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爆買いの劉さんが気もむ人民元安・円高、さらに進むと「ちょっと困る」

更新日時
  • 元の年末予想1ドル=6.9元、対円では10%下落も-JPモルガン
  • 昨年は訪日旅行者数トップの中国、消費額は前年比2.5倍の1.4兆円

昨年来日した際、高級音響機器メーカー、アキュフェーズのCDプレーヤーとアンプを総額200万円で購入した北京在住の劉さん(46)。3カ月ぶりとなる今月の旅行でも、数十万円のオーディオ機器を買う予定だが、以前より為替レートが気になると言う。

  2012年末以降のアベノミクスによる大幅な円安やビザ要件の緩和などを追い風に、日本を訪れる外国人旅行者数は急増し、昨年は2000万人の大台まであと一歩に迫った。ただ、国・地域別で初めてトップとなり、空前の「爆買い」でインバウンド消費をけん引してきた中国からの旅行者には、人民元安・円高の向かい風が吹き始めている。

  「去年とおととしは特別。去年、特に夏ぐらいが一番安かった」。来日は今回が10回目で留学経験もあるという劉さんは、東京・銀座の免税店ラオックス前でのインタビューでそう振り返り、今後さらに元安が進めば「ちょっと困る」と話した。

  元は今年に入り円に対して2.5%下落。昨年6月に付けた1元=20円台の高値からは約12%元安となっている。中国景気が減速する中、中国人民銀行(中央銀行)は同年8月に事実上の人民元切り下げを実施。年明け以降は元中心レートの引き下げをきっかけに世界的に金融市場が混乱に陥り、リスク回避の動きから円高傾向も強まっている。

中国からの訪日客数と人民元の対円相場

  劉さんは「もちろん買うときはレートを比べながら。高くなったらちょっと考える。本当に欲しかったら買うが、欲しいか考える場合は買わない」と流ちょうな日本語で話した。「例えば1万円が600元(1元=約16.7円)になると高くなる。今は565元で何とか大丈夫だが、600元になるとみんな考える」と言う。

  JPモルガン・チェースは、中国からの資金流出が続き、元は年末に向けて1ドル=6.9元まで下落すると予想している。ドル・円相場については1ドル=110円までの円高を予測。こうした予想に基づくと、元は対円でさらに10%下落し、1元=16円割れの水準まで元安が進むことになる。

  年に2、3度来日する上海在住の兪暁君さんの日本での買い物は子供服や粉ミルク、玩具など子供用品が中心で、1回につき約5万円。次によく買うのが化粧品で、「マツキヨで最高12万円分の買い物をしたことがある」と言う。「いつも元と円のレートを換算しながら買い物する」という兪さんは昨年末も来日したが、元安・円高の影響は「まだそこまで強く感じない」と語る。

中国人の消費が4割占める

  元は対円で12年末から昨年6月の高値まで5割近く上昇。日本銀行による大規模緩和を背景に大幅な円安が進んだ一方、米ドルに事実上ペッグされてきた元は、米国の利上げ観測を背景に進んだドル高に伴い上昇した。

  個人消費が盛り上がらず、景気の低迷が続く日本で、訪日外国人の存在感は高まっている。日本政府観光局(JNTO)によると、15年の訪日外国人数は1974万人と前年比47%増加し、過去最高を更新。中国からは2倍強増えて499万人に達した。観光庁によると、昨年の訪日外国人の旅行消費額は前年から7割増加し、初めて3兆円を突破。中国は2.5倍の1.4兆円と全体の4割を占め、1人当たりの旅行支出は28万3842円と全国籍・地域の平均17万6168円を大きく上回った。

  もっとも、昨年の中国からの訪日客数は12月が34万7100人で、過去最高だった8月の59万1510人をピークに頭打ちとなっている。4月から2倍超が続いていた前年比の伸び率も、9月以降は鈍化している。また、昨年10-12月期の旅行消費額は同年7-9月期を下回った。

元の先安観強まる

  ブルームバーグがまとめた為替予測調査によると、足元で1ドル=6.58元前後の元の対ドル相場の16年末予想(中央値)は6.7元程度で、昨年8月の切り下げ前は6.15元だった。15年の中国の経済成長率は6.9%と、1990年以来の低水準となった。

  JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、さらに10%の元安・円高が進めば、年間20兆円に上る中国からの輸入のコスト低下やインフレ圧力の減退、日本企業が中国に抱える推計5兆円の留保利益の目減りなど、「日本経済にはかなりいろいろな影響がある」と分析。インバウンド効果については、ビザ要件の緩和などの効果の方が大きく、中国からの訪日客数が著しく減ることはないだろうとしながらも、「日本で買う商品が2割割高になったら爆買いの勢いは弱くなるかもしれない」とみている。

  日本を訪れるのは初めてという北京在住のワンさん(27)の一番の目的は観光だが、買い物も9万円ほどする予定だ。この日はフェイスマッサージ器などの家電製品やタイガーのステンレスボトルを計3万円購入。「元・円レートは重要」と語る。

  CLSAが401人の中国人旅行者を対象に行った調査では、43%の人が元が10%下落した場合に海外旅行の回数を減らすと回答、35%が買い物を減らすと答えた。

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、「中国経済が好調だから爆買いが出ているというより、人民元が高いから爆買いが出ているという方が正しい」と指摘。元は人為的に高く、「経済が大して良くなくても日本で爆買いできる人がたくさん出てきているということで、その無理が今たたり始めているということ」と話す。

  上海の兪さんは、「さらに円高になればもちろんレートは気になるが、中国の若者や金持ちにはそこまで影響はないかな。中年や老年の旅行者は多分買い物を減らすかと思う」と語る。自身は「必須のものはレートに関係なく続けて買うつもり」で、今後も年2、3回は日本に来たいと言う。

  また、銀座で洋服などのベビー用品を買い物中のシュージン・ルーさん(25)は、生まれてくる子供を連れて来年も日本に来る予定だ。「日本の方がものがいい。私は為替レートは気にしない」と語った。

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