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海外投資家の日本国債購入勢い増す、ベーシススワップ拡大の可能性

更新日時
  • ドル・円ベーシススワップで割安に調達した円資金で高リターン
  • 1月3日-9日の週に日本の中長期債投資は2185億円買い越し

海外投資家が日本国債市場に再び戻りつつある。市場関係者からは、ドル・円のベーシススワップが拡大する可能性を指摘する声が出ている。

  財務省が15日に発表した対外・対内証券投資(週次ベース)によると、海外投資家は1月3日ー9日の週に日本の中長期債を2185億円買い越した。短期債は2兆5090億円の買い越しだ。

  米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年12月にほぼ10年ぶりの利上げを実施した後、海外投資家は日本国債の購入を控えていた。同年12月20日-26日の対外・対内証券投資統計によると、日本の中長期債は08年以来の高水準となる1兆7450億円の売り越し。短期債は1兆8181億円の売り越しだった。

世界投資家が買い越しに転じる

  中国の人民元引き下げや株安などを受けて広がった世界的な株価低迷は、日本国債の買い圧力を強める要因となっている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは14日、一時0.19%まで低下し、昨年1月20日に記録した過去最低水準(0.195%)を更新した。原油相場では、米原油指標のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が1バレル=30ドルを割り込み、12年ぶりの低水準を付けている。

  英金融サービス機構(FSA)元長官のターナー氏はブルームバーグとのインタビューで、世界最大のエネルギー消費国である中国での投資と建設の鈍化が「世界に途方もないデフレ圧力をもたらしており、それが今回の原油下落において起こっている事態の重要な部分を占めている」と説明した。

  野村証券の中島武信クオンツ・アナリストは、中国リスクに関して、「直接投資家のフローとしてはそれほど影響はないと思う。ただ、中国株安で人民元が下落して、ドルの外貨準備を売るという形で、影響が出るかもしれない」とみている。

ベーシススワップ

  「年明け以降も、海外勢によるベーシススワップを介した日本国債への買いという、大きな流れが変わったわけではない」と野村証の中島氏は指摘。「クリスマス前後は季節要因で海外勢の日本国債買いのフローが低下。12月に米利上げがあり、期末でポジションを落とす動きがあった。しかし海外勢からの日本国債への投資は続くと思う。原油価格下落を受けて、日銀の追加緩和期待が高まれば、ドル・円のベーシススワップが拡大する可能性がある」と言う。

  日本証券業協会によると、海外投資家は昨年、日本の中期債を11月まで10カ月連続で買い越し、14年5月以来の最長記録を作った。この間に通貨スワップ市場では、ドル・円のベーシススワップ2年物のマイナス幅が11年以来の水準まで拡大。11月は一時マイナス80.75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に達した。

  ドルを保有している海外投資家にとって、ドル・円のベーシススワップのマイナス幅が大きいほど、円資金を割安に調達できるため、日本国債の運用効率を高めることができる。半面、国内投資家のドル資金調達は割高となる。JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「ベーシススワップがある程度拡大しているので、日本国債への需要は相応に高い状況は続くだろう」とみている。
  
  日銀の資金循環統計によると、9月末時点の国債等(国庫短期証券、国債、財政投融資特別会計発行債券)残高は1040兆円と過去最高水準。このうち海外投資家の保有額は前年比16.5%増加の102兆円と初の100兆円の大台に乗せ、全体に占める比率は9.8%と過去最高を更新した。

  海外投資家の日本国債保有について、SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは、「国内機関投資家はあまりにも低金利で購入を抑制している。一方で、アセットスワップなどを使った海外投資家は、中短期の国債市場に資金を流入させている可能性はある」と説明した。

  日本銀行は2%の物価目標を達成するため、13年4月にマネタリーベースを積み増す量的・質的金融緩和を導入。14年10月末の追加緩和では増加額を従来の年60-70兆円から80兆円に拡大した。15年12月には国債の買い入れ対象となる銘柄の残存期間を長期化するなどの「補完措置」も決定した。

  海外投資家と日銀からの日本国債の買い圧力を背景に、中短期の比較的に短い金利はマイナス圏での推移が常態化している。新発2年物359回債利回りは昨年12月にマイナス0.06%と過去最低を記録。一方、米国債の2年物利回りは年末から年初にかけて1%台に乗せており、日本の国債利回りと対照的だ。

  BNPパリバ証券の徳勝礼子レラティブ・バリュー・ストラテジストは、海外投資家の国債保有比率が上昇しているのは、「ドルを持っている人と持っていない人でリターンが違うから」と述べ、「日本人がコストを払って、外国人への補助金みたいな形になっている」と語った。ドル保有者から見た投資商品としての日本国債は安いと言う。

国内投資家  

  市場では、国内投資家による日本国債保有比率の低下が、長期的に国債相場のボラティリティ(変動率)を高め、金利上昇リスクにつながるとの懸念もくすぶっている。将来、日銀が緩和縮小を行う際に波乱要因となる可能性があるとみているためだ。

  SMBC日興証の末沢氏は、18年まで現行の金融政策が続いた場合、国内投資家の日本国債保有比率は約6割からは約4割に低下するとの見通しを示し、「日銀が買い続けている間は大丈夫でも、日銀が買わない状況になると海外勢も買わない」と語り、金利急騰リスクが大きくなるとの見方を示した。

  野村証の中島氏も、「海外勢の保有比率上昇は、先行きのボラティリティを拡大させると思う。ボラティリティが上がりやすく、読みにくい相場になる」とみている。

  ブルームバーグ/EFFAS指数によると、償還まで1年超の日本国債のヒストリカルボラティリティ(相場変動率)は1.1%台と、今年に入って14年11月以来の水準に低下している。米国債は4%程度だ。

  JPモルガン証の山脇氏は、「外国人が売るタイミングで市場が崩れる可能性はある」とする一方で、国内投資家については、日本国債の金利が上がれば、外債投資から戻ってくる可能性が十分あると指摘。日本が経常黒字を維持し、対外純資産も積み上げ続けている状況から判断すると、「そう簡単には日本国債は崩れない」と語った。

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