年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )が進める日本株買いと国内債売りが終盤に向かっている。昨秋に設定 した新たな資産構成の目標値への進捗率は8割近くに達成した。

GPIFの6月末の運用資産額は過去最高の141.1兆円。年金特別 会計で管理する2.88兆円も加えた積立金全体に占める国内債の構成比

37.95%と比較可能な2008年度以降で最低を更新した。国内株は23.39% 、外株は22.32%と、いずれも最高。外債は13.08%と昨年末に次ぐ高さ となった。短期資産は3.27%。全体の5%を上限とするオルタナティブ (代替)投資は0.05%だった。

ブルームバーグの試算によると、積立金全体144兆円のうち国内債 の残高は約54.6兆円、国内株は約33.7兆円、外債は約18.8兆円、外株は 約32.1兆円、GPIFと年金特会の短期資産は約4.7兆円。国内債を3 月末より約2.1兆円減らす一方、国内株は約2兆円、外債は約0.7兆円、 外株は約2.1兆円、それぞれ増やした計算だ。

GPIFは昨年10月末の資産構成見直しで、国内債の目標値を60% から35%に下げる一方、内外株式はそれぞれ12%から25%、外債は11% から15%へ引き上げた。5%だった短期資産は各資産に分散して管理。 国内債への偏重から、株式と債券が半分ずつで国内資産6割・外貨建て 資産4割という分散型に変えた。

国内債と国内株の6月末の構成比は、新資産構成の公表前の昨年9 月末から目標値へ至るのに必要な変更幅の78%進捗した水準だ。外債は 39%、外株は67%それぞれ進捗している。6月末の積立金全体を基にし た試算では、国内債は満期償還分も含め、さらに約4.2兆円の削減余地 がある。国内株は値上がり分も込みで約2.3兆円、外債は為替損益も含 めて約2.8兆円、外株は約3.9兆円の積み増しが必要だ。

足元の余地

GPIFは新たな資産構成への移行に際し、大規模な売買で市場に 悪影響を及ぼさないよう、期間や期限は設けなかった。27日公表した4 -6月期の運用状況では昨年10-12月期と同様、各資産の残高を記載せ ず、年金特会を含む積立金全体に占める構成比のみを開示。厚生労働省 が年金特会の6月末の残高は2.88兆円と説明した。

SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは、GPIFは「 4月以降、自らあまり大きく動かなくても、株高・円安によって目標値 に近づいてきた」と指摘。足元では「株安・円高で、内外株式に国内債 から資金を振り向ける余地がまた広がった。実際にそういう売買が出て いるもようで、相場の下支え要因になっている」と言い、「外債は金利 低下と円高の影響が相殺している」と述べた。

4-6月期の収益率は前年同期を上回る1.92%で5四半期連続の黒 字。国内株が5.89%と前期より鈍化する一方、外株は2.38%に改善し、 外債は0.65%とプラス圏に戻った。国内債はマイナス0.10%と2期連続 の損失。前身の年金資金運用基金として自主運用を始めてから14年余り の累積収益額は53.4兆円に膨らんだ。

GPIFが参照する運用指標の収益率は4-6月期に国内債がマイ ナス0.13%、国内株が5.84%だった。10年物国債利回りは6月末に0.46 %と3月末から6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。T OPIXは5.7%高の1630.40だった。外債の収益率は0.75%、外株は

2.29%だが、現地通貨建てだとマイナス3.14%、マイナス0.89%。円相 場は1ドル=122円37銭と約2%下げた。

収益マイナス転落も

世界の株式時価総額は中国による11日の人民元切り下げをきっかけ に急速に縮小し、26日には昨年2月以来の低水準を記録した。その2週 間で、上海総合指数は25%、TOPIXは12%それぞれ下げた半面、円 はドルに対して年初来高値に迫る場面があった。27日のGPIFの記者 会見では、内外株安への対応や対中投資に関する質問が相次いだ。

GPIFの青木重仁審議役は会見で、具体的な投資行動への言及は 控えたが、リスク管理については「経済環境コンサルタントを活用しつ つ、投資委員会で議論している」と述べた。外株パッシブ運用の指標と するMSCI-ACWI(日本を除く)指数に占める中国株の構成比は 6月末時点で約3%だと指摘。人民元建ての債券は外債の運用指標に入 っていないと説明した。

BNPパリバ証券の藤木智久チーフ債券ストラテジストの推計によ ると、今月の株価急落で国内債の構成比が26日現在で40.8%程度に上昇 した。仮に40%まで引き下げるなら約4500億円売却する必要があり、国 内株に1500億円、外債に700億円、外株には2300億円前後の流入につな がると読む。市場変動に伴う調整は「引き続き否定されない」としてい る。

SMBC日興証の末沢氏は、資産構成の変更が一巡してきたことで

「時価変動の影響が大きくなっている」と言う。株安・円高が改善しな ければ「7-9月期は収益がマイナスになる可能性がある」と指摘。「 構成比が下がった資産を買う基本方針で淡々と運用していくだろう」と みている。

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