利回りが低下しているからだ。他の民間銀行にある融資機能はまだ持っていないため、運用手段の多様化が急務となる。昨秋上場したばかりの同行は早くも試練に直面する。

  ゆうちょ銀の運用資産残高(2015年9月末)205兆円のうち国債は92兆7736億円。日銀の黒田東彦総裁が異次元緩和を打ち出した13年4月以降残高を減らしてきたが、比率はまだ45.2%ある。4月からは預け入れ限度額が引き上げられる予定で、資産増加で相対的に収益性の悪化に拍車が掛かる可能性もある。

  SMBC日興証券の中村真一郎シニアアナリストは、新政策による経常利益へのマイナス影響度はメガバンク5%、地方銀行10%、ゆうちょ銀は20%と試算。「国内で稼ぐ資金利益の割合が多いところほど影響が大きい」という。波及効果には利ざや縮小なども含まれるが、国債に偏重するゆうちょ銀へのインパクトは大きい。

  日銀は景気浮揚や物価上昇を狙い当座預金の一部に年マイナス0.1%の金利を16日から適用する。実際の導入を前に国債市場では、既に長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時史上初のゼロ%を記録。新発2年債はマイナス0.215%にまで低下した。マイナス金利の影響による収益悪化懸念から銀行株は下落傾向を強めた。

リスク資産への投資

  同行は18年3月期末までに配当性向は年間純利益の50%以上とする目標を掲げる。これらの原資を確保するため、国債偏重から投資先の多様化を図っていく方針で、リスク資産への投資強化に向け1月から新体制での運用を開始した。こうした中、ゆうちょ銀は今週12日に昨年10-12月期決算を発表する予定だ。

  ゆうちょ銀の佐護勝紀副社長は1月のブルームバーグとのインタビューで、株式やオルタナティブ(代替投資)など投資の多様化を進めると述べた。株式は年内にも自家運用を開始したい考えで、プライベートエクイティ(PE)ファンドや不動産投資信託(リート)など投資に向け人材採用と体制整備を進めているという。

  同行の昨年9月末の資産構成(ポートフォリオ)は、国債が初めて100兆円を切り比率は過去最低となった。外国証券は昨年3月末から8兆円増やし56兆円となったが、株式残高は金銭信託を含めて約2.1兆円にとどまる。これらリスク資産は17年度中に60兆円に達する見通しとしているが、市場変動を受けやすくもなる。

新戦略への移行が急務

  SMBC日興の中村氏は、ゆうちょ銀は今後、「取りあえず含み益のある国債の売却によるキャピタルゲインで資金利益の減少をカバーできる」ものの、「これは不安定な利益だ」と指摘。株主に示した配当目標を達成・維持するためにも「国債の償還資金を外債や株式などに投資する新戦略のスピードアップが必要」と述べた。

  ゆうちょ銀は昨秋、親会社などと親子上場を果たした。15年9月期のグループ連結純利益は、ゆうちょ銀が約8割を占める稼ぎ頭のため、マイナス金利の影響はグループ全体に及ぶ可能性もある。同行は融資業務への参入などを視野に入れているが、導入には所管官庁から許認可を得た上で審査体制などを整備する必要がある。

  同行は16年3月期に経常利益で4600億円、純利益で3200億円を見込んでいる。

  9日の株式相場は円高進行などを背景に一段安となり日経平均株価は一時4.6%下落した。ゆうちょ銀株は同58円(4.4%)安の1269円まで値を下げた。

(第4、最終段落に国債金利や株価動向を追加します.)
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