日銀と「喧嘩してはいけない」、10年マイナス金利は年内到達-佐野氏

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  • 超長期債の満期保有を、途中で投げ売りすると負けになる-佐野氏
  • 9年ゾーンまでの国債利回りが一時マイナス圏に

マイナス金利が10年物国債にまで広がるのは時間の問題ーー。利回りの「自然落下」をキーワードに、これまで何度となく長期金利の最低更新で予想を的中させてきた東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、年内のマイナス圏突入を見込んでいる。

  「年内にも10年債利回りはマイナスに突入するのではないか。マイナス0.1%までの低下を予想している」。佐野氏は、従来の長期金利予想のレンジの下限を引き下げ、2016年1-6月にマイナス0.1-プラス0.5%、16年4月-17年3月にマイナス0.1-プラス0.75%としている。

  突出した利回り低下予想で市場関係者の注目を集め、長期金利の13年、15年、16年の過去最低更新を言い当てた佐野氏が推奨する投資戦略は、「中央銀行と喧嘩(けんか)してはいけない。日銀は、より長い年限を買う方向なので、30年債、40年債などの満期保有が正しい。ボラティリティが高い時に、投げ売りすると負けになる。途中で投げないことが重要」だと言う。

ブルームバーグ

  原油安などを受けた世界的な景気低迷懸念や国際金融市場の混乱を背景に、日銀は1月の金融政策決定会合で、過去に例のない0.1%のマイナス金利による追加緩和を賛成多数で決定した。金融機関の日銀当座預金の一部にマイナス金利を適用し、市場金利全般に強い下げ圧力を加える方針だ。

  長期金利は、日銀の追加緩和の発表を受けて初めて0.1%を割り込み、3日には一時0.045%と過去最低を更新した。利回りを期間の短い順に並べた曲線上では、9年ゾーンまでの国債利回りがマイナス圏で推移する場面があった。

  国内機関投資家は、日銀が毎月8兆-12兆円程度実施している買い入れオペに対して、国債を売却することに慎重になっている。1日のオペでは、残存期間1年以下のゾーンの応札倍率は1.64倍と、14年12月以来の低水準にとどまった。

「売るに売れない、買うに買えない」

  金融アナリストの久保田博幸氏は、「持っている国債を銀行は手放せなくなった。ここまで金利が低下して、しかもマイナスになっているということは時価評価は上がっているから良いが、だからといって利食い売りをすれば、今度は当座預金に積み上げないといけない。マイナス0.1%がかかってしまうので、そんなことは今度はできなくなる」と指摘し、「ますます流動性が枯渇し、タイトになる」と述べた。

  日銀はマイナス金利導入に際し、金融機関の収益圧迫が仲介機能の低下を招かないよう、当座預金を3つの階層に分けた。既存の超過準備には年0.1%の付利を継続し、所要準備や貸出支援オペなどによる残高にはゼロ%、これらを上回る分には0.1%のマイナス金利を課す。

  関係者によると、実際にマイナス金利の適用が始まる2月16日段階で、対象となる日銀当座預金の額は10兆-30兆円の見込み。すでに日銀と同様の階層構造方式を採用しているスイスはマイナス0.75%、スウェーデンはマイナス1.1%、デンマークはマイナス0.65%など、大きめのマイナス金利を適用している。

  JPモルガン証券の山下悠也債券ストラテジストは、「全体的に運用資産のリターンが下がった結果として収益を上げづらくなるのは間違いない。運用環境は一般的に厳しくなる」と述べた。

  久保田氏も、「8年ゾーンぐらいまでマイナスになった以上は、国内投資家は買えない。マイナスで運用できるところはない。売るに売れない、買うに買えない」と指摘。「生命保険会社も、多少利回りが付いているとはいえ、運用利回り・価格変動リスクから考えて、40年債を大量に買う訳にはいかないだろう。20年債、30年債利回りをさらにつぶし合うと自分の首を絞めかねない」と言い、利回り曲線がある程度傾斜化する必要があるとの見方を示した。

  マイナス金利の影響に対する市場の懸念は財務省が実施する国債入札にも反映されている。2日に実施された10年利付国債の入札では、最低落札価格が市場予想を13銭下回ったほか、応札倍率は3.14倍と前回の3.25倍から低下した。

  久保田氏は、「証券会社が財務省から買って日銀に流すという、単純な市場になる可能性がある。証券会社が、マイナスまで突っ込む時には入札から引く可能性もある。札割れもあるかもしれない」と指摘した。10年債入札での札割れは02年9月に起きた。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、10年債入札結果に関して、「ものすごく悪かった訳ではないが、期待したほど良くなかった」と指摘。「来週は30年債入札もあり、この水準の30年債を今の市場が吸収しきれるかどうか。昨年は1.5%程度の水準で生保が買う買わないと言っていただけに、1%前後という水準での需要があるのかどうかは不透明」と述べた。

  日銀によるサプライズ金融緩和の余波は週明け以降も続き、新発20年債利回りは一時0.74%まで低下し、過去最低を更新した。新発30年債利回りは0.985%まで低下し、13年4月以来の水準を付け、新発40年債利回りは1.11%と過去最低に並んだ。

  一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、「ドイツも7ー8年ゾーンまでマイナスだが、そこから先は結構傾斜化して、10年債利回りは0.3-0.4%程度を維持している」と指摘した上で、「日本の10年債利回りがゼロやマイナスまでは行かないと思っている。日本の場合もマイナス金利の10年債を買う人はいないと思う。0.03%ぐらいまでは一応みているがゼロやマイナスまではみていない」と述べた。足元のドイツ10年債利回りは0.3%台で推移している。

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