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劣後債発行ラッシュ、菱地所や野村HD-株安で「増資えらいことに」

更新日時
  • 昨年の劣後債発行額は前年比3.6倍の2兆1623億円
  • 「ベース金利が低くスプレッドが乗っても劣後調達の好機」と大橋氏

昨年末から年初にかけて、三菱地所野村ホールディングス三井住友海上火災保険が相次いで劣後債の発行を発表した。金利が一段と低下する中、発行体にとって劣後債の割には低コストで調達できる上、投資家ニーズも高く需給がマッチしている。

  菱地所は8日、初の劣後債発行を発表した。年限は60年で調達額は2000億円程度を見込み、1月末ごろに条件決定する。このほかに野村HDが7日、私募の無担保永久社債を1500億円程度発行すると発表、昨年12月25日には三井住友海上が2月上旬以降に劣後債を発行する計画を明らかにした。

  国内社債市場が縮小している中、劣後債の発行は増えており、ブルームバーグ・データによると2015年の発行額は前年比2.7倍の2兆2847億円。6年ぶりの高水準となった。劣後債は一般に資本性が認められるため、バーゼル3など健全性規制への対応を求められる金融機関が起債したほか、ソフトバンクや三菱商事などの事業会社も発行した。

  大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリストは、現状では劣後債に対する「需要と供給がちょうどマッチしている」と話す。返済優先順位が低い分、相対的に利回りの高い劣後債には「投資家のニーズがある」上、発行体にとっても「ベースの金利が低く、そこにスプレッドが乗ったとしても劣後で調達する時期としては良い」と指摘。「一つの大きなサブセクターとして発展しそうな期待を持っている」と言う。

  社債のベース金利として使われることが多い10年物国債利回りは、昨年6月に0.545%まで上昇したが、14日には一時0.19%まで低下し、過去最低を更新した。

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事業法人の劣後債

  劣後債の発行体の多くは、資本強化を進める銀行、保険会社で占められており、ブルームバーグのデータによると三菱商が昨年6月に発行したのが事業会社としては最後となっていた。

  これに次いで劣後債を発行する菱地所の金森千佳広報担当は、狙いについて「健全な財務体質を維持し、引き続き丸の内エリアを中心にした再開発プロジェクトを始めとするさまざまなプロジェクトを推進する」と説明した。劣後債発行は増資と違って株式の希薄化が起きない上、格付け上は一部資本として認められ、財務の健全化に寄与する。

  発表資料によると、同社債の年限は60年で、繰上げ償還期間は5年、10年、12年となっている。年限の長さや通常債務と比べた劣後性から、同社は「格付機関から調達額の50%について資本性の認定を受けられる」と見込んでいる。

  日経平均株価が14日までに年初来9.4%下落し、昨年9月末以来の低水準となる中で、みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、「株式市場の動向を見て分かるように、今増資をするとえらいことになる」と指摘。調達コストは上がるものの、償還時期が集中しやすい通常の社債と比べて、償還日を分散できるメリットがあると語った。

  一方、野村にとっては初のAT1劣後債発行となり、「規制動向に対応できるとともに、将来の資本政策の柔軟性を維持できる」と電子メールで回答した。

スプレッド拡大時に注意

  朝日ライフアセットマネジメントの中谷吉宏シニアファンドマネジャーは、劣後債は「利回りを確保できる貴重な投資機会だ」と指摘。ただ、通常の社債よりもスプレッドが拡大しやすい傾向があるのに加え、現在のクレジット市場は「スプレッドがタイトすぎる」とし、「開くリスクを気にしないといけない」と話した。

  バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのデータによると、国内社債の対国債スプレッドは12日時点で28ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)。

(第5、9段落で金利、株価を更新しました.)
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