安倍首相は日銀の目標未達に「理解」示す、市場では追加緩和期待も

前週末に引き続き株価が急落しているにもか かわらず、安倍晋三首相は日本銀行に対してあからさまな圧力をかける のを控えている。もっとも、株価がこのまま下がり続けた場合の政府・ 日銀の対応については、市場では見方が分かれている。

安倍首相は24日の参院予算委員会で、原油価格下落は消費者物価指 数(CPI)に影響する一方、「同時に経済にはプラスの影響を及ぼ す。その中において、目標達成が事実上難しくなっていることについて は、われわれは日銀側の説明を理解している」と述べた。

28日公表される7月の生鮮食品を除くコアCPIの前年比は、黒田 東彦総裁が量的・質的金融緩和に踏み切った2013年4月以来のマイナス 転落が見込まれている。安倍首相はこれまでのところ、日銀に対して露 骨な圧力をかけることは避けているが、今後の展開については見方が分 かれている。

週明け24日の東京株式相場は一段安となった。日経平均株価は前週 末比895円15銭(4.6%)安の1万8540円68銭、TOPIXは92.14ポイ ント(5.9%)安の1480.87と大幅続落した。世界経済の先行きに対する 懸念が強いなか、中国株も連日の大幅安となっており、投資家はリスク 回避姿勢を強めている。

経済対策は想定していない

17日発表された4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前 期比年率1.6%減と、3期ぶりのマイナス成長となった。甘利明経済再 生相は発表後の会見で、背景として「天候不順など一時的要因がかなり 大きい」とした上で、「この時点で補正予算など経済対策は想定してい ない」と語った。

バークレイズ証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストは21日のリ ポートで、日銀の追加緩和の可能性について「甘利再生相は現時点で補 正予算を想定していないと明言した。財政刺激をしない情勢で日銀のみ が緩和に動くとも考えにくい」と指摘した。

東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは24日のリポ ートで、「食品等購入頻度の高い品目の価格は上昇しているが、教養娯 楽耐久財やその他のサービス価格についての上昇ペースは緩慢であり、 現状で日銀が想定している16年度前半頃の2%への到達は困難であろ う」という。

もっとも、1)長期国債のさらなる買い増しやベースマネーの供給 が技術的に困難となりつつある、2)審議委員間でも追加緩和の効果に 関して懐疑的な声が上がっている、3)執行部自身や政府サイドも追加 緩和に対して必ずしも前向きでない-ことなどを踏まえると、追加緩和 は「実施される可能性は低い」とみる。

安倍政権は株価上昇望み緩和期待へ

日銀は昨年10月、市場の意表をついて追加緩和に踏み切った。武藤 氏は昨年10月のサプライズ緩和は「市場の誰もが予想していなかったタ イミングで実施されたからこそ『サプライズ』であった」と指摘。今回 のように多くの論者や市場参加者が待ち構えているタイミングにおいて は、「なおさら黒田日銀は緩和に踏み切りにくい」という。

一方、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは24日のリ ポートで、「安倍政権が株価上昇による景気支援を望み、それが日銀の 追加緩和期待へとつながる」と指摘する。

16年7月には参議院選挙、17年4月には再度の消費増税が控えてい る。熊野氏は「日銀は2016年の選挙までに景気が悪化して、消費税増を 中止すべきだという議論が盛り上がらないように景気を支える努力をす る」とみる。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストも同日のリポート で、「『日銀は2016年1月または4月に、2%物価目標達成時期を後ず れさせると同時に追加緩和する』と予測してきたが、その時期が10月に 早まる可能性も浮上してきた」としている。