「ゴルゴ13」の標的になるのは誰だー。日本の劇画の代表作に海外ヘッジファンドによる日本売りが題材として取り上げられている。日本国債の暴落シナリオを掲げるファンドが売り浴びせをどう仕掛けるのか。劇画ファンの麻生太郎財務相もストーリー展開に大きな関心を寄せている。
 
  舞台は日本国債市場。国内総生産(GDP)の2倍の政府債務を抱えながらも、デフレ対策の一環として日銀が国債発行残高の30%を保有し、低金利で推移しているという現実さながらの設定だ。これは「ミスプライシング」だとニューヨークに拠点を置く債券ヘッジファンドの敏腕女性ファンドマネジャーが目を付け、売り浴びせを画策する。

The fictional Japanese Finance Minister Takatsu
The fictional Japanese Finance Minister Takatsu
Source: Saito Takao, Shogakukan Big Comic

  月2回発行の「ビッグコミック」(小学館)最新号に前編が掲載された。主役の超A級スナイパー、ゴルゴ13はまだ現れていないが、「高津財務相」や「黒沢日銀総裁」が登場し、日本売りを警戒する場面で終了。ファンドマネジャーはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下の元スナイパーで、国際通貨基金(IMF)とも結託し、経済危機国の国債を買い支えてきたという伏線も張られている。後編は今月10日に発売の次号に掲載される。

  劇画の中では高津財務相が衆院予算委員会で日銀による大量の国債買い入れは「財政ファイナンス」ではないと答弁する一方で、黒沢日銀総裁に「国債市場が機能不全になっている事を忘れるな。まさかの事態にも目配りした方がいい」と忠告。これに対し、総裁は「日銀にけんかを売るゴジラは現れない」と笑う姿が描かれている。

  麻生財務相は2日午前の閣議後会見で、同作について感想を聞かれ、「国際金融の世界の話が漫画になり、関心を持ってもらえることはいいことだ。さいとう氏に礼状を書こうと思った」と発言。劇画の「高津財務相」が自身にそっくりなだけに、「麻生太郎か、女性ファンドマネジャーか。どちらがゴルゴ13に撃たれるのか知らないが、楽しみにしている」と後編に期待をかけた。

50年近く連載、幅広い層に人気

  1968年から50年近く連載が続いている「ゴルゴ13」(作・さいとう・たかを氏)は、国際情勢をテーマに、国籍・年齢・本名不詳の「デューク東郷」が活躍する。幅広い年齢層に人気があり、漫画好きの麻生財務相も熱烈なファンであることを公言。2004年には為替介入をめぐる日米当局のやり取りが描かれ、参院財政金融委員会の審議で取り上げられたこともある。

  同作の脚本担当者から取材を受けた金融アナリストの1人、久保田博幸氏は今の日本の債券市場は国債が売られるわけがないという認識が広がり、それが通念として根付いていると警戒感を示した上で、「荒唐無稽で非現実的な話ではない。これだけ日銀が買い込むと流動性の問題が出てくる。いざ、何かあった時に対処のしようがなくなる」と解説。その上で、「単純なフィクションではなく、リスク喚起になればよい」と話す。久保田氏は、ゴルゴ13が高津財務相の依頼で、日本売りを仕掛けた女性ファンドマネジャーを標的にすると予想する。

  現実に目を転じても、政府・日銀は難局に直面している。2013年4月の量的・質的金融緩和後の円安・株高で回復途上にあった日本の実体経済は踊り場にある。中国の景気減速を受けて4-6月期国内総生産(GDP)の実質成長率は3期ぶりに減少に転じ、7-9月期も2期連続でマイナスになるとの見方も出ている。8月の消費者物価も原油安を背景に2年4カ月ぶりにマイナスに転じた。市場からは早くも補正予算の編成や追加緩和を予想する声が強まっている。

Golgo 13, also known as Duke Togo
Golgo 13, also known as Duke Togo
Source: Saito Takao, Shogakukan Big Comic

  日本国債は銀行や保険などの国内投資家が9割以上を保有し、海外ヘッジファンドの日本売りに対する「防護壁」となってきた。日銀が約3割を保有する今、その壁はさらに強固になっている。日銀の資金循環統計によると、今年6月末の国債発行残高1037兆円のうち日銀は28.5%を保有。国債残高を上回る約1700兆円の家計金融資産の存在も安心材料のひとつだ。

  一方で、海外投資家による日本国債への投資は短期債を中心にじわじわと増加傾向にある。今年3月末の国債の海外保有は9.4%(98兆円)と過去最高水準。特に流通市場では活発で、売買シェアは現物で25.7%、先物では49.2%と存在感を高めている。財務省は動向を注視していく必要があるとし、海外投資家向け説明会(IR)にも力を入れている。

  ビッグコミックの編集部は、ゴルゴ13はこれまでにも日本のメガバンク再編や中国のバブル崩壊など、現在を予見していたようなストーリー展開で話題を呼んできた例を挙げ、金融関係者の協力も得ながら臨場感あふれる力強い作品に仕上がっており、あくまでフィクションとして将来の可能性のひとつとして楽しんでもらいたいとコメントしている。

(更新前の記事で国際通貨基金の表記を訂正しています)
  
     

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