日本銀行が1月29日に導入を決めたマイナス金利政策について、株式市場関係者の評価は分かれている。黒田東彦総裁の行動力や国内景気の下支え効果、為替の円安誘導が期待される一方、慎重派は日銀政策の限界、指数連動型上場投資信託(ETF)の購入と比べた需給面でのインパクトの乏しさなどを挙げる。指数寄与度が大きい銀行株に対するマイナスの影響も気掛かりだ。

  CLSAは今回の日銀緩和策について、黒田総裁は物価上昇率を達成するために手段を選ばないことを示し、ポジティブと判断。日本担当ストラテジストのニコラス・スミス氏は「風景が確実に変わった。心理的にインフレ状態に戻る一助になる。ゴルディロックス状態に入ることができ、これ以上良い策は取れなかったのではないか」と話す。

  ETF運用会社のウィズダムツリー・インベストメンツ日本法人の最高経営責任者(CEO)であるイェスパー・コール氏もブログで、黒田総裁の経済成長達成に向けた決断力とリーダーシップを示している、と言及。しんきんアセットマネジメント投信の鈴木和仁シニアストラテジストは、「イールドカーブ全体が一段と低下すれば、金利面から景気をサポートし、円安を促すことになる。それが資産効果や企業業績を通じて株価の支えとなる」とみる。

  日銀は29日の金融政策決定会合で、0.1%のマイナス金利による追加緩和に初めて踏み切ることを5対4の賛成多数で決定。金融機関が保有する日銀の当座預金に0.1%のマイナス金利を適用する。今後必要な場合、さらに金利を引き下げるとした。具体的には、当座預金を3段階の階層構造に分割、各階層に応じプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用し、2月16日からの準備預金積み期間から始める。

  同日の日本株は、新政策発表を受けTOPIXが一時3.1%高、日経平均株価も597円高まで急騰した後、一転1.6%安、274円安まで売り込まれるなど混乱した。終値はTOPIXが2.9%高の1432.07、日経平均は476円高の1万7518円と大幅反発。原油価格の長期下落、中国経済に対する不安が年始から世界の株式市場を直撃し、年初来パフォーマンスはそれぞれマイナス7.5%、マイナス8%となっている。

  一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は、「実体経済にどれだけプラスのインパクトがあり、企業や株価へのインパクトはプラスになるかというと、非常に不明瞭」と指摘。今回の日銀決定は「市場を無駄に混乱させている。結果的に日銀政策の限界性を象徴したことになる」と厳しい見方を示す。

  三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、さらなる緩和余地がある点に触れつつも、マイナス金利が株式市場に対しどれほどプラスになるかは未知数と分析。「単純なマイナス金利ではなく、階層構造。階層構造はどの定義になっているか、いま一つ分からない」とも言う。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストも、実体経済への効果波及には時間が必要とし、「国債利回りをかなり押し下げることが期待できるものの、債券から株式に資金がシフトするかどうかは不透明」としている。

  また業種別では、29日の取引で東証1部33業種中、不動産や証券など金融緩和恩恵セクターを中心に32業種が上昇した半面、銀行1業種のみが下げた。マイナス金利による収益環境の悪化が懸念されたためで、銀行はTOPIXの時価総額ウエートで3位の8.3%と存在感が大きく、株価の軟調が続くと相場全般にも悪影響が及びかねない。

  三菱モルガン証の藤戸氏は、「銀行の日銀当座預金に預けていた付利の部分は収益源だったが、それが今後は期待できなくなる。銀行にはマイナスに作用し、運用に頭を抱えることになる」と指摘した。

  市場参加者の間で期待と不透明感が交錯しているものの、日銀はサプライズを演出し、何をしてくるか分からないとの印象をマーケットに植え付けたことだけは確かだ。アリアンツ・グローバル・インベスターズ寺尾和之チーフ・インベストメント・オフィサーは、「黒田総裁は付利の引き下げはないと言っていたのに実施した。総裁発言を額面通り受け止められなくなった。さらにサプライズを考えざるをえなくなる」と言う。黒田総裁は1月21日の参院決算委員会で、マイナス金利はプラス、マイナスいろいろあり、現時点でマイナス金利を具体的に考えていることはないと答弁していた。

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