米金融当局:低インフレ・市場混乱でも利上げの態勢整える

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中央銀行当局者は容易には動じない人々だ。

カンザスシティー連銀がワイオミング州ジャクソンホールで開いた 年次シンポジウムで、米金融当局者らは現在の低インフレにとらわれ ず、金融市場の混乱も払いのけてみせた。そのほぼ一貫したメッセージ は「最後までやり遂げる」というものだった。

米連邦準備制度理事会(FRB)のフィッシャー副議長は、正味2 日間のイベントで最も注目を浴びた発言の機会で、インフレは上昇に向 かうとの確信を表明した。

同副議長は29日のパネル討論会で、「インフレを抑制している要因 がさらに解消されるにつれて、インフレ率が高まると信じる正当な理由 がある」と語った。

同副議長は、利上げが差し迫っているとのシグナルを送っているわ けではないと慎重に断りつつも、その発言は米連邦公開市場委員会 (FOMC)が9月16、17両日に開く次回会合での利上げの可能性を排 除しないことを示唆する内容だった。

同シンポジウムに参加した元FRB理事で、シカゴ大学のランドー ル・クロズナー経済学教授はフィッシャー副議長について、「彼は約束 こそしなかったものの、9月がまだ議題にあることを極めて明確にし た」との見方を示した。

フェデラルファンド(FF)金利先物市場の取引では、米金融当局 が9月に利上げ開始を決める確率は28日の遅い時点で38%と、26日 の24%から上昇した。10月利上げの確率は49%とされた。

予測能力に慎重論も

FRB金融政策局でエコノミストを務めた経歴を持つジョンズ・ホ プキンス大学のジョナサン・ライト教授も今年のシンポジウムに参加し た1人。ライト氏は同副議長が「本音では9月の引き締めを望んでいる ように受け止められる」と指摘。ただFOMC内部には、ニューヨーク 連銀のダドリー総裁のように「もっとためらいがちな向きもある」と付 け加えた。

ダドリー総裁は26日の記者会見で、市場の混乱によって9月利上げ の論拠は「数週間前に比べやや弱くなっているようだ」と言明。フィッ シャー副議長の発言前の段階で、利上げの確率は9月と12月の間で五分 五分とみていたライト教授は、9月4日に発表される8月の雇用統計が 利上げの判断で「大きなウエートを占めることになるだろう」と語っ た。

一方、インフレ指標として米金融当局が重視する個人消費支出 (PCE)価格指数は、7月が前年同月比0.3%上昇にとどまった。原 油安とドル高が下押し要因となったもので、上昇率は当局の目標である 2%を3年余り下回って推移している。

シカゴ大のクロズナー教授は、フィッシャー副議長が現在のインフ レ率よりも将来のインフレ予想を強調したことは示唆に富むと指摘。 「彼は常に先手を打っておきたいと考えており、現在の低インフレによ って制約されることはないだろう」と述べた。

フィッシャー副議長は米金融当局のインフレ予測能力に自信を示し た格好だが、同シンポで28日に発言したマサチューセッツ工科大学 (MIT)スローン経営大学院のアタナシオス・オルファニデス教授 は、将来のインフレ率の予想について、エコノミストにはもっと「謙虚 さ」が必要だとコメントした。

FRBのシニアアドバイザーやキプロス中銀総裁を歴任したオルフ ァニデス氏は「われわれは実際にはよく分かっておらず、分かっていな いのに分かっていると思い込めば惨事を招く」と主張した。

原題:Fed at Jackson Hole: Gearing Up to Hike Amidst Rocky Terrain(抜粋)

--取材協力:Steve Matthews.