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【コラム】20%が今年重大な意味を持つ理由-J・ミクルスウェイト

今年の鍵を握る数字を選ぶなら、20%がお勧めだ。米欧の政治を見渡せば、かつては思いも寄らなかった出来事や、泡沫(ほうまつ)とも言うべき候補の当選がわずかの間に現実味を帯びてきている。

  その確率はどれも「起こりそうだ」というより「起こり得る」というべき20%程度ではあるが、この「20%の世界」は大西洋を挟んだ米欧双方の民主主義の基調を定める見通しだ。さらに競馬ファンが言うように大穴の中からいつかは必ず勝つものが出てくる。

  2016年米大統領選で共和党候補指名獲得を目指すドナルド・トランプ氏から見ていこう。これまでブックメーカーの賭けは選挙結果予想の正確性で世論調査を大きく上回ってきたが、現在のトランプ氏勝利のオッズはおよそ6対1(17%)。英国で次期英首相を目指す強硬左派の労働党党首、ジェレミー・コービン氏のオッズもほぼ同じだ。

  フランスでは右翼政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が来年の大統領選挙で勝利するオッズは25%に近い。これはポピュリスト政治家のルペン党首が大統領選の決選投票に残る確率がかなり高いことが根拠の一つだ。またオランダの右翼ポピュリスト政治家、ヘルト・ウィルダース自由党党首はかつては「泡沫」候補とされていたが、次期首相に就任する確率は恐らく同程度ある。

  ほかにも考えられない事態が現実となりつつある。米国版コービン氏とも言うべき存在で、トランプ氏から最近「変人」と評されたバーニー・サンダース上院議員勝利のオッズは約5%と、ジェブ・ブッシュ氏と遜色がない。さらにサンダース議員はコービン氏と同様、学生と年金受給者、公務員の支持が高く、これらの支持層の組み合わせは通常、予備選で効果を発揮する。ヒラリー・クリントン氏が新たなスキャンダルに見舞われた場合、民主党はソーシャリスト(社会主義者)の大統領候補を擁立する事態も排除できない。

  こうした「変人」候補が演じる番狂わせだけでない。思いも寄らない事態も起こる可能性がある。英国では欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が早ければ6月にも実施されそうだ。ブックメーカーの予想では国民はEU残留を選ぶとみられているが、有識者は14年のスコットランドの住民投票の時ほどの確信はない。スコットランドの英国からの独立の賛否を問う住民投票はかなり接戦となり、英国政府や産業界をやきもきさせた。

  さらに、20%の確率の出来事が実際に起こった場合、別の厄介な問題につながるリスクも増大し得る。英国がEUを離脱すればスコットランドの独立の機運が高まる可能性がある。ルペン氏がフランスのユーロ離脱を実現させた場合、ユーロ圏解体のリスクが高まる。またトランプ氏が米大統領となれば、中南米やイスラム圏とどのような外交を展開するか推測するしかない。

  ここまでわれわれを駆り立てた不安は弱まりそうにない。経済が成長していても、米欧双方の有権者は政治的立場のいかんに関わらず、格差やグローバル化(特に海外からの移民と貿易)といったおおむね同じ出来事におじけづいている。仮にあなたが自分の雇用や子供の将来を憂慮しているなら、コービン氏、サンダース氏の左翼陣営、またはトランプ氏、ルペン氏の右翼陣営に引き寄せられるだろう。

  西側諸国の問題が解決されずにいる一因として、米国の金権政治、欧州のアカウンタビリティー(説明責任)の欠如などの腐敗と不効率を指摘できよう。だがもう一つの理由には、格差のような問題は容易ないし迅速な解決は見込めないことが挙げられる。一つの世代が一夜にして十分な教育を受けるはずがなく、技術変化によってもたらされた経済再編が短期間で終了することもない。言い換えれば、20%の世界はしばらく続くわけで、それに慣れるしかない。

(コラムの内容は必ずしも編集部あるいはブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)
  
原題:Why 20 Percent Will Be 2016’s Big Number: John Micklethwait(抜粋)

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