日本銀行の追加金融緩和の効果は期待しにくい--。元財務官で国際通貨基金(IMF)副専務理事を務めた篠原尚之東京大学教授は、原油価格下落や中国景気減速という外的要因に影響を受けている日本経済を支えるには財政出動しかない、との認識をブルームバーグのインタビューで21日示した。

  日銀追加緩和について篠原氏は「そんなに効果がないという感じがする」との見解を示し、「株や為替に影響はあっても第1、第2バズーカのようなサプライズアタックは無理だ」と述べた。その背景として日本経済は外的要因に左右されている上、「政策協調も現時点では難しい」と説明した。

  さらに長期金利は低水準で「市場が副作用を気にし始めている中で有効性は以前に比べて減り、中期的な副作用は非常に大きい」ことから、日銀が「躊躇(ちゅうちょ)するのに十分な材料がある」と指摘。最後のバズーカになるかもしれないという追い詰められた状況での判断になるとの見方を示した。

  金融政策の代わりの景気対策については「短期的には財政しかない。財政は自然増がかなりあり、経常収支の黒字が続くのであれば、出て行く余地はある」と述べた。中長期的な財政の持続可能性へ規制緩和加速が不可欠とも話した。

  伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は、金融市場の乱高下は中国経財の減速懸念や原油安など外的要因で起こっているとして、「追加緩和でどこまで効果があるかは疑問だ。かつての1発目、2発目ほどのインパクトはない」としながらも、「追加緩和をやらないという選択肢はない」と語った。

  日経平均株価は21日、終値で1万6017円と日銀が追加緩和を決定した2014年10月31日の終値(1万6413円)を下回った。株価としては追加緩和の効果が吹き飛んだ形になる。為替相場は20日、一時1ドル=115円台まで円が上昇して約1年ぶりの円高水準を付けた。市場では追加緩和期待が高まっている。

  篠原氏は07年7月に財務官に就任。08年9月のリーマンショック後の世界経済の激動期に、主要7カ国(G7)との調整などに当たった。就任時に1万8000円台だった株価は08年10月末に一時7000円台を割り込んだほか、為替も1ドル=123円台から08年12月から09年1月にかけて一時87円台まで急騰した。

経済正念場

  為替相場について篠原氏は、米国経済を引っ張る消費がさらに強くなる印象がなく米金利の引き上げが相当ゆっくりになる、欧州もさらに緩和せざるを得ないとして「円は高い方向に行かざるを得ない」と予想した。新興国の混乱も続くとの見通しから相場はボラタイル(値動きの激しい)な動きが続くとみている。

  足元の経済情勢については「アベノミクス自体が金融政策1本で来た。円安・株高で経済のセンチメントが良くなったが、実体経済はそんなに良くなっていない。円安・株高が剥げ落ちてくると元の木阿弥になる。明らかに正念場だ」とみている。

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