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日銀総裁:3次元のすべてで追加緩和が可能-マイナス金利導入で

更新日時
  • 国債買い入れなどの量的拡大が限界に達したということでは全くない
  • ダボスに行く前に事務方にどんなオプションがあるか検討を指示した

日本銀行の黒田東彦総裁は、金融政策で初のマイナス金利導入を決定した会合後の記者会見で「これまでの量と質にマイナス金利という金利面での緩和オプションを追加し、いわば3つの次元のすべてにおいて追加緩和が可能なスキームとなる」と述べた。

  その狙いについて黒田総裁は、イールドカーブ(金利曲線)の起点を下げ「短期金融市場に幅広くマイナス金利が浸透する。量の面で大規模な長期国債の買い入れを継続することと合わせ金利全般により強い下押し圧力を加えていく」と述べた。「今後とも経済・物価のリスク要因を点検し、物価目標の実現に必要な場合はちゅうちょなく量、質、金利の3つの次元で追加的な金融緩和措置を講じる」とも語った。

  日銀は29日の金融政策決定会合で、国際金融市場の混乱や原油安で物価目標の2%達成時期が遅れるリスクが高まったとして、0.1%のマイナス金利による追加緩和に初めて踏み切ることを賛成多数で決めた。金融機関が保有する日銀の当座預金に0.1%のマイナス金利を適用する。今後必要な場合にはさらに金利を引き下げるとしている。

限界では全くない

  日銀は13年4月に量的・質的緩和を導入し、14年10月にこれを拡大したが、今回はさらなる拡大は見送った。量の拡大は限界に近づいているのではないかとの指摘に対し、「国債買い入れなどの量的拡大が限界に達したということでは全くない」と指摘。今回のマイナス金利付き量的・質的緩和は「3つの次元でさらに金融緩和を進めることができるようにするという意味合いも大きい」と語った。

  今回、量や質の拡大ではなく、金利の押し下げを選択した理由については「量的・質的緩和は所期の効果を発揮している」とした上で、「現在の年間80兆円という国債買い入れペースを維持しつつ、イールドカーブの起点の金利をマイナスにすることによって、イールドカーブ全体を引き下げていくことが今の時点で最も効果的だと判断した」と述べた。

  為替相場との関係については「私どもの金融政策は、欧米の金融政策と同様、通貨をターゲットにしたものではない。あくまでイールドカーブ全体を押し下げて、実質金利を引き下げ、消費や投資に好影響を与えることを通じて、需給ギャップの改善、あるいは物価上昇予想の引き上げをもたらし、物価が徐々に2%の物価目標に向けて上昇していくことを狙ったものだ」と語った。

金融機関の収益

  マイナス金利が金融機関の収益に悪影響を与えるとの指摘については「金融機関に大きな影響が出るとは思っていない」と述べた。その上で、「いかなる金融緩和であれ、緩和自体が金融機関の収益に影響を与えることは避けられない。問題は、そういった金融緩和を通じて経済をできるだけ早く物価目標が達成できるような持続的成長経路に乗せることによって、金融機関の収益も改善していく」と語った。

  国会で21日にマイナス金利について聞かれた黒田総裁は、現時点でマイナス金利を具体的に考えていることない、と述べていた。ブルームバーグが22日-27日に行った調査によると、エコノミスト42人のうち、1月会合で追加緩和を予想したのは6人(14%)だった。

出国前に事務方に指示

  黒田総裁は直前まで否定していたマイナス金利を導入した背景について、「先週末にダボスに行ったが、実はその前に、帰国した後、仮に追加緩和を行うとしたらどんなオプションがあるか検討してくれと事務方に言ってきた」ことを明らかにした。

  さらに、「もちろん、事務方は欧州のいくつかの中央銀行がマイナス金利を取っていることは承知しているし、その状況は従来から詳しく分析していたが、具体的にオプションを示してきた。そういった具合案を基に今日、金融政策決定会合において、経済・金融等の情勢判断と政策に関する討議を行って決定した」と述べた。

2%後ずれは原油下落の影響

  日銀は経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、生鮮食品を除く消費者物価の見通しを下方修正するとともに、これまで「16年度後半ごろ」としていた2%物価目標の達成時期を「17年度前半ごろ」に後ずれさせた。達成時期の先送りはこの1年に限っても3回目。黒田総裁は「物価見通しの下振れと2%程度に達する時期の後ずれは、原油価格の想定を下振れさせたことによるものだ」と説明した。

  また、展望リポートについて佐藤健裕、木内登英両審議委員から「消費者物価が見通し期間中には2%に達しないことを前提とする記述の案が提出され、否決された」としている。

  日銀は昨年12月18日の前回会合で長期国債買い入れの平均残存期間の拡大をはじめとする異次元金融緩和の補完策導入を決定していた。今回のマイナス金利導入はこの枠組みとは別で、国債買い入れなどは維持した上で当座預金にマイナス金利を適用する。

  今回の措置が消費者のマインドにどのような影響を及ぼすか聞かれた黒田総裁は「重要なポイントは、日銀が2%の物価安定目標を早期に実現することに強くコミットし、そのために必要な措置は何でもやるということであり、それが人々のインフレ期待の形成にしっかりした影響を及ぼすということは、日銀の政策の理解にもっとも重要な点だと思う」と語った。

(第1段落以降に黒田総裁の発言を追加して更新します.)
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