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黒田総裁ダボスで言質残さず-市場は緩和期待も効果疑問、無策は失望

  • インタビューで市場の混乱は「それほど大きな影響を与えていない」
  • 一方で、「金融市場の混乱が長引けば日本経済に影響を及ぼす」

スイス・ダボスで日本時間22日夜にブルームバーグのインタビューに応じた日本銀行の黒田東彦総裁は、今週末の金融政策決定会合でどのような決定を下すかについては言質を残さなかった。

  英語によるインタビューに答えた黒田総裁は、現在の国際金融市場の混乱について「現時点で、金融市場の状況が企業行動にそれほど大きな影響を与えているとは思わない」と述べた。その一方で、「マーケットは実体経済に影響を及ぼすこともあり得るので、注意深くウオッチしている」と述べた。

  日銀は28、29両日、金融政策決定会合を開く。原油価格の下落により、物価見通しの下方修正と2%達成時期の先送りは必至の情勢だ。円高の進行と株価の不安定な値動きも加わって、日銀が同会合で追加緩和に踏み切るとの見方が強まっている。無策を続ければ市場の失望を買う恐れもある一方で仮に追加緩和に踏み切ったとしても、その効果に懐疑的な見方も根強い。

  黒田総裁は現在の状況について「リーマン危機後のような状況ではない」と指摘。中国経済についても「ハードランディングするとは思わない」と述べた。原油価格の急激な下落が企業や家計の物価見通しに影響を与える懸念については、「現時点で期待インフレ率は比較的維持されており、大きく低下しているとは思わない」と語った。

  一方で、「原油価格の低迷が長引き、グローバルな金融市場の混乱が長引けば、期待インフレ率に影響を及ぼす可能性がある」と指摘。「現在のグローバル金融市場の混乱が長引けば日本経済に影響を及ぼすので、グローバル金融市場とアジアの実体経済を注視している」と語った。

  その上で、「もし必要になれば、特に、物価の基調が大きな影響を受けるようであれば、量的・質的金融緩和をさらに拡大する余地がある」と述べた。国債の買い入れ余地が少なくなってきているとの懸念についても、「現時点で日銀は国債の発行総額の3分の1を保有しているが、まだ3分の2が市場に残っている」と語った。

物価は再三の下方修正

  日銀は同会合で経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定し、2017年度までの生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)上昇率の新たな見通しを明らかにする。日銀は昨年4月に物価上昇率2%の達成時期を「2015年度を中心とする期間」から「16年度前半」に変更。昨年10月にはさらに「16年度後半」に先送りしたが、いずれも追加緩和は見送った。

  ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは23日付のリポートで、「16年度のコアCPI見通しが10月時点の1.4%から1.0%弱へと下方修正されるだろう。同時に『16年度後半ごろ』としている2%達成時期をさらに半年から最大1年程度先送る可能性が高い」と指摘。4月の追加緩和をメーンシナリオとしているが、金融環境次第で「追加緩和も相応にあり得る」とみる。

  SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは22日付のリポートで、「日銀は本音ではまだカードを温存したいのではないか」いう。その上で、「実際に追加緩和に踏み切るかどうかは週明けの相場次第だろう。株安・円高傾向が止まらなければ、追加緩和に追い込まれよう。逆に株高・円安傾向に反転していれば、カードを温存するだろう」という。

100兆円でも効果に疑問

  一方、東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは22日付のリポートで、緩和期待が高まっていた昨年10月の現状維持に続き、12月も補完措置という「追加緩和もどきの中途半端なアクションを起こし、いずれも市場の失望を買っている」と指摘。今回同じことを繰り返せば「日銀は緩和に積極的でない」のレッテルを張られる可能性が高いという。

  武藤氏はその上で、「『緩和手段は無限ある』と口で言っているだけで市場はもはや納得しない局面となっており、外堀を埋められた日銀は嫌でも動かざるをえない状況に追込まれている」とみる。

  株価は日銀が前回追加緩和に踏み切った一昨年10月の水準近辺まで下落しており、追加緩和が為替や株式市場、さらには実体経済にどの程度影響を与えることができるかかについては、不確定だ。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは22日のリポートで、「追加緩和が本当に有効な影響力を生むかどうは極めて不確実とし言いようがない。例えば、長期国債の保有残高を年間80兆円のペースで増加させていく方針を100兆円に増やしたとても、どのくらい円安・長期金利低下の影響力を及ぼせるかは未知数である」としている。

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