ジェームズ・ナイト氏は27歳のコンピューターコーダーとしては、ちょっと普通ではあり得ない転職を最近果たした。高給の米グーグルを辞めてフリーランスになったのだ。これで眺望抜群のマンハッタンのオフィスで会社が注文してくれたランチを食べることも、最高の福利厚生を受けることもなくなった。

  同氏はこのような犠牲を払っても全然構わない。何しろ、フリーランスになってからの報酬がグーグル勤務時の約2倍になったからだ。さらに自由度も増した。3月には夫婦でスペインに旅行し、欧州をあちこちまわる予定だ。その合間にデートアプリや自己紹介のためのアプリなどを作成するコードを書けばいい。

  「会社が提供する休憩スペースや食べ物はあきらめても、自分の人生を自分でコントロールしてリスクを負いたい」とナイト氏は話した。 

James Knight in Brooklyn.
James Knight in Brooklyn.
Photographer: Chris Goodney/Bloomberg

テクノロジー業界では有能なコーダーは引く手あまたで、大手から新興企業まで時給1000ドル(11万7800円)という高給を支払うと関係者は話す。企業側は優秀な人材を依然として採用するものの、滞ったプロジェクトの打開や競争力を得る目的で、フリーのソフト開発者に目を向ける。誰に仕事を頼むかで製品の成否が決まる場合もある。

                            
  昨年の春、アーロン・ルービン氏はコンピュータークラウドをベースとする物流事業の新会社シップヒーローを立ち上げるため、人材あっせんのトップタルを通じてフリーランスのコーダーを雇い約4週間働いてもらった。「ニューヨークで才能ある人材を3日で探すのは不可能に近かった。自分が知っている才能あるエンジニアは誰もが就職済みだ」と話した。

  ナイト氏のようなフリーのソフト開発者は、いわゆる「ギグ・エコノミー」におけるエリート集団だ。米労働統計局(BLS)によれば、今や労働者の3人に1人がフリーランスで、その人数は5300万人に達している。

  コーダー需要は携帯端末アプリの爆発的増加をもたらした2007年の「iPhone(アイフォーン)」登場以降、雪だるま式に増えている。その後、ソフトは冷蔵庫から腕時計、アパレルなどあらゆる分野に浸透し、その基礎となるコードの記述者はますます必要になっている。BLSによれば、ソフト開発者の需要は14年から24年の間に17%増える見込みだが、これは人材需要の平均伸び率の倍以上。20年までに米国では、コンピューターサイエンス専攻の学生を100万人上回る情報技術(IT)関連の職があるだろうとBLSは見積もっている。

  実際、エンジニアを獲得する目的で会社全体を買い取る大企業も現れた。エンジニア採用を専門とする人事担当者を置く企業は多いが、適切な人材を見つけるには金も時間もかかりがち。このため、企業はフリーの優秀なコーダーが登録する人材ネットワークに注目する。

  例えばトップタルだ。5年前に抱えていたプログラマーは25人と、顧客とほぼ同数でしかなかったが、現在では何千人というコーダーを代表するネットワークとなり、ファイザーやJPモルガンを含めて顧客数は2000を超える。トップタルのライバルに当たる10xマネジメントは過去3年でコーダーと契約する企業の平均予算は倍になったと指摘した。

原題:Meet a Coder Who Quit Google to Make Twice as Much Freelancing(抜粋)