コンテンツにスキップする

国内回帰するジャパンマネー、海外コスト高で超長期債買いに弾み

更新日時
  • 国内投資家は先週、外債の売り越しに転じた-財務省統計
  • 10年利回りあまりにも低いので、20年に向かっている-メリル日本証

外国債券に向かっていた国内の銀行や生命保険会社などの投資資金が日本国債に回帰しつつある。日本銀行による異次元緩和下で国内金利は超低水準で推移しているものの、為替ヘッジコストの高止まりで、外債での運用も難しくなっていることが背景にある。

  日本証券業協会の統計によると、都市銀行や地方銀行、信用金庫と生損保は昨年12月に超長期国債を合計6880億円買い越した。1年前は3850億円の売り越しだった。財務省の統計では、国内勢による海外中長期債の売越額は先週、3752億円と昨年9月27日-10月3日の週以来の大きさとなった。

  世界経済の減速懸念を受け、国内外の株式相場は年初から急落が続出。外国為替相場や原油相場でも物価の押し下げ要因になる円高と原油安が進行し、物価上昇を目指す日銀の黒田東彦総裁に逆風が吹いている。米国では連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めが続くとの見方から、ドルの調達コストが高止まり。外債投資でこうした費用を差し引いた後の利回りは、日本の超長期債を下回る水準まで低下している。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、超長期債の買い越しは「国内回帰の一環だ」と指摘。「ベーシススワップの拡大に加え、海外金利が低下している。10年債利回りはあまりにも低いので、20年債に向かっている」と言う。日銀が同社の予想通り、4月に追加緩和した場合、「国債買い入れオペを超長期債を中心に増やすのは間違いない。ブルフラット化がさらに進む要因になる」とみている。

relates to 国内回帰するジャパンマネー、海外コスト高で超長期債買いに弾み

  国内勢が円を元手にした外債投資で、将来的に円高が進んでも為替差損を被らないようにする場合、円と外貨のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の格差に加え、クロス通貨ベーシススワップが映す通貨間の需給格差に基づく上乗せ金利などで回避措置(ヘッジ)を講じる必要がある。両者を合わせた1年物は足元で144ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度に上っている。

  ベーシススワップの1年物は52bp前後と、米FRBの量的緩和政策の終了や日銀の追加緩和前に当たる2014年半ばからの約1年半で3倍程度に拡大した。米雇用情勢の大幅な改善で約9年半ぶりの利上げ観測が高まった15年11月9日には73bpと約4年ぶりの水準に急拡大し、その後も高止まりが続いている。

  米10年物国債利回りは20日に1.94%と約3カ月半ぶりの水準まで低下。為替ヘッジコストを差し引くと0.5%強しか残らない計算だ。日本の10年債利回り0.2%台よりは高いが、20年債の0.9%台を大きく下回る。日本の機関投資家にとって、住友生命保険のように外債投資の対象を信用スプレッドが得られる事業債などに広げていかないと厳しい状況だ。

  財務省の統計では、国内勢による海外中長期債の買越額は昨年8月30日-9月5日の週に1兆1204億円と、日銀が追加緩和した直後に当たる14年11月上旬以来の高水準を記録。ただ、ベーシススワップの拡大を受け、昨年11月8日以降の10週間は買越額が合計1兆5633億円と、直前の同期間に積み上げた6兆7086億円の4分の1未満にとどまっている。

  SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは、米国など「海外金利の低下は国内勢からの需要減に働く」と指摘。円高は新規投資には追い風のはずだが、投資家は「益出しと入れ替え」に動いている可能性があると述べた。日本の超長期債の利回り低下は、需給逼迫(ひっぱく)とヘッジコストの上昇が要因だと説明した。

大幅な買い越し

  日本証券業協会の統計によると、銀行や生損保の超長期債買い越しはベーシススワップが急拡大した15年11月に1兆1120億円と15カ月ぶりの水準に膨らんだ。直近の買い越しは昨年の月平均5000億円台を大きく上回っている。

  一方、円高と国内金利の低下は、日本国債を相対的に安い外貨建てで換算・評価する場合の押し上げ要因となる。海外投資家が昨年に日本の利付国債を買い越した額は18.1兆円。だが、超長期債に限ると、11、12月の2カ月間で6083億円売り越し、1月から10月までの買越額の8割超を吐き出したことになる。

  「量的・質的金融緩和」で日銀が実施している国債の買い入れ額は今年、約120兆円と、割引短期国債を除く市中発行額とほぼ同じ規模に膨らむ見通し。先月は買い入れの平均残存期間を従来の7-10年程度から7-12年程度にするなどの補完措置も決まった。

  金融市場では、日銀の巨額購入による国債需給の逼迫に加え、中国経済の減速懸念や人民元切り下げ、原油安などを受けた投資家のリスク回避で、世界的に株安・金利低下と円高が進行している。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは14日に0.19%と過去最低を記録し、新発20年債は0.90%、30年債は1.17%、40年債は1.30%と超長期債の利回りも昨年1月以来の水準まで下げた。

  ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、国内勢の外債需要はなお「一定程度ある」が、ベーシススワップの高止まりは国内勢が「円債に回帰する要因になっている」と指摘。利払い収入や値上がり益を狙う際に「かつてなら10年債だったが、金利水準が低いので、20年債が選択肢になる」と話した。

20年債に恩恵

  財務省は21日に20年債の入札を実施した。発行条件の表面利率は1%と、03年6月の0.8%に次ぐ最低水準ながら、需要の強弱を示す応札倍率は3.49倍と過去1年間で3番目の高水準を記録した。小さければ好調とされるテール(最高・平均価格の差)は7銭と前月を下回った。

  日銀国債買い入れオペでの購入額は、残存期間25年超が追加緩和で4倍に増え、今月からはさらに29%増額。10年超25年以下はそれぞれ2.2倍、8%増だ。市中発行額との比較では、25年超は30年債と40年債の合計額の93%、10年超25年以下は20年債の108%に相当する規模だ。現状の買い入れ規模が4月以降も続けば、16年度は25年超との割合が90%、10年超25年以下が118%となる計算だ。

  メリルリンチ日本証の大崎氏は、新年度に入ると「市中発行額が残存5年以下を中心に減る。仮に追加緩和がなくても、日銀はオペで中期債から超長期ゾーンに重点を移していく可能性がある」と分析。発行額に対する購入額の比率が相対的に低い残存25年超を増やせば「イールドカーブ上で手前にある20年債にも恩恵が及ぶ」と読む。

  しかも、足元では追加緩和の観測が浮上。黒田総裁は21日に参院で、量的・質的緩和は所期の効果を発揮しているが、市場動向が経済・物価に与える影響は十分注視すると述べ、必要ならちゅうちょなく政策の調整を行う考えをあらためて示した。一方、柴山昌彦首相補佐官は同日のインタビューで、追加緩和の判断は時期尚早で「もう少し見極めが許される」と話した。

  ドイツ証の山下氏は追加緩和なしとみるが、「それでも日銀の買い入れ規模は大きい。補完措置で平均年限を長期化したが、短いゾーンの応札倍率が下がり、長い年限を増やす状況が年内に起きてもおかしくない」と指摘。超長期債の利回りは「今後半年から1年程度の期間で見れば、まだ下がる余地がある」と言う。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE