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シンガポール取引所がLNG先物上場-市場関係者の受け止めさまざま

シンガポール取引所(SGX)は25日に液化天然ガス(LNG)の先物とスワップの市場を創設した。同取引所が調査して発行する「シンガポールLNGインデックスグループ (SLInG)」と呼ばれる同国で受け渡しされるスポット市場の価格とともに、LNG価格を決める算定式の指標として域内の需要家に利用されることを目指す。

  同取引所のウェブサイト上の資料によると、LNG先物はスワップと同様に受け渡しのない差金決済型。同社が週1回発表するSLInGの月間平均値がスワップと先物の最終決済価格となる。取引単位は先物が1枚1000MMBtu(百万英国熱量単位)、スワップが1万MMBtuで両取引ともに12限月制。

  米国ではニューヨーク商業取引所(NYMEX)のヘンリーハブ・天然ガス先物価格が、現物のLNG取引の価格算定式にも組み込まれている。英コンサルティング会社ウッドマッケンジーの北東アジア電力・ガス市場担当副社長のギャヴィン・トンプソン氏はブルームバーグの取材に対し、SGXの先物やスワップが市場参加者に受け入れられてヘンリーハブ先物のように値決めに利用されるためには、まずLNGの現物取引を活性化させる必要があると指摘する。

  同氏は「シンガポールの目指すガスの価格指標の育成は、売り手や買い手が自由にガスを売り買いできるような現物取引のハブになることを意味している」との見解を示した。「そしてその価格はまず短期契約の値決めに利用され、さらに長期契約の値決めにというように、まさにヘンリーハブ価格が長期契約に利用されているような形へと発展することになる」と話した。

いくつかの先行事例

  アジアでは石油価格情報会社プラッツが発行する日本、韓国に輸入されるLNGの価格や、東京商品取引所などが設立したジャパンOTCエクスチェンジ(JOE)が提供するLNGの「ノンデリバラブル・フォワード(NDF)」と呼ばれるデリバティブ取引市場など先行する事例がいくつかある。

  コンサルティング会社クラヴィス・エナジー・パートナーズの玉水順蔵代表は、市場参加者は価格形成の過程でどれだけ透明性が確保されているかを重視しており、SGXが取り組むシンガポールの価格がアジアで広く活用される価格指標として受け入れられるためには、「透明性をいかに担保するかがカギになる」と指摘。さらに流動性も重要な点で、新たな市場を発展させるためには透明性と十分な流動性の確保という2つのポイントを両立させる必要があるという。

  東京電力中部電力が設立した火力発電用燃料の共同調達会社JERAは、ブルームバーグの電子メールでの取材に対し、SLInGやJOEのデリバティブ取引などの動向を注視していると回答。同社はLNG取引事業の強化を目指していることから、SLInGを含むアジア市場のLNG価格に連動して値段が決まる長期契約の締結についても「前向きに検討していきたい」との意向を示した。

積極的な取引参加の意向

  シンガポール政府系パビリオンエナジーのウェブサイト上に掲載された資料によると、シア・ムーン・ミンCEOは昨年10月の講演で、LNGの需要家やトレーダーがSLInGの活用を望むと話し、スワップ市場の開設後には同社が積極的に取引に参加する意向を示していた。

  東京ガスはブルームバーグの取材に対し、SGXが手がけるSLInGや先物、スワップ取引について現時点では詳細の確認ができておらず、「利用を検討できる状況にない」と電子メールで回答した。韓国ガス公社広報担当のソン・キュチョル氏は、同社は現在LNGの需給は緩んでいるためにスポットでの調達はしておらず、シンガポールのLNG価格指標を必要としていないとの見解を示した。さらに、SGXの先物やスワップの価格を長期契約の値決めに使う必要性は、現時点ではないとしている。

  インド石油会社の事業戦略部門ディレクター、デバシス・セン氏もSGXの先物やスワップの価格を利用する計画はないとし、ブレント原油価格に連動する従来の方法を今後も活用したい考えを明らかにした。

  SGXコモディティー部門のエイドリアン・ラント副部長は、原油とLNGの価格が2014年以降下落するなかで中期的な世界の原油生産の減少が予想されており、その一方でLNGには新規プロジェクトからの生産増が予想されていると話す。このような供給要因の不一致とエネルギー市場におけるLNGシェアの増加が、原油市況に連動させてLNG価格を決めるというやり方の問題点を「今まで以上に明確に浮き彫りにするだろう」と指摘した。

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