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日銀:春闘に失望強める、物価見通し再度の下方修正検討-関係者

更新日時
  • 賃金交渉が不発に終われば、2%の物価目標の早期実現に黄信号
  • 「賃金上昇やや鈍い」との懸念が日銀内で共有されつつある-関係者

2016年の春闘に対する失望感が日本銀行の中で強まっていることが複数の関係者への取材で明らかになった。黒田東彦総裁が強い関心を寄せている春闘が期待外れの結果に終わる公算が大きい中、来週にも追加緩和が行われる可能性が出てきている。

  「高水準の企業収益と労働需給のひっ迫からすると、賃金上昇はやや鈍い」と黒田総裁は国会で15日答弁した。関係者によると、こうした懸念は日銀内で共有されつつある。賃金交渉が不発に終われば2%物価目標の実現に不可欠な期待インフレ率の上昇にも黄信号がともる。日銀は29日に公表する新たな展望リポートで、物価見通しをさらに下方修正し、2%の達成時期を再度先延ばしすることを検討している。

  トヨタ自動車グループの全トヨタ労働組合連合会は16日、春闘でベースアップ最低要求額として15年の半額の月3000円以上を求めることを決定した。主要製造業の産業別労働組合で構成する全日本金属産業労働組合協議会の要求も昨年の半分だ。

日本の物価指標

  春闘は芳しくないとの見方とともに、日銀は次回1月28、29日の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの見方が広がりつつある。JPモルガン証券は追加緩和の予想時期を従来の11月から4月に前倒した上、「今後2週間の円レート次第では1月追加緩和の可能性も残されている」との見方を18日付のリポートで示した。

  JPモルガンの菅野雅明チーフエコノミストは「原油価格の低下だけでなく、円高進行」もあり、2016年度の生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)の見通しの下方修正は「不可避だ」と指摘。併せて「2%インフレ達成時期も『17年度後半ごろ』へ後ずれしよう」と予想した。

物価見通しの下方修正を検討

  日銀は昨年10月の展望リポートで、16年度のコアCPIの見通しを7月時点の1.9%から1.4%へ下方修正し、「16年度前半ごろ」としていた2%達成時期を「16年度後半ごろ」に先送りした。日銀は28、29両日開く金融政策決定会合で、新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表し、物価見通しの下方修正と目標達成時期の再度の先送りを議論する。

  日銀は18日、各地域における企業の雇用・賃金設定スタンスをまとめたリポートを公表した。「近年、都市部の企業を中心に定昇や賞与増額を実施する先が増加している」とする一方で、「地方の中小企業を中心に給与の増額に慎重な先も依然として相応にみられており、その中にはベースアップによる給与水準の引き上げは難しいとする先が少なくない」と指摘した。

  この日会見した秋山修・福岡支店長は、九州・沖縄地域の企業の賃金設定スタンスについて「先行き不透明感がある中で、固定費負担の拡大にはかなり慎重な見方が強い」と述べた。

市場の見方

  第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは15日付のリポートで「1人当たり賃金の上昇率が思いのほか鈍く、今年の春闘賃上げ率も昨年から鈍化が見込まれるなど、日銀が重要視してきた賃金インフレにも疑問が投げかけられている」と指摘。4月の追加緩和をメインシナリオとしているが「1月に追加緩和があっても不思議ではない」としている。

  ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは16日付のリポートで、4月の追加緩和が標準シナリオとしながらも「日銀は春闘に対して非常に強い期待を抱いており、企業のインフレ期待を高めるために、春闘の議論が本格化する直前の1月末会合で、何らかの行動を起こす可能性を完全に排除しない」としている。

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは15日付のリポートで「現時点では、今年の春闘の賃上げ率は昨年よりやや低くなるとみられる。日本労働組合総連合会(連合)によると定期昇給を除く平均賃上げ率は2014 年が0.38%、2015 年が0.69%だった。今年の春闘では0.6%程度が予想される」という。

据え置きか

  黒田総裁は第二地方銀行協会の賀詞交換会で14日、「できることは何でもやり、2%の物価上昇は必ず実現する」と述べた。年明けからやや騒がしい状況で、世界的に金融市場の動きが大きいという状況認識を表明した上で「必要とあらば、さらに思い切った措置を取る用意もある」と述べた。

  みずほ証券の丹治倫敦シニア債券ストラテジストは20日付のリポートで、月末の政策決定会合について「今の市場環境であれば金融政策は据え置かれる公算が大きい」と指摘する。ドル・円相場が昨年8月のボトムを割り込まずに円高対策での追加緩和には材料が弱く、今年の政治日程では7月参院選が一つの山場で政治的な理由で緩和するとすればやや早いことを主な理由に挙げている。

  ドル・円相場は日本時間19日午後8時ごろ1ドル=118円台前半まで円安方向に振れた後、20日8時時点では同117円台半ばの円高水準で推移している。

(第13段落以降にコメントと為替相場を追加して更新します.)
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