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日銀の追加緩和は為替次第、円高放置なら不可逆的ダメージ-野村証

更新日時
  • ドル・円相場が118円台なら3割程度、117円台なら五分五分
  • カンフル剤を打つことのメリットは大きい

日本銀行の金融政策決定会合がきょうから始まる。野村証券はドル・円相場の水準が追加緩和の判断に重要な影響を与え、円高進行を放置すれば、日本の投資フローや企業活動に「不可逆的なダメージ」になると指摘する。

  「ドル・円相場が118円台なら3割程度、117円台なら五分五分」。野村証の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは、1ドル=115円を極めて重要な水準とし、日銀はそこを上回って円高が進むような事態は避けるべきだと26日のインタビューで語った。仮にドル・円が116円台なら、追加緩和の可能性は7割程度に高まると言う。

  ドル・円は20日に一時116円台を割り込み、1年ぶりの円高水準となる115円98銭を付けた。現在は118円台後半で推移している。

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  市場関係者の間では、経常黒字の拡大や世界景気の先行き不透明感を背景に円高予想が増えつつあるが、ブルームバーグの2014年のドル・円予想ランキングで首位だった野村は円安予想を維持。想定外の原油安や人民元安などが重なったため、16年前半の予想は微調整したものの、同年末は130円の見通しを変えておらず、ブルームバーグの為替予測調査でも円弱気派の上位にいる。円は過去半年間に対ドルで4%上昇。31通貨中で唯一上昇している通貨だ。

  池田氏は、日銀は金融政策を判断する上で、インフレや賃上げ動向、株価動向などさまざまな指標を見ているはずだとし、「この段階で漸進的に一番影響が大きいのはドル・円だ」と指摘。株価と違い、円高には物価を押し下げる直接的な効果があり、企業が16年度の為替想定レートを設定するこの時期に、「日銀は株価以上に円相場を重視していると思う」と語った。

為替想定レート

  これから賃上げ交渉が本格化し、企業が新年度計画を立てる段階で「カンフル剤を打つことのメリットは大きくなっている」。ただ、池田氏は、ドル・円が118円台であれば、金融政策を据え置いて失望からドルが売られても115円を割り込むリスクは小さいとし、「日銀としてはなるべく政策オプションを温存しておきたいという考えも出てくる。状況は非常に流動的」ともみている。

  日銀の企業短期経済観測調査(短観、12月調査)によると、大企業・製造業が事業計画の前提とするドル・円の想定レートは15年度下期で118円、通期で119円40銭だった。15年のドル・円相場は、米国の利上げ観測を背景にドル買い・円売りが一段と強まり、6月に13年ぶり円安値となる125円86銭を付けた。昨年4月からの月間平均値は121円36銭となっており、日本企業が想定した以上の円安進行で、輸出の採算性向上につながった可能性が高い。

  ただ、今年に入ってからの金融市場では、原油安や中国景気懸念を背景にしたリスク回避の動きが一段と広がった結果、為替相場での円買い圧力が目立っている。円相場は昨年末との比較で、主要通貨に対して上昇し、ドルに対しては1.3%高く推移している。

  シカゴマーカンタイル取引所(CME)国際通貨市場(IMM)の先物取引非商業部門のドルに対する円の持ち高は今月に入って、12年10月以来の買い越しに転じている。買い越し幅は直近で4万枚近くまで拡大した。池田氏は、日銀が昨年12月に「緩和補完措置」を発表したことが、海外投資家に「日銀はバズーカ緩和をやりたくない」と解釈され、「投機筋が円ロング(買い持ち)を全くちゅうちょしなくなってしまった」と説明する。

ゲームチェンジャー

  ブルームバーグが22日-27日に行った日銀金融政策の予想調査によると、エコノミスト42人のうち、1月会合で追加緩和を予想したのは6人と、少数派にとどまった。3月会合での追加緩和は7人、4月会合は最多の14人、7月は2人、追加緩和なしは13人となっている。昨年12月9-16日の前回調査では1月緩和予想は7人だった。

  池田氏は、日銀が円安の再スタートをある程度促したいとしている場合、追加緩和には国債購入ペースの引き上げが含まれる可能性が高く、「市場に印象付けるためには、100兆円まで引き上げるのは有力な選択肢」と指摘。現在3兆円の指数連動型上場投資信託(ETF)の購入ペースの倍増、地方債などの購入検討も課題になるとみている。

  その上で、市場心理が悪い状況で追加緩和を実施する場合には、打ち止め感が出るのを防ぐため「何らかのブレークスルー」が必要で、「総裁がこれまで一貫して否定してきた付利下げを将来の選択肢として認めることが重要だ」と語る。付利引き下げの可能性に言及すれば、日銀は将来的に量的・質的緩和の枠組みを脱却し、マイナス金利政策に移行するとの観測につながり、「すごいゲーム・チェンジャーになる」と言う。

  池田氏は、自身の年末130円予想にとっての最大のリスクは「115円割れを放置するというまさか」の事態だと言う。そうなれば、「みんなが円安シナリオを次々と放棄し始め、いろいろな投資フローにブレーキがかかってしまう」結果、「場合によっては125円すら届かないという可能性も出てくる」と指摘。「そうすると日銀は2%の物価目標からますます遠のく。そういう事態は日銀は避けるべきだと私は思う」と話した。

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