商船三井がA格維持の正念場、構造改革が鍵-運賃急落で信用力悪化

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  • 唯一A格を与えているJCRが再格下げすれば野村BPIから外れる
  • 特損計上を受け対国債スプレッドは過去最大の153bpに拡大

新興国経済の悪化を背景に海運相場が過去最低を記録する中で、商船三井の信用力は年明け以降、一段と悪化している。今後実施する構造改革の内容次第では、シングルA格の格付けを失う可能性がある。

  商船三井は1月29日、構造改革費用として今期(2016年3月期)に最大1800億円の特別損失を計上すると発表。これを受け日本格付研究所(JCR)は同社の格付けを「A-」に1段階下げた上で格下げ方向で見直すとした。同社債(償還期限24年)の対国債スプレッドは年初から63ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大し、1日時点で過去最大の153bpに達した。

  ばら積み船の運賃市況を示すバルチック海運指数は、昨年8月以降で73%下落し過去最低水準になるなど海運業界には逆風が吹いている。第一中央汽船が昨年10月、民事再生手続きの開始決定を受けた。短期契約のドライバルク船が多い商船三井も市況変動の影響を受けやすくなっており、船隊縮小を含む構造改革を行うと発表。今期最終損益予想を1750億円の赤字に修正していた。JCRは「構造改革計画の詳細と効果を注意深く見守る」としている。

  SMBC日興証券の橋本宗治クレジットアナリストは、商船三井について「海運3社の中で海運市況の影響を一番受けている」とし、構造改革では「市況の読みが外れたとしても収益を確保できる体制になるかが大事なところ」と話す。同社債はA格相当以上の格付けが求められる野村BPI社債指数に入っているため、唯一A格を与えているJCRが再格下げすれば、「インデックス投資家からの機械売りが出る」と同氏は指摘した。

  JCR以外では、「BBB+」を付与している格付投資情報センター(R&I)が1月29日、格下げ方向で見直すと発表した。ムーディーズ・インベスターズ・サービスはすでに投機的水準の「Ba1」に格付けしている。

  商船三井の広報担当、椎名隆文氏は、社債価格の下落などについて「指標が悪くなるのは残念だが、今後の営業力、収益力を向上のための構造改革を行う予定だ」とコメントした。構造改革の詳細や発表時期は未定としたものの、短期契約のドライバルク船や、一部のコンテナ船を縮小していくとした。

海運市況の悪化

  投資家もリスク回避の動きを強めており、CMAによると、商船三井CDS(社債保証コスト)の1月の上昇率は約1.57倍で、1月26日には355ベーシスポイントに到達している。ブルームバーグデータによると、商船三井CDSの上昇率は国内企業で最大だった。同業の川崎汽船、日本郵船のCDSも同月にそれぞれ88bp、33bp拡大した。

   BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは、商船三井について「バルチック指数が底打ちしない中で、スプレッドはもっとワイドニングする可能性もある。底打ちしてくるまでは、クレジットスプレッドに終わり感は出ない」と話す。運賃市況次第で「必ず投資機会は来るが、もう少し見ないといけない」と言う。

資本増強を期待

  野村証券の荻野和馬クレジットアナリストは、商船三井のCDSについて「格付けが何ノッチも下がることを見込む水準まで悪化しているのは過剰反応だ」と指摘。構造改革と平行して「資本を回復する手段があれば、それをきっかけにCDSも低いところにいくことはあり得る」と述べ、普通株やハイブリッド証券による資本増強の可能性が考えられるとの見方を示した。

  同業の川崎汽船は、東日本大震災や世界的な景気減速の影響で12年3月期に414億円の純損失を計上。同年7月には公募増資と第三者割当増資で約286億円、劣後ローンで300億円を調達すると発表したが、第三者割当増資はその後中止した。

  商船三井が業績見通しの下方修正を発表した1月29日、日本銀行はマイナス金利の導入を決定。CDSは2月に入ってやや低下し、3日時点では315bpとなっている。野村証券はマイナス金利導入の影響が大きいと見ており、荻野氏は「おそらく商船三井の発表内容だけを考えればマーケットはネガティブに反応していたはずだ」との見方を示した。

(最終段落を追加して更新しました.)
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