プロ棋士に勝利の人工知能、銀行やノンバンクの与信管理に応用へ

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  • ベンチャー企業のHEROZ、金融分野の事業を拡大
  • 「日本版ワトソン」の可能性に期待も、野村証とも市場予測で研究開発

初めて将棋のプロ棋士に勝利した人工知能(AI)を開発したベンチャー企業のHEROZ(東京都・港区)は金融分野の事業を拡大する。人間の思考を数理的に再現し効率よく予想できるAI技術を、銀行やノンバンクと共同で融資や与信管理向けに開発していく計画だ。

  HEROZの浅原大輔取締役によると、プロ棋士の過去の対局記録をデータ化し効率的な一手を読むAI技術を応用する考え。浅原氏は「人間から見ると正しくないようでもAIが正しいと見つけることもある」と述べた。金融業務では融資の可否や焦げ付きリスクなどが高度に判断できるようになるという。

  金融庁は、金融機関が最先端の情報技術(IT)を活用したサービスに取り組みやすくなるよう法改正を伴う規制緩和などを目指している。こうした中で三菱東京UFJ銀行をはじめメガバンクはIBM社製のAI「ワトソン」を使った新サービスの開発などを進めている。HEROZは、すでに野村証券と市場予測の研究開発に乗り出している。

  HEROZの浅原氏によれば、例えば融資では、金融機関が従来から活用している収入や借り入れ履歴などに加え、リアルタイムの出入金データや、ソーシャルネットワーク(SNS)での交友網など新たなデータを与信判断に活用。これにより精度の高い与信判断が可能になると説明する。

「ワトソン日本版」の期待

  香港中文大学のリョン・ホファン教授は、HEROZの人工知能について「過去のデータをもとに最善の策を探しながら自分で学習していく点が、次の一手を考え続けるような従来からのチェスなどの対戦プログラムと異なる」と指摘。この技術ならば「金融分野にも応用できる」とみる。

  日本将棋連盟によると、同社のエンジニアが開発した将棋対戦プログラムは2013年に佐藤慎一四段(当時)に勝利した。浅原氏によれば、HEROZは昨年12月下旬、研究開発の強化に向け、一二三(ひふみ)インキュベートファンドから1億円を調達。AI関連エンジニアの獲得競争が強まる中、優秀な人材やクラウドサーバーなどに投資する。

  一二三に個人資金を出資しているレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長は、HEROZの技術について「プロ棋士に勝った実績があり、世界で最も信用されているワトソンの日本版になる可能性がある」と指摘。「経営陣は未上場株への投資で大切な経営の力、技術力、人間性のクオリティが高く信頼できる」と評価した。

  HEROZは日本電気の経営企画部に在籍していた林隆弘氏と高橋知裕氏が09年4月に設立。ゴールドマン・サックスの投資銀行部門に在籍していた浅原氏が最高財務責任者(CFO)として13年6月に経営陣に加わった。

(第5段落に専門家のコメントを追加します.)
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