10%への消費税率の引き上げは予定通り2017年4月に実施されるのか。エコノミストや与党内から再延期を予想する声が聞こえ始めており、安倍晋三首相が衆院を解散して夏の参院選との同日選挙に打って出るとの見方も出ている。

  竹中平蔵慶応大学教授は25日、ブルームバーグのインタビューで「消費税の延期はもちろんすべき」だと発言。消費増税を決めた「2012年の民主党政権の時の政策そのものが間違っている。当時の野党だった自民党政権がそれに賛成してしまった」と話し、財政再建に関しては「当面の目標を増税に置くのではなく、歳出の抑制などに置くべきだ」との考えを示した。

  ある自民党議員は、経済情勢が悪化すれば増税はできないとの見通しを示す。別の議員も、10%への増税と同時に導入する予定の軽減税率の準備が間に合わない場合は、消費増税だけ先行させることはできないと話した。

  消費税を8%に増税した14年4月以降、消費は落ち込み、14年11月に発表された7-9月期の実質国内総生産(GDP)の1次速報は前期比年率で1.6%減を記録。安倍首相は記者会見で当初予定していた15年10月からの消費税率10%への増税を予定通り実施した場合には「個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなると判断した」として、1年半延期を宣言。国民の信を問うとして総選挙に踏み切り、大勝した。

  USB証券の青木大樹シニアエコノミストは「14年の消費増税の後に消費が思った以上に落ち込んだというのはトラウマとして安倍総理の頭の中にある」と分析。17年4月の増税に関しては、「今のところは再延期の可能性は2、3割くらい」とした上で、足下の経済状況が続けば、その可能性は高まっていくとの見通しを示した。

中国経済

  日経平均株価が2万円台を割り込んだ15年8月21日、甘利明経済再生担当相は会見で「中国発の世界同時株安」との認識を示した。その後株価はいったん持ち直したものの、年初から再び中国経済の減速や国際原油市況の先行きに対する懸念が広がり、日経平均は1月20、21両日に連日の昨年来安値を更新。27日の終値は1万7163円92銭だった。
  
  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、中国経済の減速などを背景とした増税再延期の可能性を指摘する。中国が金融緩和をし、米国が利上げをしているなかで、「人民元の切り下げ観測はくすぶる」と分析。「アベノミクスはうまくいっていたが、海外でそういう問題が起こって、そのリスクを遮断するために消費税は先送りしますというのは、十分あり得る話」と語った。

  消費増税をめぐる判断は日銀の情勢判断や金融政策にも影響を与える可能性がある。増税によって景気が低迷して2%の物価目標到達がさらに遅れることになれば、現在の異次元緩和の出口がますます遠のく可能性がある。日銀は28、29の両日、金融政策決定会合を開くが、関係者によると、2%達成時期は現在の「16年度後半」からさらに先送りを検討する見通しだ。

  安倍首相は26日の衆院本会議で、「来年4月の消費税率10%への引き上げはリーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」と宣言。27日の参院本会議でも同じ発言を繰り返している。

  みずほ証券の上野泰也チーフエコノミストは、中国経済の減速とリーマン・ショックには「相当段差がある」と指摘。前回延期を決めた時に景気条項を外したことや、政府、与党が昨年12月に軽減税率の導入を決めたことなどから、「再延期なし」を予想する。

  柴山昌彦首相補佐官は、「財政的に厳しい状況にあり、社会保障も財源が必要と言われているなかで、国債に対する信認の観点も含めて、増税する必要はある」と指摘。一方で、消費税による景気への影響については、「特に日本のようにまだ消費税率が1桁台の国では、数パーセントでも上げることによるインパクトは大きい」との懸念も示した。

ダブル選挙

  竹中氏は、消費増税の先送りを衆参同日選挙の大義名分にできると主張。河野氏も12日のリポートで、再延期を理由に安倍首相が同日選に踏み切る可能性は高まっているとの持論を展開し、野党協力が進む前に解散してその芽を摘む「小刻み解散」は安倍政権の特徴だと述べた。

  同日選が取り沙汰される中、安倍首相は衆院解散の可能性を否定し続けている。26日の衆院本会議でも「全く考えていない」と語った。共同通信が15年12月に実施した世論調査では、10%への消費増税には50%が反対し、46.5%が賛成した。