減損懸念つきまとう資源事業、市況厳冬下で次の一手に注目-総合商社

  • ゴールドマンは計8000億-1兆6000億円の潜在的な減損懸念と指摘
  • 資源分野で思い切った損失処理実施されれば株価持ち直すとの見方も

年明け以降、約13年ぶりの安値をつけた原油など資源価格の一段の下落が総合商社の業績見通しに暗雲を漂わせている。減損損失の計上により利益が下振れるとの懸念も株式市場では台頭。収益のけん引役が非資源事業に移る中、厳冬下の資源事業でどのような手を打つのかにも注目が集まる。

  「商社業界合計で約8000億ー1兆6000億円の減損が発生する可能性がある」。ゴールドマン・サックス証券は昨年12月、三菱商事三井物産住友商事丸紅の4社について主要な資源事業の潜在的な減損規模(税引き前)を試算したリポートを発表した。2日から始まる第3四半期決算において早ければ減損計上が発表される可能性が高いとみる。酒井田浩之アナリストは現在でも試算に変更はないとした上で、今期(2016年3月期)業績については「かなり大きな下方修正になる」と予測する。

  住友商事は1月、マダガスカルでのニッケル事業で約770億円の減損を計上すると発表。想定を上回る資源価格の下落を踏まえ、原油や石炭、鉄鉱石、銅といった各事業についても減損計上の可能性があると説明。今期業績を未定とした。

  三菱商は期初に3600億円と予想した今期純利益を第2四半期決算時に3000億円へと引き下げた。資源事業の純利益見通しを870億円から200億円へと引き下げたことが要因。資源価格の低迷は今後も続くとして想定される懸念材料を全て織り込んだという。エネルギー事業を中心に約200億円の減損計上も含めた。

株価持ち直す可能性

  野村証券の成田康浩シニアアナリストは「商品市況の下落を背景とした資源分野などでの減損リスクは懸念材料」と指摘。「損失額の算定は難しく、金額が大きくなる可能性には留意している」と話す。一方、「株式市場から減損が懸念される資源案件などで思い切った損失処理が実施された場合には、配当利回りの高さもあり株価が持ち直す可能性もある」と注目する。

  昨年12月の三菱商事の社長交代の発表会見。約6年に及ぶ在任期間中で最も大きな決断について問われた小林健社長は、ビジネス面においては11年に約4200億円を投じたチリで銅鉱山を操業するアングロ・アメリカン・スールの株式取得を挙げた。「一番大きな決断でもあり、また迅速性も要した」と振り返り、「この答えは20年ぐらいは出ない。そういうつもりで投資した」と語った。

  資源事業は短期的には収益が市況に左右されやすいが、数十年の長期にわたる。三菱商事が初めて液化・販売部門に参加し、1972年から生産を始めたブルネイの液化天然ガス(LNG)事業。投資を決めた際は金額の大きさから失敗すれば三菱商事が3つつぶれるとも言われた。今では日本のLNG安定調達先の一つとなっている。

  「資源のない日本の産業に対する原料の安定供給という果たすべき役割があり、それを果たしてきたことに誇りも持っている」。昨年11月の投資家向け説明会で小林社長は下方修正の要因となった資源事業についてこう説明した。資源のポートフォリオの見直しは聖域を設けずに行う方針としながらも「総合商社の看板は降ろさない」という。

逆境をチャンスに

  逆境を好機と捉える動きもある。三井物産は昨年11月、豪エネルギー資源大手のサントスから同国のガス田権益35%を約450億円で取得することで合意したと発表。既存権益保有者の先買権の放棄が前提条件となるが、豪州ではガスを固定価格で買い取ることが主流といい、市況に左右されず安定的な収益が見込める案件と期待する。

  かつて三井物産はこの権益の取得を提案したが、実現しなかった経緯がある。ところが、エネルギー価格が低迷し、同業者から株式公開買い付けによる買収提案も受ける事態となったサントス。負債削減のために保有権益の一部を手放す必要に迫られ、三井物産が再度取得を提案した。通常の環境下であれば売りに出ることのなかった資産だとみている。

  SMBC日興証券の森本晃シニアアナリストは「将来的な企業価値を上げるために今の市況下落の状況だからこそ競争力のある案件を目利きし、資源のアセットに逆張りの投資を行うことは有効だ」との見方を示す。

  今期、純利益で初の商社トップとなる見通しの伊藤忠商事は累計1000億円超の減損を計上した米シェール事業から昨年撤退。11年に約1300億円を投じたコロンビアの石炭事業も14年末までに持ち分法適用の対象から外した。非資源分野の好調などで計画を上回るペースで今期業績は進ちょくしているが、昨年11月の投資家説明会で岡藤正広社長は「将来の懸念やリスクについてはこの下期にできる限り前倒しで処理を行う」として業績予想を据え置いたと説明した。

  JPモルガン証券の森和久アナリストは「伊藤忠は資源分野への投資残高そのものが比較的小さめで、商社の中で唯一減損リスクが低い」と見る。コスト増などからメキシコ湾油ガス田事業で130億円の減損を今期すでに計上した丸紅は、第3四半期決算発表と同時に来期からの新中期経営計画を発表する予定。

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