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悲惨な交通事故の記憶、トヨタの人工知能研究トップを鼓舞-新会社で

  • 米国防総省からトヨタへ転身、人生を変える技術開発を目指す
  • 自動運転・運転支援技術の研究開発競争激化、新たな市場開拓も

トヨタ自動車で人工知能研究を指揮するギル・プラット氏は、今でも幼いころ目の当たりにした悲惨な交通事故を鮮明に覚えている。米ニュージャージー州で小学校からの帰り道に、自転車に乗った少年が車にはねられて亡くなった現場に遭遇した。

  「最も記憶にある部分は道路に残されていた少年の靴だ」とプラット氏は昨年11月のインタビューで語った。プラット氏はトヨタが5年間で約10億ドル(約1200億円)を投じる人工知能研究の新会社で、交通事故の回避・削減を目指す。新会社は1月、プラット氏を最高経営責任者(CEO)に迎えシリコンバレーで始動した。

  世界で自動運転・運転支援技術の研究開発競争が激しくなる中、プラット氏は豊田章男社長に請われてトヨタで最先端の開発チームを構築する。プラット氏は米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)で災害救助用ロボット競技大会を指揮した経験がある。

  プラット氏が指揮するトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)の研究者には、DARPAでプログラムマネジャーをしていたエリック・クロトコフ氏やラリー・ジャッケル氏、グーグルの元ロボティクス部門長のジェームス・カフナー氏など世界最高水準の技術者が名を連ねており、自動運転分野で先行する米グーグルなどに挑む。

生活を変える可能性

  プラット氏は、自動運転・運転支援技術の研究開発が「人々の生活を変える可能性がある」意味のあるものだと語った。「携帯端末用アプリケーションの開発に同様の労力を割いても、より良い人生への貢献はさほど大きくないかもしれない」が、この研究開発には優秀な人材を引き付け、確保しやすいと述べた。

  TRIの研究開発は、世界の自動車市場を広げる可能性もある。画期的な運転支援技術が投入されれば、これまで車に興味のなかった若者が購買層となることもあり得る。また、先進国で高齢化が進む中、判断能力の低下で運転免許を返納せざるを得なかったお年寄りが再び自動車で移動できるようになるかもしれない。

  トヨタは人工知能技術を用いることで、運転技量の劣っている人がブレーキやハンドルを操作するのを支援して、安全に走行できるシステムを構築することを目指している。プラット氏は、高齢となった親に安全な運転は無理だと判断して車のキーを返してもらった「つらい経験」があると語り、この分野の開発にも思い入れがあると語った。

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