日本銀行は量的・質的金融緩和策の補完措置として、従来の指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れに加え、設備・人材投資に積極的に取り組む企業の株式を対象にしたETFの購入方針を新たに打ち出した。しかし、新機軸に該当するファンドは現存せず、資産運用業界にとっては早期の新商品組成が課題に浮上した。

  日興アセットマネジメントの今井幸英ETFセンター長は、設備・人材投資関連のETFについて「なかなか珍しい。海外でもあまりないかもしれない」と指摘。国内で関連商品は「存在していないため、こういうETFを作ってほしいという日銀からのメッセージ」と受け止める。

  日本取引所グループ広報・IR部の青沼見和氏は、「現時点で設備・人材投資にフォーカスしたETFは存在しない」とし、そうした商品が開発される予定の有無についてはコメントを控えた。東京証券取引所の資料によると、上場するETFは11月時点で国内外株式、レバレッジ・インバース型、不動産投信指数、外国債券指数、商品投資型など195本ある。

  日銀は18日に開いた金融政策決定会合で、マネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行うとの方針を維持するとともに、量的・質的緩和の補完措置を導入した。ETFについては、保有残高が年間約3兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行うと同時に新たに年間約3000億円の枠を設け、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買い入れる。

  日銀は、2010年12月からETFの買い入れを開始した。今月10日現在の営業毎旬報告によると、ETF資産残高は6兆6895億円。現在はTOPIX、日経平均株価、JPX日経インデックス400の3指数に連動するETFを対象とし、市場残高に比例し購入している。今回の設備・人材投資ETFに関しては、当初はJPX日経400のETFを買い入れ対象とし、この施策の趣旨に合致する新規のETFが組成された場合、速やかに買い入れ対象に加えるとした。

  海外では、米国エルクホーン・インベストメンツがS&P500資本投資効率性指数に連動したETFの運用を5月から開始している。

  設備・人材投資ETFへの約3000億円の新枠は、日銀が買い入れた銀行保有株式の売却開始に伴う市場への影響を打ち消す観点から設定されたもので、16年4月から開始する。これに関連し、07年に決めた株式処分の指針で従来は21年9月末としてきた銀行保有株式の売却完了期限について、26年3月末まで延長することを決定。現在停止中の売却は、16年4月から再開する。

選択的投資、市場ゆがめるリスクも

  米資産運用会社のブラックロック・ETF運用部で日本ヘッドを務めるジェイソン・ミラー氏は、「設備投資関連指数はまだ各国市場で開発初期段階にある。ただ、われわれも調査していたことがあり、ある程度理解のある商品ではある」と言う。その上で、「マクロ環境を考慮すると、こうした質を求める方向に需要が傾いていることはサプライズではない」と述べた。

  岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チーフストラテジストは、今回の新枠設定について「設備や人材投資にのっとったものを対象にするという特別なもの。市場全体を押し上げるわけではなく、これには疑問符が付く」と話す。「個別の銘柄に日銀が関与することと同じ。そういったところの評価がマーケットで消化し切れていない面がある」との認識を示した。

  SMBC日興証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストも、相場全体への影響について「3000億円であればマイナスではないが、ほとんどインパクトはないとみていい」と分析。今後の運用がどうなるか分からない部分はあるとしながらも、「選択的な買い方をするのはマーケットをゆがめるリスクがある。ゆがめるのは、長い意味ではネガティブ」としている。

  18日の日本株は、日銀の新方針を受けて日経平均が一時515円高の1万9869円まで急騰する場面があったものの、その後は評価が交錯し、結局366円安の1万8986円と節目の1万9000円を割り込んで終えた。

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