米系資産運用会社のブラックロックで、東京都以外の顧客を対象に指数連動型上場投資信託(ETF)を扱う初めてのアカウントマネジャーとなった竹脇陸(31)氏は、年初から40近い道府県を回り、100社以上の地方銀行や資産運用会社の経営者、担当者らと面会した。自社のETFの販売先として、預金量で300兆円を超す地銀を有望なターゲットとみているためだ。

  日本銀行が国債を吸収し、利回りが縮小する中、地銀は収益を上げるために株式と外国市場に資金を費やす必要がある--。竹脇氏のセールストークはシンプルだ。リーマン・ショックの苦い経験から、外資系運用会社に対する信頼は盤石とは言い難いものの、「訪問すれば、彼らは少なくとも名刺交換し、話をしてくれる。時には数日後に注文を受けることもある」と自身の仕事に手応えを感じている。

  ブラックロックは20日、東京証券取引所に4本のETFを新たに上場させる。うち2本はリスクテークに慎重な地銀マネーの取り込みを狙っており、1つは株式ポートフォリオのリスクを最小化する銘柄選定やウエート設定を行う戦略を用いた「iシェアーズ MSCI日本株最小分散ETF」。もう1つは、配当性向や配当継続性、株主資本利益率(ROE)など財務指標の要件を満たす企業群のうち、高配当利回り銘柄で構成する「iシェアーズ MSCIジャパン高配当利回りETF」だ。

  竹脇氏の上司で、同社ETF運用部の日本ヘッドを務めるジェイソン・ミラー氏は、地銀を「重要な顧客としてより注目するようになっている。メガバンクや保険、資産運用会社についてわれわれがどのように考えているかということと似たようなものだ」と言う。同氏は、地銀からの資金流入は3年以内に現状に比べ2倍から3倍伸びる、とみている。

  ブルームバーグのデータによると、日本のETF純資産総額は9月末時点で14.5兆円と2年前と比べ2倍以上になった。一方、ブラックロックによると、世界で運用されているETF全体の純資産は同期間に35%増えた。

長野の八十二銀、ETF運用残高は2.5倍に

  大和総研の調べでは、地銀の保有資産残高は2014年度まで12年連続で増える一方、預貸金利ざやは04年度の0.7%から14年度は0.3%まで縮小している。低金利の長期化で貸出業務の収益性が悪化する中、資産に占める有価証券の割合は6年連続で増加中。中でもリスク性資産の比率が着実に高まっており、債券(国債、地方債、社債)の比率は11年度の84%から14年度に72.3%へ低下した。

  長野県地盤の八十二銀行は、15年3月期の国内ETFの運用残高(取得原価ベース)が162億円と前期比2.5倍に増えた。同行企画部IR担当の桜井洋氏は、「基本的には国債が多いが、金利が低下する中で少しでもさやを取っていかなくてはならない。代替投資先としてETFがある」と指摘。全体のポートフォリオで国内ETFの占める割合は0.7%と小さいが、今後も「株のデリバティブなども含めさまざまに運用していく」と話した。

  ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズも、地銀マネーの取り込みを狙う米系資産管理会社の1社だ。証券営業部の杉原正記部長は、「戦略転換が求められる中、複雑で管理しにくい投資対象に手を伸ばさざるを得ない状況に置かれている地銀もある」と言う。ETFは、「何かあったら売れる流動性や価格の透明性がある。少額からやってみようというパイロットケースとして使いやすいという評価は高まっている」とみる。

  一方、地銀の中でETF投資に依然慎重な声が根強いのも事実だ。静岡銀行資金証券部の村松一之証券投資グループ長は、「株やファンドをやるときには最低でもミニマムロットで25億、50億という単位。ETFは市場規模が小さ過ぎる」と言う。「市場部門の収益期待はかなり高まっている」ものの、ポートフォリオにETFは組み込まれていないことを明らかにした。

  米国では、S&P500種株価指数の日中下落率が5.3%と4年ぶりの大きさを記録した8月24日、元株の急変動で取引困難に陥り、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する500銘柄以上のETFの売買が一時停止された。こうした経緯から、市場には相場波乱時の流動性などを懸念する向きもある。

  大和総研金融調査部の菅谷幸一研究員は、「地銀はリスクを取るのと同時にリスク管理能力も必要になる。許容度は、個別行によって方針や能力に差異が出てくる」との見方を示した。クレディ・スイス証券の三浦毅司アナリストは、地銀は海外の資産にも目を向ける必要が生じ、「今やアセットマネージャー化している。うまく運用できるかどうか、注意しなければならない時代にきている」と指摘した。

  9日の日本市場では日経平均株価が1万8000円台で推移しており、年初来の上昇率は5%超。12年-14年の過去3年の年間パフォーマンスはいずれも上昇し、上昇率は23%、57%、7%だった。一方、長期金利の指標となるきょうの新発10年物国債の利回りは0.3%台で、6月時点の0.5%台から低下している。ブラックロック・ジャパンが運用・管理するETF「iシェアーズ日経225」の8日時点の終値は1万8670円、1口純資産価額(NAV)は1万8665円。

JGB Holdings by Regional Banks
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