原油はいかにして世界の株式市場に影響を及ぼしているか-4つの仮説

  • 原油市場動向の信用市場や投資、経済への影響を検証
  • 原油価格の下落、世界経済の方向性を示唆か

原油が株式に通常とは異なる影響を及ぼしていることは事情を知らない部外者にも分かる。ただ、原油価格とは一見関連のない各業界の心理をエネルギー市場がどのようにして支配するようになったのかはあまり明確ではない。

  原油がこれほどの影響を及ぼしている理由を理解するのは、学問的な探究心だけでは困難だ。これまでの動きの大きさを考えると、その理由がますます問題になってくる。米国の株式市場では今年に入ってほぼ1兆6000億ドル(約194兆円)相当の時価総額が消え去った。原油がその一因となっているのなら、理由を知ることは重要だろう。

  原油と株式の関連性を裏付ける四つの仮説を以下に提示した。当然ながら、いずれも正式な理論ではないし、原油と株式が連動しているのは何か全く別の理由によるかもしれない。しかし、これらは株式投資家らが今週、最も頻繁に引用している仮説だ。

1. 経済
  仮説:原油トレーダーらが世界経済の方向性に関する情報を調査しており、価格下落は世界がリセッション(景気後退)に向かっていることを示している。米国株式市場はその影響を受けているか、あるいは自身で同じ結論を導き出している。

  ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの米インターミディアリー・ビジネスの最高投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏(ボストン在勤)は、「原油は世界の需要と成長を代弁しており、原油価格の動きは世界経済を反映しているという見方が実際にある。何が何を先導しているのかを判断するのは現時点では困難だろうが、双方が世界経済に関する懸念を示唆しているのは確かだ」と指摘する。

2. 信用市場
  仮説:原油価格は非常に多くの社債の価値の裏付けとなっているため、原油価格が昨年6月以降57%下落していることは、ヘッジファンドと銀行を破綻に追い込むデフォルト(債務不履行)のきっかけになると予想される。ブルームバーグ・ハイイールド指数によれば、エネルギー企業の社債は同指数の19%(2841億ドル相当)と、リスクの高い社債のうち大きな割合を占めている。

  ナショナル・アライアンス・キャピタル・マーケッツ(ニューヨーク)の国際債券責任者を務めるアンドルー・ブレナー氏は、「銀行にとって主要なリスクは通常のリテール関連ではなく、石油業界関連だ」と指摘。「最近はシェール企業など石油関連がハイイールド債に占める割合が増えている」と語る。

3. 投資
  仮説:エネルギー・商品関連企業は多くの人員を雇用し米経済に組み込まれており、これらの企業が操業を停止すれば、業界内外で企業利益が打撃を受けると予想される。

  フォート・ワシントン・インベストメント・アドバイザーズのチーフエコノミスト兼シニア投資アドバイザーとして、462億ドル相当の運用に携わるニック・サージェン氏は、「エネルギー業界は金融危機後の米経済で最も急速に成長した業界の一つだが、現在では反転している。事業は閉鎖され、人員は削減されている」と説明。「一部の市場関係者は、この状況がサブプライム危機のように拡大することを懸念し始めている。以前は取るに足らない問題だと考えていたが、これまで認識していなかった関連があることに気付いている」と話す。

4. 痛み分け
  仮説:世界の大口投資家らは保有していた原油のポジションに関連する打撃を埋め合わせるために、あらゆる資産の売却を余儀なくされている。商品取引で打撃を受けた投資家らが株式市場で売りに動いている可能性がある。

  オッペンハイマー・ファンズ(ニューヨーク)のクリシュナ・メマニ最高投資責任者(CIO)は、「ポートフォリオに複数の種類の資産を組み込んでいて、一つのセクターで問題があれば、全体のリスク特性を低下させるために他の資産を売却しようとするだろう。信用市場は下落し、原油市場も低迷しており、株式市場が最も高いならどこでリスクを減らそうとするだろうか。当然、株式だ」と述べた。

  大口の売り手の一つは中東と中南米の産油国である可能性がある。これらの国々は世界の資産の約5-10%を占める。数年間にわたってオイルマネーで資産を購入していたこれらの国々が売却に動き、政府系ファンド(SWF)や安定化基金、開発基金、中央銀行の外貨準備などの投資手段からオイルマネーを引き揚げている。

  ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)によると、世界経済へのオイルマネーの純流入額は昨年2000億ドルと、2012年の8000億ドルから減少した。

原題:Four Theories on How Oil Has Hypnotized the Global Stock Market(抜粋)

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