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「恐ろしく劇的な動き」、日銀マイナス金利導入が東京市場揺るがす

「付利金利の引き下げは検討していない」。先週18日の参院予算委員会で、日本銀行の黒田東彦総裁はこう述べていた。市場関係者は黒田総裁が2週間もたたないうちに、当座預金への付利をマイナスに引き下げたことに驚きを隠せない様子だ。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「日銀は副作用が多いということで否定的な見方をしていたので、その前言を撤回した。まだ影響を整理できていないが、10年債金利が下手をするとマイナスになることを懸念している。恐ろしく劇的な動きだと思う」と述べた。

揺れる東京金融市場

株式市場

  日本株市場では、日銀の決断に対し驚きと慎重な見方が交錯した。日経平均株価は一時597円高の1万7638円と13日以来の高値を付けた後、274円安まで急落する場面があった。1日の高安値幅は昨年12月18日(886円)以来の大きさを記録した。日経平均は結局、終値で前日比476円85銭(2.8%)高の1万7518円30銭、TOPIXは39.97ポイント(2.9%)高の1432.07とともに大幅反発して終了した。

  大和証券の三宅一弘チーフストラテジストは、「日銀サイドはこれまでマイナス金利を肯定的に言っていなかった。サプライズを伴う政策が限界と言われている中でよく踏み切った」と語った。

  一方、しんきんアセットマネジメント投信の鈴木和仁シニアストラテジストは、「マイナス金利導入は初めてのため、その効果を確認していくことも必要」と指摘。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストも、「国債利回りをかなり押し下げることが期待できるものの、債券から株式に資金がシフトするかどうかは不透明」と述べた。

外国為替市場

  外国為替市場では円が急落。一時は対ドルで昨年12月以来となる1ドル=121円台に突入した。日銀発表前の118円台半ばからは3円近く円が売られた後に119円台前半に戻し、再び120円台に向かうなど値動きの荒い展開が続いている。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、「もともと黒田総裁は付利はいじらないと言ってたし、マイナス金利はやらないという専門家が多かったのにもかかわらずやってきたということで、マーケットの裏をかく手法が3度さくれつという感じだ」と指摘。「これはバズーカと言っていい」と話す。

債券市場

  日本の国債市場では、この日の日銀発表を金利の低下要因として受け止め買い優勢となった。現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、一時0.09%まで低下。5年物の126回債利回りと2年物の361回債利回りも、ともに新発債として過去最低水準を付けた。

  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「黒田総裁が付利引き下げをきっぱり否定していたので、市場はマイナス金利を将来的な選択肢として否定してはいなかったが、このタイミングでの導入は完全に予想外で、サプライズ感が非常に強い。株高・円安効果も非常に強い」と話した。

金融業界

  当座預金マイナス金利は銀行業界に痛手になるとみられている。BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは、「マイナス金利を設定する期間は短く終わらないといけない」と指摘。「社債を発行しようにもスプレッドの設定が難しくなる。資金調達をする側は良いが。投資がだんだんできなくなる」と指摘する。

  三井住友海上火災保険の新社長(4月1日付)となる原典之取締役副社長執行役員は「保険引き受け利益と資産運用収益で利益が構成されており、安定的に得られる金利収入が落ち込む」と指摘し、資産運用の高度化が課題になると述べた。一方、あいおいニッセイ同和損害保険の新社長(同)となる金杉恭三取締役専務執行役員は「経済には良い影響期待ある。為替も円安、株価が上がることについては個人的に大変歓迎する」と話した。

   日銀の29日発表によると、金融機関が保有する日銀の当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。具体的には、当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。2月16日からの準備預金積み期間から始める。貸出支援基金はゼロ金利で実施する。

  この決定に対し、木内登英審議委員、佐藤健裕審議委員、石田浩二審議委員、白井さゆり審議委員の4人が反対票を投じた。ブルームバーグが22日-27日にエコノミスト42人を対象に行った調査では、追加緩和予想は6人(14%)にとどまっていた。

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