2015年の日本株現物の投資部門別売買動向をみると、米国、欧州を中心とした海外投資家は年間で売り越しとなる可能性が高まっている。円建て、ドル建て双方で株価が上昇したにもかかわらず、海外勢が売り越しとなれば実に26年ぶりの珍事だ。

  東京証券取引所によると、日本株の売買代金シェアで約7割を占める海外投資家は東京・名古屋2市場で15年年初から12月4週までに2524億円売り越している。確定まであと1週を残すが、仮に年間で売り越せばリーマン・ショックのあった08年以来、7年ぶり。円建てとドル建てのTOPIXがともに上昇した中で海外勢の売り越しが確認されれば、TOPIXが史上最高値を付けたバブル絶頂の1989年以来のことになる。

  15年のTOPIXは、円建てで前の年末に比べ9.9%高と4年連続で上昇。ドルベースでも9.1%、ユーロベースでは21%それぞれ上げた。米国のS&P500種株価指数とストックス欧州600指数の成績がドル建てで小幅なプラスあるいはマイナス、ユーロ建てでもTOPIXに見劣りしており、主要先進国の中で日本株のパフォーマンスは良好だったと言える。

  ゴールドマン・サックス証券の副会長で、チーフ日本株ストラテジストのキャシー・松井氏は海外勢の15年夏以降の売り越し姿勢について「明らかに失敗だった」と振り返る。その上で、16年にどうするかが問題になってくると述べた。

  14年はTOPIXが円建てで8.1%上昇した半面、ドル建てで4.9%下げた。第2次安倍政権の誕生と日本銀行の異次元緩和策に沸いた13年は円建ての上昇率が51%に対し、ドル建てでは24%。為替市場でドル高・円安基調が鮮明だったためで、その勢いが鈍った15年はアベノミクス相場始動後の3年間でみると、円建てとドル建てパフォーマンスが最も拮抗(きっこう)した。過去2年の海外勢による日本株の売買動向は、14年が8527億円、13年は15兆1196億円のそれぞれ買い越しで、13年の買越額は史上最高。一方、年間で売り越した08年の売越額は3兆7085億円、98年は2993億円だった。

夏場の猛烈売りが尾を引く

  15年の海外勢は1月に8000億円超売り越した後、2月から5月は買い越し、6ー9月は売り越し、10ー11月は再度買い越した。特に8ー9月の2カ月で3兆7355億円売り越し、9月の月間売越額2兆5772億円はブラックマンデーのあった87年10月を抜き、史上最高を記録。中国株暴落のショックに世界が揺れた夏場の歴史的な売りが年間ベースでも尾を引いている。

  バンク・ジュリアス・ベアのアジア調査責任者、マーク・マシューズ氏(シンガポール在住)は「海外投資家は特に日本に関してではなく、グローバルにリスクを減らした」とみる。同社は、15年に日本株のエクスポージャーをオーバーウエートからニュートラルへ下げた。「日本は国内から買いが流入したため、海外勢がそこで売るのは自然なことだ」と言う。

  損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントの中尾剛也シニアインベストメントマネジャーは、夏場の売り圧力には中国情勢に対する不透明感も影響したとの認識だ。「海外投資家には中国マクロへの懸念があれば、日本株への影響が大きいという誤解があり、中国リスクへの警戒感から日本株を売ってきた」と分析している。

16年は買い転換期待も

  もっとも中尾氏は、中国経済の日本に対する影響について「強弱はあるが、上期決算をみると、日本の個別企業に影響は顕在化していなかった」と指摘。海外勢は夏場の売り越し量に対しする買い戻しが進んでおらず、「いったん売った後に様子をみている投資家が多い」と話す。今後、利上げ後の米国経済統計が心配のない内容となれば、「企業業績の変化率、コーポレート・ガバナンスの改善から、日米欧の中から選ぶなら日本株優先で買ってくる」と予想した。

  大和証券が昨年12月にまとめた企業業績集計によると、15年度の上場主要企業の経常利益は11%増、16年度は5.6%増の見通し。商品市況の下落や海外での需要減少見通しを背景に、前回9月の調査(14%増、6%増)からは下方修正されたものの、経常利益額が連続で過去最高を更新するとのシナリオは維持している。

  海外勢以外の15年の日本株売買動向は、12月4週までで事業法人が2兆9787億円、年金基金の動向を含む信託銀行が1兆8171億円、投資信託が1959億円それぞれ買い越し。ミラボー・セキュリティーズ・アジアのトレーディング・ディレクター、アンドルー・クラーク氏は日本の国内投資家が海外勢に頼らず、株価を押し上げる力を持ち始めたと受け止める。また、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など「年金が日本株比率を上げることは、個人にも興味を持たせる」と話した。

  ゴールドマン証は、14年から既に日本株の主な買い手は海外勢から国内勢に移っている、との見方だ。事業法人は15年度推定の5.8兆円に対し16年度も7.5兆円の買いが見込まれるとし、株式の資産構成割合を25%に高めるGPIFをはじめ、共済年金などでは5兆円相当の買いが必要で、信託銀の買い越し持続も予想。さらに年間3兆円の上場投資信託(ETF)の購入を続ける日本銀行の存在もあり、そこに個人や海外投資家も加わる可能性があるとみる。

  ことし最初の取引となった4日の東京株式市場では、昨年12月31日以降に発表された米国や中国の低調な景気指標を受けて企業業績に対する懸念が強まり、内外需とも幅広く売りが先行。TOPIX終値は2.4%安の1509.67と、大発会としては08年以来の下落率となった。

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