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金美齢氏:台湾人はアイデンティー確立-中国覇権主義への対応課題に

  • 独立運動に56年、総統選で蔡英文氏当選は「完全勝利」
  • 金氏は安倍首相再登板を支援、岸信介元首相との縁も

安倍晋三首相と交友関係を持ち、台湾独立に向けた活動に取り組んできた評論家の金美齢氏は、16日の総統選挙で民進党への政権交代が実現したことについて、「台湾人アイデンティティーが確立されたということ。有権者が自分は台湾人であるという選択をした」と論評、独立派にとっては「完全勝利」と語った。

  19日、ブルームバーグのインタビューで語った。金氏は、今後の中台関係について「中国からどういう介入があるか分からない。何もないということはあり得ないが、台湾人が台湾人でありたいという選択をしたのは確実だから、これを大切に経済問題や中国の覇権主義にどう対応していくかだ」と述べた。

  金氏は、日本統治下の台湾に生まれ、現在81歳。1959年に来日し早大で学んだ。台湾民主化運動に参加したことから92年まで台湾への帰郷がかなわなかった。2000年には、民進党の陳水扁政権下で台湾総統府国策顧問に就任。09年には日本国籍を取得した。自民党が野党時代の12年に安倍首相の再登板を求めた民間人有志の会で発起人の1人に名を連ねた。

  金氏は「台湾には自分の領土と経済と法律があって、完全に1つの独立した政治体」と述べ、「誰も台湾のことを中国なんて言わなくなった。中華民国という名前もどんどん消えていっている」と指摘。実態として「独立したのと同じ状態」にあるとの見方を示した。

  台湾総統選では、最大野党・民進党の蔡英文氏が56%の票を獲得し、8年ぶりに政権を奪還。中国との融和路線を掲げる与党・国民党の朱立倫氏は31%だった。民進党は同時に行われた立法院(国会に相当)選でも初の議席過半数を獲得。蔡氏は「1つの中国」の原則を認めておらず、中台関係については「現状維持」の立場を取る。

  金氏は、蔡氏について「理知的で冷静な人。民意を背景に1つ1つクリアしていくと信じている」と述べた。台湾が環太平洋連携協定(TPP)に参加し、中国に経済的に頼らないで済む道を取ることも大事だと語った。

岸信介

  金氏は安倍首相の祖父にあたる岸信介元首相と縁があった。岸氏は首相退任後、初代中華民国総統の蒋介石氏を何度も台湾に訪ね、中華民国の名前を捨て台湾として中国と同時に国連に加入するように働き掛けた、と金氏は言う。岸氏の台湾訪問時に通訳をしたこともあった。

  金氏は、岸氏の提案は台湾が国連に入る「唯一のチャンス」だったというが、蒋介石は「死ぬまで中華民国という名前を捨てなかった。それが結果的に台湾を国際社会の孤児にした」と語った。

飛行機の出会い

  安倍首相との出会いは飛行機の中だった。山口県の空港で離陸の遅れは安倍氏一行の遅刻と知った金氏は、客室乗務員に対し一行に遅れた理由を聞くよう求めた。到着時にもバスで送迎される一般客と違い一行には専用車が用意されていたため、「また特権ですか」と文句を付けたという。  

  その後、共通の知人の集まりで安倍氏に初めて正式に自己紹介した際に、「飛行機でお会いしましたね」と話しかけたところ、安倍氏はまったく嫌な顔をしなかったといい、「この人は威張らない人なんだなと思った」と振り返った。安倍首相のことは「威張らず、裏切らず、戦う勇気がある政治家」と評している。

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