東電広瀬社長:LNG上流投資の意思決定先送り-原油価格下落で

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  • 価格下落傾向での上流権益取得はリスク高い-様子見が必要
  • 自由化で収益の多様化が必須-ビッグデータ活用や海外発電事業で

東京電力は、2014年に政府の認定を受けた新総合特別事業計画で16年3月末までに意思決定するとしていた液化天然ガス(LNG)の上流権益投資の第1号案件について、判断を先送りする考えを示した。

  広瀬直己社長が5日、記者団のインタビューで明らかにした。同氏は、価格が下落している時に新たな上流権益を取得することは「リスクが高い」と指摘。権益への投資は安定的な調達や調達コスト低減を目的としており、投資判断が計画していた時期より遅れたとしても「原油の動向やマーケットの動向をもう少し見るべきだ」との考えを示した。

  同計画では、年1-2件程度の上流案件の評価を行い、15年度と16年度に1件ずつ投資の意思決定することが予定されていた。当時1バレル=約100ドルだった原油価格は現在では約30ドルまで低下。原油価格に連動する形で決まることが多い日本のLNG輸入価格と、米国の天然ガス価格の間の価格差は縮小しており、日本の輸入価格にあった割高感は弱まっている。福島第一原子力発電所の事故以降に相次いだ国内の商社や電力会社、ガス会社による米国産LNGの権益取得や売買契約締結の動きも一段落している。

北東アジアのLNG価格と米国天然ガス先物価格の値差

  東電と中部電力が15年4月に共同で設立した火力・燃料調達会社JERA(ジェラ)が、両社の新規の燃料調達や権益の獲得を担っており、16年夏には既存の燃料事業も同社に移管されることが予定されている。年4000万トンと世界最大級のLNG調達となるJERAの価格交渉力をテコに、上流権益も取得することで燃料調達コストの削減を目指していた。

小売り自由化の主戦場

  4月1日から始まる電力小売りの全面自由化では、首都圏の顧客を一手に握ってきた東電のエリアが主戦場となる。中部電力に加えて東京ガスやKDDI、JXエネルギーなどが競争力のある料金プランで首都圏市場への参入を決めている。東電もソフトバンクなどとの提携や他市場への参入で対抗策を打ち出している。

  電力市場の自由化で先行した諸外国でも既存の電力会社が市場シェアを奪われたことから、東電は原発事故の廃炉や賠償を継続するためにも収益の多様化が必須となっている。広瀬氏は「しょせん電気の部分はパイの食い合い。新たなパイを狙っていかなければいけない」と述べ、新たな事業に活路を求める考えを示した。

  具体的には、約2000万件の一般家庭の電力使用データを活用した事業への参入や、海外での発電事業の拡大、17年4月に自由化が予定されているガスの小売市場への参入などを検討。顧客の電力使用状況の細かいデータを集めたビッグデータを分析して活用することが世界的にも注目を集めており、東電も新規事業の開発に向けて他社との提携などを検討していることを明かした。

  広瀬氏は、電力が不足している新興国の市場は新たなビジネスチャンスと見ているものの「今のままでは駄目」だと話す。コスト競争力の高い「中国勢に相当苦戦する」ためだ。東電の高効率発電技術は「テクノロジーに価値はあるが顧客ニーズにはフィットしない」という。

  発電単価で判断される競争入札だけでは厳しいとし、60年以上にわたる発電所操業で得たノウハウや補修サービスなど、付加価値をつける形であれば中国勢に対抗することも可能だと述べた。

(第5段落以降を追加しました.)
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