コンテンツにスキップする

新生・武田、外に目を向け世界のリーダーに-初の外国人トップの抱負

昨年夏のある夕べ、米ボストンのバイオテクノロジー関連の重要人物が一堂に会した。サクソホンの演奏が流れるこのイベントのホストは武田薬品工業のクリストフ・ウェバー最高経営責任者(CEO)と研究開発責任者のアンディ・プランプ氏だ。

  ボストンは世界のバイオテクノロジー研究の中心地。武田はここで足場を固め、大学や研究病院、有望な新興企業との関係を深めたいと考えている。

  同社初の外国人CEOに昨年就任したフランス人のウェバー氏が新薬候補を拡充し、縮小する日本市場に代わる海外市場として米国や新興国の開拓に取り組む上で、ボストンは重要だ。米国人のプランプ氏とともに、年間売り上げ10億ドル(約1180億円)超の大型新薬に育ちそうな実験薬の権利を手に入れるため買収や提携を模索していく方針だ。

Christophe Weber

Christophe Weber.

Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg

  マサチューセッツ工科大学(MIT)に隣接するボストンの同社研究開発(R&D)施設では約1000人の科学者らが、がんや消化器疾患の治療に役立つ新化合物の研究に励んでいる。この2つは武田が新たに選んだ重要分野だ。施設周辺の地下鉄網の列車内には最近、武田の広告が掲示されるようになった。

  「10年前は日本国内で大手であるだけで世界を主導する大企業になれた。日本市場がそれほど大きかったからだが、今はそうはいかない」と、東京本社でインタビューに応じたウェバーCEOは話した。同CEOは武田を腫瘍と消化器疾患の治療で世界のリーダーにする抱負を語った。開発して世界各地で販売できるような新薬の権利を手に入れることを目指す考えも示した。

外に目を向ける必要性

  235年の歴史を持つ武田は何十年もの間、日本の製薬業界を引っ張ってきた。同社の「アクトス」はかつて世界で最も売れた糖尿病治療薬だった。しかし最近は主力製品の特許切れや新薬開発の低迷、日本政府による後発医薬品普及を後押しする取り組みなどの逆風に見舞われ2014年3月期の利益は15年ぶりの低水準に落ち込んだ。

  過去2年に6つの新製品を投入しこれらの利用を拡大させつつあるが、現時点で後期の開発段階にある重要な新薬は今年中に臨床試験の最終段階に入る見込みのデング熱ワクチンのみだ。

  国内投資家の武田株に関するセンチメントは「かなり暗い」と言うクレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは「プランプ氏はこれから大仕事をしなければならない」と話す。「最終段階にある新薬は安くは手に入らない」し、新たな提携の成果が表れるまで5年以上かかる場合もあると同氏は指摘した。

  ウェバー氏(49)は14年に最高執行責任者(COO)として武田に加わり15年4月にCEOに就任した。英製薬大手グラクソ・スミスクラインに20年在勤したベテランの同CEOは、ここ数カ月の間に海外の製薬会社から人材を起用し重要ポストに据えた。その1人が仏サノフィから武田入りし最高医学・科学責任者(CMSO)となったプランプ氏だ。

  製薬業界では世界的に、自前の開発にこだわらない傾向が広がっている。ウェバーCEOも新薬を求めて外に目を向ける必要性を感じている。同CEOは「このごろは新しい分子の多くが大手製薬会社以外によって発見されている」と指摘。「従って、われわれも謙虚になり、社内での開発能力もあるが外部にも目を向ける必要があると認めなければならない」と語った。

  昨年12月には、iPS細胞を初めて作製し12年のノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授との共同研究を開始した。同教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所と締結した10年間の共同研究契約の下で、糖尿病やがんなどの分野の研究を進める。

Shinya Yamanaka and Christophe Weber

Shinya Yamanaka and Christophe Weber.

Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg

  最近数週間にはシカゴを拠点とするクール・ファーマシューティカルズ・デベロップメントとの契約など数件の提携を発表した。クール・ファーマは米ノースウェスタン大学ともに、小腸がグルテンに過敏に反応する自己免疫疾患であるセリアック病治療薬を開発している。プランプ氏は、今後6カ月にさらに、新薬開発に向けた多数の提携について発表すると述べている。

腫瘍と消化器疾患の分野での買収も

  腫瘍と消化器疾患を武田の主要2分野と位置付けるウェバーCEOは、これらの分野での買収もあり得ると述べた。詳細には触れなかった。武田は過去2年に販売を開始した有力製品、潰瘍性大腸炎治療剤「エンティビオ」と多発性骨髄腫治療薬「ニンラロ」を軸に、この2つを重要分野に定めた。

  プランプ氏は開発中の新薬の手持ちを急いで増やさなければならないという圧力は感じていないという。エンティビオなど最近投入した製品は長いライフサイクルを見込めるためだ。また、新薬獲得を他社買収のみに頼るのではなく、自社開発や初期段階での提携を通じて時間をかけて育てていきたいとの考えも示した。

  「2世紀以上前からある会社で研究開発は100年やっているが、武田は新会社に生まれ変わったばかりだ。新たな視点と見通しを持つようになったのは恐らく5年ほど前で、これは製薬業界では赤ん坊のようなものだ」とプランプ氏は話した。

原題:As Fortunes Fade at Home, Japan Drug Titan Eyes Greener Shores(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE