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2%先送り「日銀の敗北宣言」-緩和、据置どちらも失望と早川元理事

  • 残された選択は2つ-何もしないリスクか、やって失望されるリスク
  • 賃上げ率鈍化は2%実現には致命的、限界論一蹴は黒田総裁の強がり

元日本銀行理事の早川英男氏は、日銀が物価2%達成時期をさらに先送りすれば黒田東彦総裁の任期中に量的・質的金融緩和の出口はないという現実を認めることになり、日銀にとって「事実上それは敗北宣言だ」と述べた。今週末の金融政策決定会合で日銀が追加緩和をしてもしなくても、金融市場は失望する可能性があるとも語った。

  富士通総研エグゼクティブ・フェローの早川氏は26日、ブルームバーグのインタビューで、今回先送りすれば17年度になるが、「17年4月の消費増税で一時的に景気が悪くなるのは間違いないため、17年度前半の出口はあり得ない。2%になったらすぐ出口というわけには行かないので、黒田総裁は結局、超大型の金融緩和をぶち上げただけで、何の始末もできなかった、という話になる」と語る。

  日銀は28、29両日の金融政策決定会合で、生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)の見通しを示す。物価目標2%の達成時期は昨年4月に「15年度を中心とする期間」から「16年度前半」に、昨年10月さらに「16年度後半」に先送りした。原油価格のさらなる下落に加え、期待外れに終わりそうな春闘、年初からの円高・株安もあって、再三の先送りは必至の情勢で、市場では追加緩和観測が高まっている。

  早川氏は「日銀に残された選択肢は2つしかない。何もしないことにより、本気で2%を目指しているのか疑われるリスク。または、昨年12月の補完措置で生じたわずかな国債買い増し余地を使って追加緩和を行い、ますます弾切れと受け止められ、補完措置の際と同様、失望を買うリスク。そのどちらかだ。市場は『何もしなければ売り、何かしても売り』という反応で待ち構えているのではないか」という。

ベア縮小は致命的

  スイス・ダボスで日本時間22日夜にブルームバーグのインタビューに応じた黒田総裁は、国際金融市場の混乱について「もし必要になれば、特に、物価の基調が大きな影響を受けるようなら、量的・質的緩和をさらに拡大する余地がある」と述べた。

  早川氏は「黒田総裁が言っていることを真面目に信じれば、ここは追加緩和をやるしかない。『16年度後半ごろ』という2%達成時期を維持できなければ、わずか3カ月での先送りとなる。いわゆるインフレ期待を見ても、どれを見ても下がっている。年初は賃金交渉にとって非常に重要な時期だが、円高・株安で企業経営者は慎重になっており、ますます賃金が上がらないことが決定的になっている」という。

  日銀は2%達成が後ずれしている背景として、原油価格下落を挙げている。早川氏は「原油は無限に下がるわけではなく、どこかで底を打ち上昇に向かうだろう。問題は原油ではなく賃金だ。この春起ころうとしていることは、2年間上がり続けたベア(賃上げ率)が縮小するということであり、これはかなり致命的だ。物価目標の2%など、はるか彼方で見えてこない」という。

2つとも悲しい選択で、どちらも怖い

  黒田総裁はインタビューで「日銀は国債の発行総額の3分の1を保有しているが、まだ3分の2が市場に残っている」と述べ、国債買い入れ限界説を一蹴した。早川氏は「それが強がりでなければ、なぜ補完措置が必要なのか。住宅ローン債権の担保化など日銀、民間とも大変な労力が必要だし、実現しても当面使われないだろう。いくらでも買えると言うのなら、なぜ昨年10月にやらなかったのか」と語る。

  黒田総裁は補完措置について「必要と判断した場合に、迅速に調整ができるようにするための措置」と説明している。早川氏は「問題は、それによって作られた国債の買い増し余地がどれくらいあるかだ。国債の買い増しペースを現在の80兆円から90兆円にするだけでは、市場はいよいよ弾薬切れと受け止めるだろう。かと言って一気に100兆円まで増やせば、今度は終わりが早くやって来る心配が強まる」と語る。

  さらに、「今の市場の混乱は単にリスク回避かもしれないが、この先本当に対応が必要になる時が来るかもしれない。米国の3月利上げが無理だと皆が思えば、ドル安がもっと長期化する可能性もある。中国政府が人民元をうまく管理できなくなる可能性もある。残り少ないカードを今切り、しかもそれがしょぼかったりすると、目も当てられない結果に終わる。2つとも悲しい選択で、どちらも怖い」という。

  早川氏は「ここまで来た以上、日銀は長期戦を覚悟して、量的・質的緩和を長期持続可能な枠組みに変えていくしかない。金融政策だけで賃金を上げることはできないので、政府の圧力を利用して賃金が上がる方向に世論をもっていかなければならない」と訴える。

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