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マイナス金利、日本経済の低迷を悪化させる-BNPの徳勝氏

更新日時
  • 日本人のコストで外国人へ補助金を与えているようなもの
  • 日銀は異次元緩和を縮小すべき時期-徳勝氏

BNPパリバ証券の徳勝礼子レラティブ・バリュー・ストラテジストが執筆したマイナス金利の弊害に関する本が日本の金融街の中心地「丸の内」で話題を呼んでいる。

  市場金利がマイナスとなるような政策は日本経済に矛盾を引き起こしており、逆効果--。「マイナス金利:ハイパー・インフレよりも怖い日本経済の末路」と題する著書の中で徳勝氏は、ゆくゆくは財政規律の弛緩につながり、将来の世代に債務負担を押し付けることになると指摘した。

  日本の2016年度一般会計予算案の総額は前年度当初比0.4%増の96兆7218億円。少子高齢化を背景に社会保障費が増加を続けている。一方、財務省によると、15年の日本政府の債務残高は、対国内総生産(GDP)比で約234%と主要7カ国中で最悪だ。

  徳勝氏は6日のブルームバーグとのインタビューで、「マイナス金利は、表面的には金利が低いのでリスクがないと教科書的に言われているが、実は真逆のことが起きており、真の姿をカモフラージュしている」と指摘。「成長促進の大義名分の逆が起きている」と言い、日銀の量的・質的緩和を縮小する時期に来ているとみる。

  欧州中央銀行(ECB)は、マイナス金利が企業や家計の借入コストを減らし、デフレ阻止や企業融資を拡大させるとしている。ECBや日銀が過去最大の国債買い入れを進める中、日本の10年物以下の国債利回りはゼロ%近辺に低下。10年債のインフレ調整後の実質金利はマイナスに転じている。

インフレ税

  量的緩和をめぐっては、ノーベル経済学賞受賞者のロバ ート・マンデル米コロンビア大学教授が米連邦準備制度理事会(FRB)による債券購入でドル安が進んでいた2010年当時に、1970年代の「インフレ税」になぞらえて、警笛を鳴らした経緯がある。マンデル教授は、基軸通貨であるドルの下落は「海外のドル保有者に対する課税だ」 と述べていた。

  「インフレーション・タックス」と題する著書で、政府がインフレによって債務軽減をすると指摘したピート・コムリー氏もまた、日本経済が「地球の将来を示すクリスタルボール」になっていると言い、「日本は、労働力人口の減少や年金生活者の増加により、需要の減退と低インフレ率が続いている。金融緩和策は、こうした構造問題を解決しない」と述べた。

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  「日銀の金融緩和が長引きすぎている。実質1%のインフレ率なら、テーパリングの時期は熟していると個人的には思う。緩和を止めるタイミングに来ている」。徳勝氏はこう述べ、日本の経済は成熟して、潜在成長率が低下しているので、目線を下げるべきなのに高いと分析する。

  11月は家計調査で実質消費支出が減少し、鉱工業生産も3カ月ぶりに低下した。一方、ドル・円のベーシススワップ取引では、ドル資金調達コストは相対的に高い半面、円資金の調達コストは低く抑えられており、海外投資家にとって円建て資産を購入する資金の交換元となっている。短中期債の利回りがマイナス圏に低下しているのは、こうした海外投資家からの需要が強いことが背景だ。実際、新発2年債利回りは足元でマイナス0.02%強程度で推移している。

  徳勝氏は、「通常は金利が低いとお金を借りる時に良い。しかし日本人がドルを借りる時のコストが上昇している。日銀が円を安売りして、海外でビジネスするため民間企業がドルを調達する時にコストがかかる。緩和だと思っていたら、実は引き締めになる。財政に比べて、税金を使わずにできるので金融政策はタダという見方で、安易に使われている」と言う。 

  出版元の東洋経済新報社によると、徳勝氏の本の販売部数は初版で7000冊を超え、重版が決まった。読者層が限られるこの種のテーマで重版となるのは好調と言う。丸善・丸の内本店などで金融関係では売れ筋ランキング1位になっている。

  量的緩和による景気刺激効果については、米国のヘッジファンドマネジャーのデービッド・アインホーン氏も懐疑的だ。アイホーン氏は12年、金利の低迷は、投資収益の下落をもたらし、商品価格の上昇を促すため、消費よりも貯蓄を促す結果になると指摘していた。

  徳勝氏は、1986年東京大学経済学部卒、1991年米シカゴ大学MBA(統計)。英モルガン・グレンフェル(現ドイツ証券)をはじめ複数の外資系金融機関に勤務。バークレイズ証券シニア債券ストラテジストを経て、2014年から現職。 

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