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甘利再生相が辞任、金銭授受疑惑-後任に石原氏、政権に打撃

更新日時
  • 週刊文春が2週連続で報道、千葉県内の業者から現金や接待
  • 調査結果を公表、閣僚の責務・政治家の矜恃に照らし決断と説明

甘利明経済再生相が28日、週刊文春が報じた金銭授受疑惑をめぐり辞意を表明した。同氏は2012年12月の第2次安倍晋三政権発足以降、アベノミクスの立案や環太平洋連携協定(TPP)交渉などを担当してきた。重要閣僚の辞任で政権への打撃は避けられない。安倍首相は後任に自民党の石原伸晃元幹事長を起用する。

  甘利氏は、自らが現金入り封筒を直接受け取ったことは否定した一方で、秘書の行為について「監督下にある事務所が招いた国民の政治不信を秘書のせいと責任転嫁することはできない」と言明。デフレ脱却のため2016年度予算案や関連法案の早期成立の阻害要因は取り除いていかなければらないと述べ、「秘書の監督責任、閣僚としての責務、および政治家としての矜持(きょうじ)にかんがみ、本日ここに閣僚の職を辞することを決断した」と述べた。

  安倍首相は同日夜、官邸で記者団に対し、甘利氏の任命責任は自分にあると述べた上で、「国民に深くおわびする」と述べた。石原氏は要職を歴任し、政策通で突破力もあると評し、TPP交渉は「事実上、調印を残すのみで問題ない」との見解を示した。石原氏は官邸で記者団に、地方や中小企業に広がってきたアベノミクスの流れを「確固たるものにしていくマクロ経済政策をしっかりやらせていただきたい」と首相に伝えたことを明らかにした。

  野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは、甘利氏の辞任について「きょうこの時点でというのは思っていなかった」と受け止め、甘利氏が主導してきたアベノミクスの成長戦略には「存在感があった」と指摘。どちらかと言えばマイナスの影響が出るだろうみている。SMBC日興証券(株式調査部)の牧野潤一チーフエコノミストは、石原氏はTPPや経済政策の見識や交渉力が未知数で、「政策の継続性やアベノミクスの方向性という点において不透明だ」と語った。

野党

  安倍首相は27日午前の参院本会議で、甘利氏は自ら説明責任を果たした上で、「経済再生やTPPをはじめとする重要な職務に引き続きまい進してもらいたい」と述べ、民主、共産両党など野党各党が衆参両院の代表質問で追及姿勢を見せていた。

  21日発売の週刊文春は千葉県内の建設会社の総務担当者の話として、甘利氏に大臣室と神奈川県内の事務所で50万円ずつ手渡しし、秘書への資金提供や接待の総額が証拠が残るものだけで1200万円に上ったとする記事を掲載。28日発売号でも甘利氏と秘書の疑惑を報じた。同誌は21日発売号で、こうした資金提供が政治資金規正法やあっせん利得処罰法に違反する疑いがある、との弁護士の指摘を紹介した。

  甘利氏によると、報道内容の調査は東京地検特捜部の経験のある弁護士が当たっている。これまでの調査結果として甘利氏は、自らが大臣室や事務所で各50万円の現金の入った封筒を内ポケットに入れたことは否定。秘書に政治資金としての処理を指示した、と説明した。一方で秘書が、受け取った300万円を自分で使ったことや接待を受けたことを認めた。

暗澹たる思い

  甘利氏は会見で、舌がんの病床、経済財政諮問会議、TPP交渉の場でも「この国の未来に思いをはせなかったり、国政に心を砕かなかったりした瞬間は一瞬たりともない」と述べた一方で、「政治活動の基盤である事務所、および秘書の問題で国民の皆さまに大変恥ずかしい事態を招いた事実が判明した」と説明。「ほとばしる情熱と政治活動の足元のゆらぎの実態との落差に気がついたときに天を仰ぎ見る暗澹(あんたん)たる思いだ」と述べた。

  政治評論家の有馬晴海氏は「このまま続けていると政権への打撃が大きいと判断して早めに辞めたのだろう」と指摘。「安倍内閣が大変なことになるので1週間で切り離すことにしたのだろう」とも述べた。伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は、安倍政権のダメージは「結構大きいと思う」と指摘した上で、「ネガティブな印象が一瞬待っているにしても、対抗勢力がない」と述べ、ほとぼりが冷めればと事態が沈静化するのではないかともみている。

  東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、石原氏について「お金の面ではクリーンなイメージ」で、甘利氏に比べると「腕力に欠ける印象」だと述べた上で、周囲のアドバイスも聞きながら「積極的に改革を進めていってほしい」と述べた。

(後任人事や安倍首相、市場関係者のコメントを追加します.)
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