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PIMCOは超長期国債に強気維持、BOAの運用指標は顕著な収益率

更新日時
  • 5年物と20年物の利回り格差は縮小基調
  • 今年後半になると追加緩和の可能性が「十分にある」と正直氏

運用資産1.47兆ドルを抱える米国の債券ファンド、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、日本の超長期国債に引き続き強気だ。日本銀行による巨額の国債購入に世界的な市場の混乱も加わり、超長期債の運用指標は顕著な収益率を示している。

  日銀は2014年10月の追加緩和以降、残存期間25年超の国債購入額を5倍超に増やしている。超長期債の利回り低下余地は残存期間の短い国債をなお上回る、とPIMCOは予想する。米バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの指数によれば、昨年2.5%だった残存10年超の収益率は13日時点で年初来1.2%。一方、10年以下は、昨年が0.4%、年初来が約0.2%だった。

  ピムコジャパンのポートフォリオマネジメント責任者、正直知哉氏は12日のインタビューで、異次元緩和で恩恵を受ける戦略が重要だと指摘し、「超長期債のオーバーウエートが有望だ」と話した。「イールドカーブのフラット化は足元ではスピードが速いので多少は調整が入るだろうが、方向性としては蓋然(がいぜん)性が極めて高い」と言い、「すでに比較的人気のある取引だが、まだ行き過ぎには至っていない」と述べた。

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  大量の国債購入を続ける日銀も、より長めの年限に軸足を移している。5年物と20年物の利回り格差は13日に90ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)台を割り、約1年前に付けた08年6月以来の低水準に迫った。日銀の黒田東彦総裁は14日、世界の金融市場は「やや騒がしい」状況だと発言。必要と判断すればさらに思い切った対応を取る用意があると述べた。

  中国経済の減速懸念や人民元切り下げ、原油安などを受けた投資家のリスク回避で、株安や金利低下が世界的に進行。年初に入ってからのTOPIXは前日までに9%を超える下げとなり、日本の長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは過去最低を付けた。新発20年債や30年債など、超長期物の利回りも昨年1月以来の水準まで下げている。

  正直氏は「確かに足元の円高・株安で追加緩和の可能性は上がっているが、よほど調整しないと日銀は動かない」とした上で、日本発ではない世界的な株安を「日銀だけが動いて反転させていくのは、まずもって無理だ。効かなければ、よりダメージが大きい」と語った。日銀による巨額の国債購入は「どこかで限界に至る可能性」もあり、黒田総裁は必要なら対応するという「言葉で何とか時間を稼ぐ可能性が高い」と読む。

  異次元緩和下の国債購入は追加緩和がなくても巨額で、昨年12月に導入することを決めた補完措置によって買い入れ年限の長期化が可能になったと、正直氏は指摘する。16年度の国債発行額は減る見通しで、「もはや日本経済のファンダメンタルズとは全く関係ない水準」まで低下している10年債利回りは、「需給主導で、さらに下がる可能性がある」とみる。

  日銀は13年4月に2%の物価目標を達成するため「量的・質的金融緩和」を導入した。14年10月末の追加緩和では国債保有増を年80兆円と、政府が16年度に発行する新規財源債の2倍超に拡大した。15年12月には買い入れの平均残存期間を7-12年程度に長期化するなどの補完措置を講じた。今年の国債買い入れ額は約120兆円と16年度の市中発行額の8割超に及ぶ見通しだ。

  日銀がオペを通じて実施している期間別の国債買い入れ額は、残存25年超が月9000億円、10年超25年以下が1兆3000億円と、いずれも追加緩和以降、大幅に増えている。25年超の買い入れ額は30年債と40年債の16年度市中発行額の9割で、10年超25年以下は20年債の発行額を超える見通しだ。

1ベーシスポイントで164億円

  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、20年債や30年債の利回りについて、日銀による超長期債の買い入れ額を考慮すると妥当な水準にあると分析。生命保険会社や年金基金などの「投資家は1bp下がると、購入額を164億円減らす」傾向にあるため、日銀の増額分とほぼ拮抗(きっこう)していると言う。

  正直氏は、アベノミクスと量的・質的緩和が円高是正や資産価格と消費者物価の押し上げに働いた半面、輸出や設備投資、家計消費といった実体経済の改善は限定的だと話した。雇用増の大半が非正規で、経済全体から見た名目賃金の伸びが鈍いのに加え、インフレに脆弱(ぜいじゃく)な年金受給世帯が高齢化で増えているため、実質購買力が目減りしていると指摘。「構造的で長期的な逆風の威力が強いと証明された」と述べた。

  夏の参院選が終われば、17年4月の消費増税が視野に入ってくると、正直氏は指摘。黒田総裁が「今年後半に追加緩和で消費増税を支援する可能性は十分にある」と読む。内容は「超長期債の増額に株式などのリスク資産買い増しも加える」と予想している。

  日銀は昨年10月末に物価見通しを引き下げ、目標2%到達の時期を「16年度後半ごろ」に先送りした。ただ、ブルームバーグがエコノミストを対象に実施した予想調査では、生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)の前年比伸び率が2%程度に達すると見る向きはほとんどいなかった。共同通信は13日、日銀が29日に公表する16年度物価見通しを従来の1.4%から1%程度に引き下げる検討に入ったと報道。目標達成時期の先送りもあり得ると伝えた。

日本経済に「4D」

  バークレイズ証の押久保氏は「原油安や世界的な株安などリスクオフのモメンタムはなかなか解消されない」と指摘。超長期債の利回りは昨年1月のような「反転上昇ではなく、低位安定が続く」と見込む。追加緩和はないと予想するが「金利は上昇するより低下するリスクが高い。イールドカーブは今年前半はフラット化の流れが続く」と言う。

  正直氏はフラット化の見通しが外れる状況について、日銀が資金供給量を操作目標とする異次元緩和から欧州中央銀行(ECB)型のマイナス金利政策へと枠組みを大転換する場合だと指摘。「イールドカーブは逆にスティープ化する恐れがある」としながらも、日銀自身がマイナス金利の方が有効で、かつ日本の実体経済やインフレ期待に必要だと認めることが前提となるので「ハードルは極めて高い」と語る。

  PIMCOは、今年は米国の景気と物価の回復が続き、米連邦準備制度理事会(FRB)は「市場の織り込みより速いペースで利上げしていく可能性が高い」とみる。円相場は当面上昇圧力が続くが、徐々に安定していくと予想。原油価格は長期的には低位にとどまるものの、今年末にかけては年初よりは高い水準に持ち直すと見込んでいる。

  正直氏は、原油安の進行を前提に売られている「先進国の物価連動債や資源国通貨などを使いながら、備えておくことが重要だ」と指摘。日本の物価連動債も「中期的な備えとして買いだ。日銀が2%の物価目標を安定的に達成するのは相当難しいが、現状程度のBEIは原油価格が反転していけば魅力的な水準になってきている」と語った。

  10年物の固定利付国債と物価連動債との利回り格差(BEI)が示す市場の予想インフレ率は14日に0.519%を付け、財務省が発行を再開した13年10月以降の最低水準を記録した。

  正直氏は、日本経済はデフレ、デット(公的債務)、デモグラフィック(高齢化)、デモクラシーの「4D」に直面していると言う。「高齢化という大きな逆風の中、どうやってデフレ脱却と財政再建を民主主義の下で両立させていくのか。リフレで債務問題を解消する方向に傾いていくが、インフレに弱い年金受給世代の割合が高まり、政治的な発言力が強まっている。どうしてもこのパズルが解けない」と語った。

(更新前の記事は収益率に関する記述の誤りで訂正済みです.)
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