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米利上げなら円は金利差が重し、新興14カ国は「苦労」-大場元財務官

更新日時
  • 中国人民元のSDR入りは時期尚早も、英国支持の可能性で不透明
  • 中国成長率「実態は5.75%くらいでは」、人民元はもう少し弱くなる

日米英独仏が世界的な不均衡をもたらすドル高の是正で一致した1985年9月の「プラザ合意」時に財務官だった大場智満氏は、米国が2006年以来となる利上げに踏み切れば、円相場は内外金利差の影響を受け、新興国の一部は資金流出で「かなり苦労する」とみる。

  大場氏(86)は21日のインタビューで、ドルはプラザ合意から30年を経て、大局的に「もはや安定してきている」と評価。円相場については「今は短期的には金利差で動く時代だから、米国が利上げしたら響く」と予想した。通貨の強弱は「中長期的には国際収支やGDP(国内総生産)が効く。超長期的には購買力平価も一つの参考指標にはなる」と話した。

  主要貿易相手国・地域26通貨に対する貿易加重ドル指数は先月23日に03年4月以来の水準まで上昇。新興20カ国の通貨指数はほぼ同時期に1993年7月以降で最低となった。足元では米利上げの後ずれ観測を受け、ドル高・新興国通貨安は一服。円の対ドル相場は6月に1ドル=125円86銭と約13年ぶりの安値を付けたが、27日午後は120円台後半で推移している。

  国際金融情報センターの前理事長である大場氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げすれば、主要な新興30カ国のうち14カ国は「米国への資金流出で自国通貨が弱くなる。防衛するには金利を引き上げざるを得ず、成長にはマイナスになる」と分析。米利上げが多少後ずれしても「状況は変わらない」と述べた。

  判断基準には、1)経常赤字がGDPの3%以上、2)対外短期債務が外貨準備以上、3)インフレ率が6%超、4)GDPがマイナス成長-の4指標を使用。2つ以上に該当するロシア、ブラジル、南アフリカ、インドネシア、パキスタン、ベネズエラ、コロンビア、アルゼンチン、イラン、イラク、エジプト、アルジェリア、トルコ、カザフスタンは政策対応を迫られると予想した。

US Trade Weighted Broad Dolla

人民元、英国が支援か

  大場氏は人民元を国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に入れるのは「普通に考えたら、まだ早い」と指摘。米国がIMFのクオータ(出資比率)改革で中国のシェア上昇を承認し、SDR入りは人民元の国際化や資本市場の自由化が進むのを待つべきだと語った。ただ、構成通貨を決める理事会で、中国を「英国がサポートするのではないか」と述べ、結論は不透明だとの認識を示した。

  SDRはドルと金に次ぐ国際準備資産としてIMFが69年に創設。自由に利用が可能な主要国・地域の通貨に対する潜在的な請求権だ。変動相場制への移行後は必要性が低下したが、世界的な金融危機を経て関心が高まった。現在はドルとユーロ、ポンド、円で構成。3月時点で2040億SDR(2800億ドル相当)が加盟国に配分されている。

  関係者によると、IMFはSDR見直しで人民元が採用される公算が大きいと中国の当局者に強く示唆した。IMFは5年ごとの見直し作業の一環として、SDRの構成通貨に人民元を含めるかを検討中。理事会はIMFスタッフの判断を受け取った上で、来月にも採決する。2010年の前回見直し時は、人民元の自由化が十分でないとして採用が見送られた経緯がある。

  大場氏はSDR入りの条件として、1)世界全体の外貨準備に占める割合、2)国際的な債券発行高、3)貿易決済額-の3つがあると指摘。外貨準備についてはドルが64%、ユーロは21%、ポンドは4.1%、円は3.4%だが、人民元は1%にとどまると言う。債券発行高もドル建てが1-3月期に43%、ユーロ建てが39%、ポンド建ては10%、円建ては2%で、人民元建ては0.6%だったと指摘した。

  貿易決済額に関してはドルが42%、ユーロが37%、ポンドは4.3%、円は3.3%だが、人民元は0.7%にすぎないと指摘。中国は「貿易額では世界一で、人民元建ての取引も円とほぼ並んだが、決済は少ない」と語った。3条件の現状を踏まえれば、仮に人民元がSDRに入ったとしても、構成割合が「日本より低いのは当たり前だろう」と述べた。

中国は5.75%成長

  中国が8月11日に人民元を突然切り下げると、世界的に市場が混乱。世界の株式時価総額は先月下旬にかけて約9.7兆ドル失われた。同国は05年7月に対ドル連動(ペッグ)制を廃止して緩やかな元高を容認したが、世界的な金融危機後は水準維持に転換。10年6月から再び上昇を認め、昨年1月には6.0元台と公定・市場レートを一本化した1993年末以来の高値を付けた。その後は資金流出で下落圧力に直面している。

  中国の実質GDPは7-9月期に前年比6.9%増と約6年ぶりの低水準に減速。中国人民銀行(中央銀行)は23日に昨年11月以降で6回目となる利下げと預金準備率の引き下げを発表した。共産党指導部は26日から、16-20年の5カ年計画について討議する。

  大場氏は、人民元相場は「もう少し弱くなりそうだ」と予想。成長率の「実態は5.75%くらいではないか」とみる。電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資額から算出されるいわゆる「李克強指数」によると3.5%程度だが、サービス産業は約8%の成長と仮定し、構成比も5割ずつと割り切って算出したと説明。「中国経済の減速は世界の問題だ」と語った。

  日本経済については「デフレからは脱却しつつある」が、「成長エンジンは見当たらない」と指摘。「海外投資で利益を出し、貿易赤字でも経常黒字を維持することではないか」と話した。日本銀行の黒田東彦総裁が目指す2%の物価目標については「目標自体は持っても良いが、無理にいつまでにと言う必要はない」との見解を示した。原油安を背景に、他の先進国でもインフレ率はゼロ%前後にとどまっていると述べた。

  日銀が異次元緩和で国債等保有額を「これ以上増やすのは将来に禍根を残す」恐れがあると懸念。日銀は「まだ1年は続けざるを得ない」が、いずれ「出口政策を考えておいた方が良い」と述べた。公的債務がGDPの2倍超に膨らむ中、消費税率は欧州並みに「20%まで持っていかないと駄目だ」と主張。15%への増税時に10%の軽減税率を入れ、インボイス(税額票)方式も導入すべきだと語った。

(最後の2段落に発言内容を追加して更新します.)
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